YAMAHA V-Max

☆ メンテナンス編 ☆

ホイールベアリング交換

 まずは外すところから   そして入れる方はといえば   その後 

<2007年7月>

  まずは外すところから

 >■「りあたいや ガ ソロソロ ゲンカイ デス ハヤメニ コウカン シテ クダサイ…」 

・・・というわけでリアタイヤを交換する。

 例によって(工賃を浮かせる為)単体でショップへ持ち込もうとホイールを取り外したのだが…
 「ありゃ?ちょいベアリングが怪しいな…」

 リアホイール右側(ブレーキディスク側)のベアリング。
 動きが渋いわけではないのだが、指で回すと少しだけ違和感が感じられる。

 「ゴリゴリ」ではなく「ゴキュッ」とでもいえばいいだろうか?そんな感覚が指先に伝わってくる。
 「前交換したの何時だったかなぁ…というか、交換したことあったっけ?ここ」(←をい)

 17年ぶりかどうかは別にして(笑)気になったのなら交換するのが無難だろう。
 トラブルになってからじゃ遅いってのは、これまで散々経験済みなのだ(笑)

 それではとサービスマニュアルをひっくり返す。
 ところが、どこにもベアリングの交換の手順が載っていない。
 
 「ってことは特殊な事はないのかな?シャフトドライブだから何か違うかなと思っていたのだけど」

 普通のベアリング交換なら、ちょい前に隼で実践済み。
 
 ま、とりあえずはじめてみるか。

 (新品タイヤを組み込んだ)ホイールを作業デスクへえっちらおっちら運ぶ。
 あ~、やっぱMAXのリアホイールは重いねぇ…


グリスアップは結構マメにやってるんですけどね







 まずは付属品(?)の撤去から。

 右(ブレーキディスク)側ダスト(オイル?)シールをペンチで引き剥がす。

 このダストシール、内側にスプリングがセットされていてちょい高級品っぽい。
 新品どれくらいするんだろ?ちょっと心配になる。
※後日注文。そんなに高くはありませんでした。

 内側にはでかいサークリップ
 ベアリングのズレ防止用かな?これはサークリッププライヤーで取り外す。


外れたサークリップとダストシール
シールにはバネが付いてます

これでベアリングとご対面。

左(ドライブシャフト)側はまずサークリップから。
それにしてもMAXはなんで両側にサークリップが入ってるんだ?シャフトドライブの特徴なのかな?


サークリップを外した後

 サークリップを外すと、ギア(って言うのか?)がごっそりと抜けてくる。
 
 ハブダンパーに刺さっていた部分は結構錆が出ている。磨いてシリコングリスを塗っておこう。
※本当はバブダンパーも交換したほうがいいんだろうなぁ・・・


抜けました。

 こちら側にもダストシールがあるが、これは内側のカラーを抜いてからでないと外れないようである。

 肝心のベアリングの「抜き」。
 どれどれと右側から作業開始。

 ベアリングのアウターレースにCRC-556。

 よくよく観察すると、MAXのホイールに入っているカラーには1mmほど遊びがある。
 つまり、カラーとベアリングの間に1mm弱の隙間があるのだ。
 「うん、これならベアリングプラーで簡単に引っ掛けられるだろう」

 ベアリングプーラー出動。ところがこれが使えない

 隙間はあるのに、何故か爪が旨く引っかからないのだ。
 プーラーのせいなのか、それともベアリングの形状のせいなのか。
 「くっそ~、やっぱ打ち抜きしなきゃ駄目かぁ…」

 左側には先のダストシールがあるので、打ち抜くとすれば右側からだ。

 ホイール左側を上にして、アクスル穴に長いパイプを差し込んでやる。
 
 打ち抜く手順は隼と一緒
 遊びもあるし、簡単に打ちぬけ…ないのがお約束ですな。

・カラー(みかけのホイール幅)が長く、径が小さいので、打ち抜く角度が付けにくい。
・ベアリング径が小さく、引っ掛かりが少ない。

 いらいらして手元が狂い、右手に持ったハンマーで左手を打つ事数回。
 「あ~ヤメだヤメだっ!休憩休憩!」

 自室へ引き上げ、ゆっくりとコーヒーを飲みながら考える。

 このままだと多分打ち抜けない。

 良い機会だし、新しい(高い)プーラーを買うのも悪くはないのだけれど、それはちょいと悔しい気もする。

 工事用アンカーを使う方式は、隼でもダメだったんだからMAXでも使えないだろう。
 
 他に何か方法は…

 ふと思いつく。
 先の1mm弱の隙間、あれに何か挟めば打ち出すポイントになるんじゃないだろうか?


そしてまたセンスのないイメージ図

 ガレージへ取って返して確認する。
 
 どうやら大きめのワッシャが挟めそうだ。
 工具箱から適当な物を引っ張り出して隙間に挟み込む。飛び出たワッシャの端を反対側から……よ~し、これなら叩けるぞ。
 
 しかし、数回叩くと、鉄製の薄いワッシャはぺこりと曲がってしまった。
 ホームセンターへ駆け込み、ステンレス製でカラーの内径20mmぎりぎりのサイズのものを購入してくる。
 
 ワッシャを2枚挟み込んで、さらにそれにひっかけるように中央に1枚をセット。
 これを反対側から太目のパイプで引っ叩けば……うひ~、外れたぁ~

 「頭は使うためにあるんだねぇ」とか「この方法、実用新案とれないかな?」とか考えながら外れたベアリングとカラーをチェックする。
 
 付いていたベアリングは片側シールだった。
 そしてそのシールはなぜか内側に向いていた。外側には別途ダストシールが付いているからなのだろうか?


これで一安心・・・?

 さて、次は反対(ドライブシャフト)側。ホイールをひっくり返す。

 カラーの外れたダストシールを引き剥がす。

 「まぁ片側が外れたから後は簡単に叩きだせ……って、なんだよ!ニードルベアリングじゃねぇかよっ!
 
 現れた左側は、右側のような一般的なボールベアリングとは異なり、細い棒がローラー状に置かれたニードルベアリングだった。
 
 あ~、これどうやって外すんだぁ?同じように叩けばいいのかなぁ?


内側のニードルが見えますか?

 しげしげと観察。

 う~ん、形状が違うだけだから叩けば大丈夫な気がするんだけど…まぁ、壊れても外れりゃいいんだけどさ。

 ホイールの裏側(右側)から覗くと、こちらのホイールの座面には切り欠き様の部分があった。多分ここから叩けば外れやすい…よね?


そしてまたセンスの無いイメージ図

※切り欠きは幾何学的ではなく結構いいかげんな形状だった。ホイールの鋳造状態と関係あるのかも?

 裏側からひたすらに叩く。

 ベアリングからニードルが外れ、ばらばらと下へと落ちる。うん、やっぱこれは「壊してる」って言ったほうが正解だな。







 4箇所ある切り欠きを交互に叩いてニードルベアリングを押し出す。
 
 ベアリングの厚みが小さく、相当にしぶとかったが、なんとか外すことに成功。あ~、面倒だったぁ~

 CRC-556で「穴」を綺麗に清掃。

 「やれやれ、あとは新品のベアリングをセットすればいいんだけど……そういえば、ニードルベアリングって叩いて入れて良かったんだっけ?

 確か、「ニードルベアリングはプレス機で圧入すること」「うかつに叩くと壊れる」とか聞いたことがあるような気がする。
 
 モノがリアホイール(それもディッシュタイプ)だけに、プレス機代わりの万力にかけるわけにはいかない。
 もちろん、シャコ万とかでも届かない。
 
 外したはいいが、さて、どうやって入れりゃぁいいんだ?ベアリング?
 
 


<2007年7月>

  そして入れる方はといえば

 いろいろと調べてはみたものの、ニードルベアリングを圧入する良い方法はみつからない。

 「仕方ない、いつもどおり叩いて入れるか」

 入手後、冷凍庫で1週間キンキンに冷やしておいたニードルベアリング(理由はこちらで)を取り出してくる。
 
 給脂したホイールにセット。
 ニードルベアリングには、叩いて良い面(刻印あり)と悪い面があるものがあるそうなのだが、このベアリングはどちらも同じ様子。
 「ま、壊れたらそれまでよ」


グリスも凍る新ベアリング

 上に古いベアリングの枠(中は外す時にばらばらになってしまった)を置き、ハンマーで叩く。
 垂直に入るように、そして壊さないように慎重に慎重に・・・

 冷えていたせいか、ベアリングは比較的すんなりと打ち込まれていった。
 面一まで打ち込んだら古いベアリングを外し、以後は枠を、打ち込み用にしている棒(以前ねじ切った延長バー)で叩いて入れていく。
 音が「コンコン」が「キンキン」に変わったら奥まで打ち込めた証拠である。

 しげしげと眺め、中に指を突っ込んでぐるぐると回す。
 「変な感じもないし、きちんと打ち込めた・・・よな?」


ニードルが曲がったんじゃないかと心配で…

 「大丈夫であってくれよぉ・・・」と祈りながらホイールをひっくり返す。

 磨いておいたカラーを入れる。
 下(ニードルベアリング側)までしっかり差し込まないと高さが合わなくなる。ここまできて失敗すると大変なのでこれまた慎重に。

 これまた冷え切った新(ボール)ベアリング。
 前に付いていたのは片側シールだったが、こちらは両面シールだった。
 
 これまた上に古いベアリングを置いて叩く。
 「コンコン」「キンキン」も同様だ。


両面シールの改訂版


サークリップの溝の位置まで打ち込めればOK





 サークリップをセット。

 その後、シールをハメ込んでこちら側の処理は完了となる。ふぃ~・・・


これは内ガケのサークリップです


ダスト(オイル)シールセット





 もう一度ホイールをひっくり返す。

 指で中のカラーの動きを確認した後、こちら側のカラーをセット。その後シールをハメ込んでやる。


カラーを入れて


シールは奥まで押し込みます

 最後に綺麗に磨いておいたギア部(ゴムの場所はシリコングリスで磨き、裏側のOリングは新品に交換済み)をセットし、サークリップで留めてやれば交換作業は完了。

 や~、出来た出来たぁ~


こちらのサークリップは外ガケです

 
 後はいつもどおり、ホイールを車体へ取り付けるだけ。

 アクスルシャフトを仮留め後、一旦センタースタンドを外してスイングアームを動かしてみる。
 これは各部を馴染ませるため・・・というか、単なるおまじないみたいなものだけど。

 センタースタンドを掛けなおして各部を本締めする。

 手で回してみると、心なしかホイールの動きが軽いような?
 まぁプラシーボなんだろうけどさ。

 これでホイールベアリングの交換作業は完了。
 でも・・・やっぱりニードルベアリングが心配だから、少し走ったらもう一度チェックしてやることにしよう。
 
 

 


<2008年5月>

  そしてその後

 まったく問題なし。というか実に快調。
 やー、良かった良かった・・・
 



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