いつか来るとは思っていたが・・・
スタータークラッチがお亡くなりになる。
セルは元気に回るんだけど途中で滑ってクランクが回らない。当然エンジンも
かかるはずなし。前から調子は悪かったんだけど(前バイク紀行参照)今回ツーリング途中で急にお釈迦、完全に空回り。幸いエンジンが温まっている状態だったんで,
なんとか「押しがけ」できたけど。
(ちなみにV-Maxは押しがけするバイクじゃないことを痛感。)
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さて、帰ってきて早速バイク屋で見積もり、「開けてみないと必要なパーツわからないし、SST(特殊工具)要るからメーカー修理に出すんで2週間以上かかるよ」とのこと。
う~む、修理書とかパーツリストは家にあるし、前回の修理の時(スタータークラッチは中古で買ってすぐに不調となり一回交換している。今回は別の店に見積もりを依頼した)SST使わなくても出来てたような気もするし、ツーリングやらキャンプやらのスケジュールは詰まってるし・・・
おし、自分でやろっと。
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でっきるかな、でっきるかな・・・
スタータークラッチ交換といっても、修理書によると基本的にはボルトオン(あたりまえか・・・)
調整する個所とかはないんで比較的気楽。
とりあえずオイル抜いて、六角レンチでクランクケースのカバーを開ける。前開けたときはガスケットを再使用しちゃったけど、今回は新品にしてやるぞ。
さて、出てきたフライホイールを留めてるボルトをゆるめないといけないのだが、メガネレンチを掛けて回すと・・・
「クランクまで一緒に回るぅ」あたりまえだってえの。
共回りを防ぐ為、軸側のバカでかいナット(というか軸が六角になっている)を押さえないといけないのだが、そんな大きなメガネレンチはない(30mm位あるかな?)
新しく買うのは悔しいんでモンキーレンチで対応する。2つのレンチを掛けてっと。
「ん~、固い!」
伝家の宝刀「CRC55~6攻撃」、禁断の最終兵器「ハンマーアタック」を駆使したあげく
、丸2日かけて、やっと外す事に成功。「ふ~、良かった外れて・・・」
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気合が大切
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次はフライホイールの引っこ抜き。
実はここが一番の問題、SST使わなきゃいけないのはここ。 クランク軸と固着している(であろう)フライホイールを引っ張る「プーリー」って奴を使うのが正統派、駄菓子菓子、そんなものがあるはずない!(まあ覚悟済みだけど)
基本的にはもう留まっているところはないんで引っ張るだけのはず。 (事実それだけで外れる場合もあるらしい)
軍手はめて「んしょんしょ」と引っ張ったけどびくともせず。ハンマー攻撃もダメ、仕事終わった後の深夜、3日間ほど悪戦苦闘したけどらちがあかない。
「よおし、そっちがその気なら・・・」 SST(専用工具)を自作することに決定。(爆)
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とりあえずボルトは外れた・・・
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発進!なんちゃってSST
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SSTとはいえ、所詮はクランク軸の中の芯のところ②をボルト③で押すだけのもの。
修理書に載ってるSSTの写真を見ると、フライホイール①に固定してボルトで押す様子。
フライホイールにはSST装着用のボルト穴が開いているようだ。
早速手持ちのボルトを数種試して、この穴のネジ山のピッチを確認。
「M8のボルトが丁度合うな。」
日曜大工用品店へGO!、同じピッチの長いボルトを3本と大き目のワッシャ&ナットに、「押し」用の20mmというでかいボルト(とナット)を購入する。
家にあった厚い合板④を四角に切って、実寸合わせでぐりぐりと穴をあければ、自作SST「なんちゃってフライホイールマグネトープーリー」(笑)が完成だ。
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早速装着する。
位置合わせして固定、中央のどデカボルトを締め込んでいくと合板が「みしみし」と嫌な音を立てる。
「本物はアルミ製だしなあ、板がもつかなあ・・・」
適当な負荷をかけたところで観察、合板は歪んで結構なテンションがかかっている。
「よし、勝負」中央の極太ボルトの頭を一発、気合を込めてハンマーで叩く。
「バキッ!」「ガコッ!」
反動でフライホイールが飛び出して来る。「おおっ、外れたぁ!」やるではないか自作SST! |
見よ!この雄姿!
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こ、これわ・・・
ひとしきり「歓喜の舞」を舞った後、改めて外れたフライホイールに付いているスタータークラッチの状況を調べる。
「うわ、ボルトが折れとる!」
なんと、スタータークラッチ固定用のボルト3本のうち1本が完全に折れ、もう一本は半壊、最後の一本もぐらぐらという有り様。
前回の修理の時の締め付けトルクが甘かったのか、緩んだボルトが振動で折れてしまっていたようだ。
セル回した時の異音の原因はどうやらこれ、もし3本とも折れて、折れたボルトが挟まったりしてたら
・・・ううっ、コワいコワい・・・
(前回修理した奴出てこぉい!)
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見事に折れてる。
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折れたボルトがネジ山に詰まってるんで、電気ドリルで揉んで外す。
鉄の切り屑がマグネトにいっぱい付いちゃったけど、どうせ装着前には洗浄するからいいや。
意外にもスタータークラッチ自体には摩耗や損傷等はみつからず。コマやバネもちゃんとしている。クラッチが空回りじゃなくて、クラッチ自体の装着が緩んでいたのが原因のようだ。
「これならまだまだ使えるな・・・」部品も安くないし、これが使えるのは大助かりだ。
翌日、早速部品注文。
ボルト3本 270円也
ガスケット 510円也
いつもの銘柄のオイル4Lで5000円。ちなみに自作SST代は約500円。
よしよし、浮いた浮いた・・・
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さすがに重い・・・
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取り付け取り付け・・・
2日ほどで部品到着。チェックするとボルトの形が違う(サイズ、ピッチは無論同じなのだが)部品番号も新しくなってるんでショップで確認してもらうと、品番が新しくなっていたのでこのボルトで間違いないですよとのこと 「さては、ボルトの折れるトラブルが多発したな・・・」邪推だっちゅ~の。
早速組み立て。
バラした逆の手順で組むだけなんで問題はないはずだが、念の為修理書とパーツリストと首っ引きで組み立てる。
フライホイール等は廃油使って洗浄(というかゴミ落し) う~む、洗浄台とか欲しくなるなあ・・・いかんいかん贅沢は敵だ。
スタータークラッチにコマとバネを組み込んで動きを見る。まあ、こんなもん
でしょ。フライホイールと組み合わせて、新品ボルトに軽くネジロックをつけて締込み。スタータークラッチのコマはフリーなんで、うかつに逆さにすると外れてしまう、なんかコツがありそうだな?気を付けながらクランク軸へ取り付ける。
整備書を見ると、例の太いボルトの締め付けトルクは13kg/m、でもうちのトルクレンチは11kg/mまでしか測れないんだな。(よ、さすが3,980円!)足りない分は「手ルクレンチ」でカバーしよっと。
セルとの間のギアと新品ガスケットを装着して、クランクケースカバーの取り付け。ヘキサボルトを締めて、オイル入れれば完成だ。
チェックチェック、「稼動部よ~し」「オイル漏れな~し」、そしてこれはお約束、「余り部品な~し」(爆)
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エンジン始動!・・・のはず?
どれどれとエンジン始動。
「キュルキュルキュル・・・」「おおっ、クランクが回るう!」どうやら成功みたい・・・だけど
「エンジンがかからん・・・」(爆)
(クランクさえ回れば)あっという間にかかっていたエンジンが音沙汰無し。外は土砂降りの雨、湿度95%のせいかしらん。どうせ交換時期だしと、念のためプラグを新品のVXに交換するが同様。
プラグ外して火花をチェックする:OK
しばらくクランキングするとプラグが濡れるからガスは:OK
エアフィルターは汚れてないぞ:OK
だって2週間前まではなんともなかったものなあ・・・ なんだろ???
む~、わからん!とりあえず上がってしまったバッテリーに充電しながら考えたけど思い付くことなし。
さて、どうしようか?(爆)
バッテリー充電、クランキング、エンジンかからず、再充電、これを繰り返す。
かかる「気配」はあるんだけどな?気のせいかスタータークラッチの滑りがまた大きくなってきている気がする。こ、これわ・・・部品交換をケチった報いかぁ!
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ああ、無常・・・
日を改めてバイク屋のお兄さんに相談する(←最初からそうせい!)
どうやらスタータークラッチがまだ正常に稼動していないのではないか?とのこと。本来「滑ってはいけない」ものらしい。
「滑りが減った」ことで満足してはいけないようだ。(爆)
「滑り」+「湿度による始動不良(困難?)」の合わせ技かな?修理自体は間違っていなかったようで一安心。だが・・・どうしよう?部品を注文して再度取り付けしても良いのだが、原因が判断できないとなればどの部品を注文したら良いかわからない。
バイク屋にしても現物みないと判断できないだろうし。
雨降った位で始動できなくなるのも困るんでキャブの同調もしたいし。 (4連バキュームなんて持っているはずなし)
で、ショップに頼むことに決定!(爆)(←だから最初からそうせい!)
まあ、これまでに使った部品代は1000円位のものだし、どうせプラグ交換もそろそろやらなきゃならなかったし。自分で中味確認できたし、よしとするかぁ・・・
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師のたまわく・・・
動かないV-Maxをトラックで「ドナドナ」(輸送)する。その前のちょっとした点検の結論、「やはりワンウエイクラッチはまだ滑ってる」
自分がOKと思ったレベルでは駄目のようだ、もっとも中古で買ったときからこんな感じだったんだけどなあ?
今回は、自作「なんちゃってフライホイールマグネトープーリー」があるのでメーカーには出さなくて済むとのこと。この装置(?)バイク屋のお兄さんに大好評!満足満足自己満足。
ショップでバラした結果は?というと・・・
その1:組み方が逆の部品がある?
その2:ない部品(微小パーツ)がある?
なにを~!まあ普通に考えれば、素人の自分の修理ミスと見るのが妥当だろう。しか~し!今回は自信があるのだ。取り付け間違いの無い様にと(パーツリストとかから抜けている個所もあるんで)修理前の様子は全部デジカメで撮ってあるのだ。しかも、素人にありがちな組み付け漏れの無い様にと余り部品(笑)がないのも二重三重に確認済。
バイク屋のお兄さんの言う通りだとすると・・・
「悪いのはだ~れだ!」(爆)
う~む、前回同じ個所を修理したのは5年前、もしかするとその時なのか?・・・気づかなかった自分が悪いのだが。
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おまかせの日々
とりあえず、「ノーマルの状態」へ戻してもらうよう依頼する。まあ良い機会だ、きっちり直してもらおっと。
足りない部品を再注文し組み立ててもらう。が、「ワンウエイクラッチも寿命ですねえ・・・」
がぁ~ん、自分が気づかなかった個所にクラックが入っているらしい。ショップに頼んだ時点で覚悟済みの自分は、素直に「新品部品にして下さい」と依頼。再々注文のため週末のイベント(ツーリング紀行 モトパラダイス参加記参照)へのバイク参加は絶望となる。
「いいもんね。車で行っちゃうもんね。クーラーボックスだって持ってっちゃうもんね。冷たいビール飲めるもんね。」
翌週、待ちに待った修理完了の知らせが入る。平日だが会社帰りに引き取りに行くことにする。さて、問題の個所は?
まず、パーツリストと逆に組まれていたのは途中のギア。これはまあオフセットが違う程度で外れていた訳ではないし、回らないわけではないので良しとしよう。(滑りにもあんまり関係なさそう)
無かった(?)パーツはフライホイールの空回りを防ぐ為クランク軸に付けるストッパー、パーツリストではクランク軸側の説明に書かれている為チェックから外れていたようだ。(後にチェックした修理前のデジカメの画像でも確認できず。小さいパーツなのだ)
これはなんか関係ありそうだなあ?バイク屋のお兄さん曰く「フライホイールが外れた拍子にどこかへ行く事が多いんですよ」との事なので、自分の作業でなくした可能性もないわけではないけど・・・。む~、かなり入念にチェックしたんだけどなあ?
外した部品のクラックの個所も見せてもらう。なるほど、ワンウエイクラッチの内側、例の折れたボルトの穴に細いクラックが見える。これが滑った原因じゃないだろうけど、交換は仕方ないなあ。
空回りの直接の原因は、やはり部品の摩耗ではないかとのこと。クラッチのコマと受け手のアイドルギア部が微妙に擦り減っていたようだ(無論クランク軸のストッパーが前から無かったのなら空回りを助長する要因だったであろう)いずれにせよ折れていたボルトの状況といい、結構危ない状態だったようだ。
さて、かかった費用は・・・(2回ケースを開けたんで、せっかく新品にしたガスケットも、もう一枚必要となった。)
アイドルギア 2,900(女の子ではない)
スタータクラッチアウタASSY 7,300(アウトではない)
ガスケット 510(ビスケットではない)
ガスケット2 160(しつこいようだが叩くと2枚になったりはしない)
キーウッドラフ 170(ドライバーやスプーンではない)
オイル(エフェロ) 4,800(パリにある塔ではない)
これに工賃5,600と引き上げ(ドナドナ)料5,000、消費税を加えて 修理費総額は〆て・・・27,270円!チーン!
うむ、妥当な金額だ(というか工賃安いな、自作SSTのおかげか?(爆))
それでは、と(エンジンの冷えている事を確認の上)セルを回す。 「キュル・・・ボボボボ・・・」おおっ、まったく滑らない!
キャブ等は特に問題なしとの事、始動不良の原因はやっぱりスタータークラッチだけだったようだ(湿気も多少は関係あったのだろうけど)
交換部品と自作SSTを受け取り、礼を言って店を出る。久しぶりに乗るV-Max
う~む、やっぱり自分のバイクが一番だあ・・・
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大団円
今回はとにかく勉強になった。 自分で修理する事の面白さと怖さ、またプロと素人の判断の違いを思い知った気がする。
「素人がいじったバイクを修理する」という一番やりたくないであろう仕事をしてもらったバイク屋にはとにかく感謝。
でもなあ、「これで次は自分で出来るな・・・」なんて思ったりもして・・・(笑)
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