＜２００２年５月２日＞

思いもかけぬ… 　6:30am、心地良い鳥の鳴き声で目が覚める。 　外を覗く。快晴！というわけにはいかない空だが、充分に明るい。 　テントから出て伸びを一つ。う～む、今日は雨の心配をしなくて済みそうだな。 　歯ブラシをがしがしやりながら考える。この分なら道路もドライに戻っているだろう。今日は移動日だし、日中はまた大荷物を抱えて走らなければならない。 　よし、道路が空いているうちに、軽く朝走りにでも行ってくるか。 　さくさくと荷物をまとめ、テントを畳めば出発できるようにしておく。 　ブーツを履き、ヘルメットを抱える。んでは行くかとＶ－Ｍａｘの元へ。 　夜露を拭き、シートへ跨る。キーオン、セルスタート。 　きゅるきゅるきゅる・きゅるきゅるきゅる・・・ 　ありゃ？うちのＭＡＸは始動性の良いのが自慢なのだが、今朝は珍しくエンジンがかからない。 　なんだろ？昨日は湿気だらけの霧の中だってあんなに元気に走っていたのに？ 　ともあれ、数回のクランキングの後、エンジンは無事に始動した。 　アイドリングをチェックするが特に異常は見当たらない。ま、いっか、とりあえず出かけてみましょ。 　キャンプ場を抜けて峠道へ。案の定ドライ路面のワィンディングを一気に駆け上がる。 　夜露に濡れた草原が実に美しい、う～ん、気持ち良いぞぉ～ 　キャンプ場から１０ｋｍ程登った場所、そこが有名な草千里ケ浜である。 　見下ろす草原の中央には、昨日の雨が溜まって一時的な湖が出来ている。早朝のため観光客の姿もない。「ここで写真撮らなきゃ嘘だよなぁ・・・」 　ごそごそとウエストバックを探っているところへ、昨日まで一緒だったZZR400氏がやってきた。今日はこれで引き上げますとの事、「んではまたどこかで」と手を振り別れる。 　満足するまで撮影し、さて、この先はどうなっているのかな？とＭＡＸへ跨る。 　キーオン、セルスタート。 　きゅるきゅるきゅる・きゅるきゅるきゅる・・・	まだ平和なひと時
トラブル発生 　んが？なんでかからないんだ？エンジン。 　朝と同じように１０秒間隔のクランキングを繰り返すがエンジンは始動しない。むなしくセルの回る音が響くだけだ。 　失火なり、カブりなりなら、なにかしら「そんな雰囲気」が感じられるものだが、何故かまったく火の入る気配がない。 　腕組みをして考え込む。 　セルは元気良く回っている。スタータークラッチも滑っていないし、クランクもしっかりと回っている。 　何より数キロとはいえ、ここまで元気に走ってきたのだ。 　「まさかプラグじゃないよなぁ？新品のＶＸだしなぁ」とプラグを外して様子を見る。若干湿ってはいるものの異常はみあたらない。 　念の為にと先端をヘッドに触れさせての点火チェック、すると… 　うわ、火花が飛んでないや。 　「プラグか？それともケーブルか？コイルか？」 　以前にも書いたとおり、プラグ周りは全部新品に取り替えてある、劣化によるトラブルは考えにくい。 　「取り付け時にどこかミスってたのかなぁ？、それとも昨日の大雨の影響かなぁ？」 　ふと気づく。Ｖ－Ｍａｘは大排気量の４気筒、１気筒死んだくらいならエンジンはかかるし、走る事だって可能なのだ。 　「まさか？」と他のプラグをチェックする。 　　全滅である。 　４気筒共、セルは回れど火花の飛ぶ気配はない。全てのプラグ＆コードが同時に死んでしまう事など考えられない。これはもっと根の部分のトラブルのようだ。 　とりあえず出来る事をやってみようと、携帯電話でキャンプ場のつちもとさんを呼び出してみる。 　幸い同じＶ－Ｍａｘだ、プラグを借りてチェックすればどこが悪いか判断できるだろう。 　「え～、動かなくなっちゃったんですかぁ？！」と驚くつちもとさんに事情を説明して、ここまで来てくれるようお願いする。 　その間を利用して電装系のチェック。 　草千里の駐車場のど真ん中でパーツを散ばせながらＭＡＸをバラす。 　シート、タンク、ダクト等の外装はもちろん、電装パネルを引き剥がして確認する。 　全てのヒューズを確認、イグニッションコイルとプラグケーブルの接続部を外し、磨いて付けなおす。 　バッテリー周りのコネクタを全部抜き差ししてチェック、「雨が侵入してショートしている部分は？」と探したが、全て乾いていて正常そうである。 　「そうだよなぁ、昨日はあんなに調子良かったもんなぁ」 　つちもとさん到着 　早速ケーブルを借りてチェック、やはりプラグに異常はなく、つちもと号に移植すると元気な火花がばしばしと飛ぶ。 　とすると・・・イグニッションのコントローラーとかなのか？ 　うんうん悩んでいると、なにやら話していたつちもとさんが携帯電話を差し出してきた。 　行きつけのＶ－Ｍａｘショップ、名古屋の「ビーバス」さんのご主人に、症状から考えられる原因を問い合わせてくれていたらしい。 　電話をかわりご主人と話す。 　「あ～、４発ともダメならイグニッションかピックアップコイルですねぇ…うちのお客さんのＶ－Ｍａｘで突然壊れたって事例ありますよ。」 　ああ、やっぱりそんな根っこの方ですか。 　「水分によるトラブルなら時間を置けば復活するかも？」との言葉に一縷の望みを繋ぎながら、電装関係のチェックを続ける事にする。 　つちもとさんは、いざという時のために近隣のバイク屋を探してくれるとの事、お言葉に甘えてつちもと号を送り出す。 　コンピュータのパネルを開け、中を確認、浸水の気配なし。 　ヘッドライト内異常なし。 　いつの間にやら周囲は観光客で溢れかえる。 　無理も無い、ここは天下の観光名所、阿蘇の草千里ケ浜駐車場なのだ。 　人の良さそうな老夫婦、怪しげな親父、１０代と思われるカップル等が次々と声を掛けてくる。 　いつもなら絶好のナンシー観察の機会だけに嬉々としてお付き合いするところだが、いかんせん、今の自分にはそんな余裕はまったくない。 　いいかげんなやりとりの間も手は止めず全個所チェック完了。異常なし、何故だぁ～！ 　あきらめ半分、駄目モトでセルスタート。 　きゅるきゅるきゅる…ぼぼぼぼぼ 　お～！かかったかかった、原因は全然わからないけどかかったぞぉっ！ 　つちもとさんへとＴＥＬを入れる。 　移動用のトラックの手配まで考えてくれていたようだが、「動いた」の知らせにほっとしたようだ。 　エンジンはそのままに外装を取り付け、ゆっくりとキャンプ場へと戻る。 　エンジンの調子は良い。原因がわからないのがどうにも不気味だがこの現象、ツーリング中だけでも再発しないでくれよ…	バラしてチェック
復活、と思いきや… 　テントサイトへと到着、３時間に渡る空白時間にTOTORO氏も、「何故帰ってこないんだろう？」と大分心配してくれていたようだ。 　「いやいやご心配をおかけしまして」 　空には僅かだが太陽が覗き、昨日びしょ濡れだったテントもドカシーも綺麗に乾いている。 　テントを畳みパッキング、荷物と共にＭＡＸへ積み込む。 　出発準備完了、TOTORO氏に「これでまたエンジンかからなかったらどうしますかねぇ？」などと苦笑いしながらセルボタンを押す、だが。 　きゅるきゅるきゅる・きゅるきゅるきゅる・・・ 　現象再発である。 　これではもう駄目である。 　例えこの後エンジンがかかっても、このままの状態でツーリングを続けるのはリスクが大きすぎる。高速道路のＳＡで止まりでもしたら目も当てられないだろう。 　少なくても原因究明と、なんらかの対応をしなければならない。 　つちもとさんが調べてくれた地元のバイク屋へ電話。 　キャンプ場では何もできないので、とりあえず引き上げてもらうことにする。 　軽トラックに詰まれたＶ－ＭＡＸの後ろを、TOTORO氏のＴＤＭにタンデムさせてもらい付いて行く。 　ああ、なんでまたこんな事に… 　引き上げに来てくれたバイク屋は、四輪から農機具まで扱う工場であった。 　工場の親父さんに見てはもらうものの、やはり電気系なのは間違いないようだ。 　「４輪だとデスビ（ディストリビューター）なんだけどねぇ」という熊本弁に、そうですよねぇ…とうなだれる。 　さて、ではどうしようか。冷静になって問題点を洗い出してみる。 　１．このままではツーリングは無理（というか、アレ以来エンジンはかからない） 　２．原因はイグニッションかピックアップコイルか、しかし確証は無い。 　３．原因がはっきりしても、結局部品交換が必要である。しかし熊本では部品の手配は難しい。 　４．どこかのショップへ預けるにしても、今日は平日だが明日から連休である。 　５．預けたとしても修理期間は未定、しかもどうやって取りに来るのか？ 　６．なんとかしてこのまま栃木へ持ち帰った場合、修理をどうするか？ 　難問山積。う～む、コレは困ったと頭を抱えていたところへ、またまたつちもとさんが携帯電話を差し出してくる。 　くだんのビーバスさんなら連休中の修理もＯＫだし、原因の見当もつく。加えてパーツの在庫もあるし、いざとなればいくつか中古エンジンがころがっているからなんとでもなるよ、とのありがたいお言葉だ。 　抱えていた頭と持ち上げ、すっくと立ち上がる。 　　「行きましょう、名古屋へ。」 　今日の午前中に回る予定だった高千穂。明日泊まる予定だった長崎。絶対見てやろうと思っていた桜島、そして鹿児島、宮崎。 　九州ツーリングがここで中断となれば、全ての予定は塵と消える、だが・・・仕方が無い。勇気ある撤退というのも時には必要なものである。 　４日の夜に予約していた宮崎からの帰りのフェリーは当然のようにキャンセルとなった。 　さて、そうと決まれば話は早い。 　Ｖ魔を名古屋まで持ち込む手段を検討する。 　運送会社に依頼するのは時間＆費用の面から×。 　近場のトヨタレンタリースへ電話して、ハイエース（ワンボックス車）を１台手配、これに積んで持っていこう。 　夕刻、手配が済む。 　レンタカー会社の事務所へ行き手続き。レンタカー代はともかくとして、名古屋で乗り捨てるとなるとその乗り捨て費用がバカ高（レンタカー代の約３倍）となるが、これまた仕方が無い。 　背に腹は替えられないと「支払いは６回払いで」とカードを差し出す。 　借りたハイエースで工場へ逆戻り。 　スクリーンとミラーを外したＶ－Ｍａｘをえんやらやぁとハイエースへと積み込み、あらかじめ購入しておいたロープで固定する。 　工場の親父さんのロープワークはさすがに手馴れたものだ、良く見て覚えておこう。 　6:00pm、出発準備が完了する。 　半日お世話になった工場の人たちに頭を下げる。どうもお世話になりました。 　聞けば１年に１度くらいは、同じようにトラブルで担ぎ込まれるバイクがあるそうだ。「大抵はなんとかなるんだけどね」とは工場の親父さん談。 　ハイエースを駈って、これまた丸１日おつきあいしてくれたつちもとさん、TOTORO氏（ありがと～）と共に熊本市内へ向かう。 　このまま九州を離れるのは忍びない。悔しさを紛らわせる為、夕食には熊本ラーメンをかっ食らうのだ。 　市内の店でラーメン＋餃子を楽しむ。 　同じ豚骨スープでも福岡と熊本ではまたちょっと雰囲気が違う。熊本の方が一般的というか東京的というか、これまた好みの別れるところだろう。ともあれ、美味し。 　10:00pm、熊本ＩＣから九州自動車道へ。 　しばらく一緒に走った後、長崎へ向かうつちもとさん、TOTORO氏とお別れである。 　いや～お付き合いしてくれて本当にありがとう、一人だったらどんなに心細かった事か・・・（感涙） 　ディーゼルエンジンの排気音を響かせて、Ｖ-Ｍａｘを乗せたハイエースが九州自動車道を北上する。 　名古屋までは1,000km弱、明日の午後に着けば良いとはいうものの、これまた結構な強行軍である。 　さぁて、行くぞぉ・・・ ←ＢＡＣＫ　ＮＥＸＴ→	すいません、演技入ってます 結構積めるモンですねぇ 落ち込んでてもラーメンは食います

＜本日の走行距離＝約２０マイル＝約３６ＫＭ＞＜本日の給油回数＝０回＞＜本日の教訓＝ああ・・・＞