SUZUKI GSX1300R 隼

☆ メンテナンス編 ☆

燃料ポンプ分解清掃記

バラしますよ


<2007年5月>

メジャーだけど、自分でやる人は少ないみたいです。
 

 燃料ポンプを分解清掃してみる。

 うちのような'99式(もしくは'00式)の隼の弱点の一つに、燃料ポンプ(フューエルポンプ)の詰まりがある。
 謎の物質(後述)により燃料ポンプ内のフィルターが詰まり、ドンつき悪化や加速不良、果てはエンジンストップを引き起こす事があるのだ。

 初期型オーナーの大半が経験しているというこのトラブル。幸いうちの隼に顕著な症状は出ていないが、年数や走行距離を考えると一度確認・清掃しておくに越したことはないだろう。
 
 

<余談>

 詰まる物質は不明。大抵はオレンジ色の繊維質のものらしい。

 粗悪ガソリンのカス、タンクの錆防止剤等々諸説あるが未だ確定はされていない(はず…)

 原因が不明なので対処も不明。定期的な清掃、ガソリン添加剤の使用くらいしかない。うちの場合はFUEL1を定期的に使用していたのが影響が小さかった要因だろうか?

 後期型の隼では、フィルターの目が(詰まらないように)粗くなっているとのこと。

 また、燃料ポンプが外付けからタンク内へ移動されたのも、燃料のパーコレーション(沸騰)防止と共に、この詰まり防止の効果を狙ったとの噂もある。
 

 それではと作業開始。

 燃料ポンプを外すには、燃料タンクを外す必要がある。
 そして燃料タンクを外す為には、燃料ホースを外す必要がある。
 そして、うちの'99式カナダ仕様には燃料コックがついていない。だから2本ある燃料ホース(1本はリターン用)を外すとガソリンがどぼどぼと漏れてきてしまうはずなのだ。
※もちろんガソリンが空なら出てこないが、うちのバイクは全て満タン保管が基本なのだ!

 さて、ではどうするかというと…なんと、純正で燃料タンク用のキャップが用意されているんですねぇ

 純正フェンダーの後ろにひっそりと隠れている2つのキャップ。
 これを知らずにキャップごと純正フェンダーを処分してしまい、後に泣くフェンダレス仕様車乗りは相当数にのぼると言われている。


こんなところにあるんですねぇ
それにしてもホコリだらけだな→純正フェンダ

 いつもどおりタンクをリフトアップ。

 思いついてバッテリーのマイナス端子も外しておく。
 ガソリンを扱う部分だし、万が一どこかがショートしてガソリンに引火したら火達磨だからねぇ…
#結果的に大正解


中央のパーツは燃料コックのようでコックでなし(笑)
そこからのホースが燃料ホース、左側がリターン用
その下のコネクタが燃料メータ用コネクタ

 燃料メータ用の配線を切り離す。
 ふぅと一息ついて、それではとホースを抜き…すかさずキャップをはめる。よし、上手くいったぞ。

 抜いたホースの側からもガソリンが出てくる。まぁこれはポンプに入っていた分のガソリンなので少量で止まる…止まる…止まらねぇよっ!

 なぜかじゃぼじゃぼと漏れ続けるガソリン。
 くっそ~、これリターン側から逆流してるんじゃねぇかっ?聞いてねぇぞこんなことおっ!
 
 片手でホースを塞ぎ、もう一方の手で工具箱を漁る。
 見つけた適当なボルトをホースに突っ込んでやる。
 ふう、これでやっと止まったけど、そこいらじゅうがガソリンまみれになっちまったぜぃ!あ~、バッテリー外しておいて良かったぁ~

 「塗装が塗装が…」と周囲を拭きまくり、一息ついてもう一本のホースに取り掛かる。

 同じようにホースを抜いてキャップをハメて、ホース側からのガソリンは…今度は片側が既に止めてあるので漏れる量は少ない、やれやれっと。
 また周囲を拭いて、さて、んじゃ漏れたガソリンが乾くまで小休止にするか。


キャップ付きました
わかりにくいけど、周囲はガソリンまみれです(笑)



 さてさてと次はタンク外し。

 タンク右サイドにあるドレンホース2本を引き抜いた後、何も考えずリフトアップしたタンクの根元のボルトを緩めたのだが、このボルト、何故かフレームにぶつかって抜く事ができない。
 「なんだこれ?なんでこんな仕様になってるんだ?」
 
 満タンに近いタンク(20kg超)を抱えたまま、あっちへ捻り、こっちへ動かし、やっとのことでボルトを引っこ抜く。
 「おかしいよこれ、絶対!」

 ぷんすか怒りながらマニュアルと見る。と…外すボルトが違うよママン…orz

 どうやら根元のボルトではなく、フレームにセットされた台座ごと外すのが正解らしい。
 こちらのボルトは垂直に刺さっているので抜くのは問題なし。いやぁ、やっぱマニュアルはちゃんと読まないとダメなんだねぇ…
#いや、だってマニュアルが英語版だし・・・(←写真で載ってます)


最初はこれを外したんですけど・・・


こっちが正解みたいです

 タンクが外れると燃料ポンプが現れる。
 
 ポンプはエンジンの熱が伝わらないようにスポンジのカバーで包まれている。
 「これを外すにはホースを外す必要があるな…」って、まだガソリンが漏れるのかよ!

 もちろんカバーは再使用するので、破らないようそぉっと抜く
 ポンプの電源コネクタも外しておこう。


カバーは丁寧に外しましょう


ご対面~ん

 ポンプの両側には金色のステーが付いている。

 このステーとフレームの間のボルト5本、ステーとポンプ間のボルト4本を外し、ステーを取り外す。
 負圧用のホースを引き抜けば、あとはメインの燃料パイプが1本残るだけだ。

 ところでこのパイプ、高圧のかかった燃料が通るだけにパイプ自体を抜く事はできない。(接続部がカシメてある)
 多分根元のネジを外す…んだよな?
#いや、だってマニュアルが英語(略)


外れないパイプと、外すネジ

 「でもこれ、プラスネジなんだよな、ナメそうだよな…」

 はい、ナメました!

 泣きながらタガネを使って取り外す。まぁ特殊なネジじゃなさそうだし、代替品はなんとかなるだろう。

 これでやっと燃料ポンプを取り外す事ができた。ふいぃ~


やれやれ・・・

 作業デスクへと移り、ポンプの分解を開始する。

 ポンプに使ってあるネジは、基本的に全てプラスネジ。
 「ナメそうだ(略)」 ナメま(略)
#3勝3敗

 こうして分解された燃料ポンプ。大きく3つの部分に分けられた。


これはポンプ格納部(左)とメインフィルタ格納部(右)

■負圧バルブ部
 
 これ以上バラす必要なし。
 但し、残った台座部分に小さな小さなフィルターがハマっている(いわゆる第4フィルター)
 汚れ具合はそこそこ。
 ラジオペンチでそぉっと取り外して、パーツクリーナーで洗ってやる。


汚い指先と比較して大きさを判断してください


 


■メインフィルタ格納部
 
 マニュアルには「リムーブする」としか書いていないオレンジ色のパーツ。これがとにかくびくともしない。
 隙間を細いマイナスドライバーで気長にコジって外してやろう。

 中には紙フィルター。これがメインのフィルター(いわゆる第2フィルター)だ。
 パーツクリーナーを吹くと黒い汚れが流れ出してきた。
 本来は新品に交換すべきなのだろうが、今日はあえて洗浄して再使用する。


中央のが紙フィルター、バネも付いてます

■ポンプ格納部
 
 ポンプ本体はするりと出てきたのだが、その奥の白いフィルター(いわゆる第3フィルター)が外れない。
 マニュアルには「リムーブする」としか書(略)
 これまた気長に押したり引いたりして外す。


ポンプ本体(金色)は出ましたが、カバーの中にまだフィルターが残ってます。


やっと抜けました

 実は「詰まる」ので有名なのはこのフィルター
 なるほど、噂どおりオレンジ色の憎い奴(←年齢踏み絵)がべったりと付いている。
 
 パーツクリーナーで洗浄…はいいのだが、二重になっているので手間を食う。
 「もしかしてこれ、本当はもっとバラせるのかな?」(←無理じゃない?)

※ここに出てこない第1フィルターは燃料タンク内部にある。

 ★

 ケース等その他パーツを含め、一通り洗浄して満足する。

 各フィルターは確かに汚れてはいたが、「詰まる」という程ではなかった。(第3は結構汚れてたかな・・・)
 まぁ最初に書いたとおり、走りに顕著な症状が出ていたわけではないからこの程度なのかもしれない。

 燃料ポンプの組み立ては、バラしの逆にすれば問題なし。
 
 「負け」ネジもさほどの負け具合ではない(←表現変)ので再利用。
 一部Oリングが渋いのは元からなのか、それともパーツクリーナーで伸びてしまったのだろうか?
#シリコングリスを薄く塗ると良いかと

 いずれにせよ、燃料ポンプは燃圧をかける重要なパーツ。
 万が一ガソリンが漏れれば爆発炎上の可能性さえある。組み立ては慎重の上に慎重を期す必要があるのだ。


 組み立て&確認が完了したら、これまた逆の順序で車体へと組み込む。
 
 例の根元ボルトはさすがに再利用できそうにない。工具箱にあったステンのヘキサボルトに交換する。


指先のが交換ボルト
右のは負けボルト

 ステー取り付け。カバー装着。燃料ホース接続。
 タンクを車体へ取り付けてリフトアップ位置へ。
 ドレンホース、各種コネクタ接続。
 燃料ホースをガソリンタンクに…「ああっ!またガソリンがぁっ!」

 全ての接続を指差し確認。
 またまた周囲を拭いて、さて、んじゃ漏れたガソリンが乾くまで小休止…(再)

 1時間後、エンジン周りに濡れ等ガソリンの気配が無い事を確認する。
 
 どきどきしながらメインキーオン。「キュッ…」
 電装異常なしを確認したら、チョークを引いてセルオン。

 「キュッ、ポン、ボボボボボボ・・・」

 なんと一発でエンジンが始動した。

 燃料ポンプ内を空にしただけに「エアを噛んでポンプが空回りすると嫌だな」と心配していたのだが杞憂だったようだ。
 聞きなれないキーオン時の「キュ」は多分負圧バルブの開いた音だろう。
※以降のキーオン時では聞こえなくなった


始動確認!

 一旦エンジン停止。ガソリン漏れがないかどうかを念入りに再チェック。

 再始動してアイドリング。特に異常は見当たらない。
 近所を一回りするテスト走行、その後の確認でも異常はみつからず。どうやら無事に整備できたようである。

 よし、これで手順は判った。
 次回内部パーツ交換の際には、フィルターやOリングの他に、今日の「負けボルト」も注文してやらないとな。
 
 

<俺メモ>

 やっぱりタンク内のガソリンが少ない時にやる方が良い。

 寒い時期だと漏れたガソリンが乾きにくいはず。夏にやろう。

 ポンプカバーを断熱マットで自作しても面白そう。
 




Copyright 2007 Akira
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