☆ ツーリング紀行 ☆
海沿いチョイ乗り記


<2011年1月>

 1月某日、晴天。

 早起きしてバイクで出かけようと思ってはいたものの、いざ起きてみると1月の寒さに身が縮む。コタツでぐずぐずしているうちに9時を過ぎてしまった。
 日が落ちると恐ろしい程に冷え込む北関東、出かけるなら夕暮れまでには帰って来たい。
 これから手軽に行けて寒くない場所といえば…「海へでも出てみるか」

 えいやと着替える。

 下はヒートテックタイツに革パンツ。上はこれまたヒートテックのシャツにフリース、薄手のトレーナーの上から冬ジャケット、グローブももちろん冬仕様。「おお、さすがにこれだけ着込むと寒さはさほど感じないわ」

 よっこいせとVMAXをガレージから引っ張り出す。

 先週末、今年の初乗りにと埼玉のライコランドへと出かけてみた。
 空気圧その他のチェックはその時済ませてあるので大丈夫、軽くホコリを払っただけでエンジンを始動する。

 始動時には他の車両より長めのクランキングが必要になる新型VMAX。
 キュルキュルとセルが回るのは3秒ほどか。巷では「潤滑不足によるカジリを起こさないように、また圧縮比が落とされているのであえて長めに…」とかまことしやかに噂されているが真偽の程はわからない。

 マフラーからの排気に温まった水分が混じり白くなる。そしてそれが再度薄くなったあたりが出発の目安。さて、それでは出発しよう。

 ゆっくりとクラッチミート。するりと動き出す車体は相変わらずなめらかだ。
 住宅街を抜け、いつもの通りまで出るが水温計の目盛りがまったく動かない。さすがは気温摂氏3度の朝、温まりきっていないエンジンで大通りに出るのはやめて畑の中を抜けていこう。

 エンジンと共に、サスペンションと自分の体を温めながらゆっくりと走る。
 右手には大きく日光男体山、当然のように真っ白に染まっている。冬の澄み切った空気の中では水彩画のような鮮やかさだ。

 曇り防止にと少しだけ空けたシールドから吹き込む風が冷たく唇に当ってくる。
 そういえば最近では、曇り防止用に「ピンシールド」という二重シールドが売られている。
 「本当にびっくりするほど曇らないんです」という某氏の言葉に先のライコランドでクラっと来たのだが、よくよく考えてみれば俺は曇るような時間帯にはあまりバイクに乗っていないのだった。
 冬場、もしくは梅雨時期にがんがん走りこまねばならない状況にでも陥ったら、その時あらためて考える事にしよう。

 水温計がようやく2目盛りほど上がったあたりで国道へと合流する。
 今日は3連休の中日。だが交通量はさほどでもない。3車線の道路を車の間を縫って走る。
 できるだけスマートに。サンデードライバーを驚かさないように。余計な敵を作らないように。
 単なる国道の追い越しも、いろいろ考えながら走るとなかなか難しいものなのだ。

 高速のIC手前でETCの表示を確認する。STAND BYで異常なし。

 乗り込んだ東行きの北関東道、混雑は国道とほぼ同様。
 気温は低いが太陽の光は強い。気持ち良くペースを上げて走る。

 追い着いたミニバンやSUVは無条件にパスする。だが地味なセダンはまず後ろから状況をチェック。
 そして追い越し際にもう一度乗り手を確認。この手の地味な作業がバイクでは覆面パトカーに捕まった事が無い実績に繋がっているのだと思う。

 澄み切った青空の下、宮岡橋を通過する。
 覗き込むと、橋下のコースではオフ車が数台走り回っている。うちから川沿いに走ってくると丁度良い距離のこの場所、あとでまたセローで遊びに来なければ。

 茨城県との県境周辺にはいくつかのトンネルがある。
 この速度域だとゴウっという音と共に中に吸い込まれていくようだ。トンネルに入った途端急に速度を落とす車は決して少なくない、万が一に備え前車との距離は多めに確保しておこう。

 以前訪れた時工事中だった笠間PAは、通過越しに見ると新しいGSや施設が出来ているようだった。
 宇都宮からさほど離れてはいないけれど、気合を入れて走るとちょっと寄りたくなる位置でもある。どう変わったのか帰りに寄ってみるとしよう。

 常磐道とのジャンクションが近くなると交通量が増えてくる。ペースを落とし、車に囲まれてひたちなかICで高速を降りる。時刻は11時といったところだ。

 さて、「とりあえず海」とここまで来てしまったけれどどうしようか。でもまぁ、とりあえず海岸線へと出てみるか。

 いつものようにダミータンク上にはマップル関東版がある。だが今日はあえて地図を見ずに、面白そうな道を東&南へと進んでみる。

 コンビニがあり本屋があり、小さな喫茶店がある。
 住宅街をゆっくりと抜けて大きな通りに出るとそこは「お、海だ…」

 阿字ヶ浦の海岸は以前のままだった。
 夏には大混雑になる道路も駐車場も今は閑散としている。それでも連休中だけに観光と思われる車が十数台ほど。
 あの砂地の駐車場、VMAXで行けない事もないのだけれど、なにかあると大変な事になりそうなんだよな。

 潮風を浴びながら南へと下る。
 道が細くなり急な上り坂を抜け、その後また海沿いへ降りた辺りが俺のお気に入りスポット。ここは路肩は狭いのだがその分海が近く感じられるのだ。

 今日は止まらず景色を眺めながらゆっくり進む。
 吹く風はおだやかで波も低い。この辺りの海岸線は岩場なのだけれど、今のような天候なら海沿いを歩くのも楽しいだろう。

 その先、海岸線はまた砂浜へと変わり、同時に道も広くなる。時期が悪いと珍走連中と遭遇することもあるこの辺りだが、どうやら今日は平穏そうだ。

 那珂湊漁港付近は相変わらずの大混雑だった。
 漁港で回転寿司を食おう、魚を買おうという車でここだけ渋滞中。バイクの機動性を使い一気に県道へと抜けていく。
 大昔からある赤い橋を渡ったら、これまた久しぶりに大洗の街中へと入っていく。

 大洗水族館の先、海水浴場には大きな駐車場があった。VMAXを滑り込ませて今日初めての休憩を取る。

 気温は相変わらず低いが、朝の栃木に比べれば充分におだやかだ。
 日差しも優しく、止まっている車、歩く人がいるのは阿字ヶ浦同様。ぽつりぽつりと屋台の出店があるところをみると時間帯によっては結構な人出もあるのだろう。

 石垣に座って海を眺めてみる。釣竿を背負ったスーパーカブが海沿いの歩道をゆっくりと走っていく。田舎のおおらかさもいいものだよなと思う。

 うんと体を延ばして出発。
 その先まもなく、信号待ちをしていたら左手に「海鮮」ののぼりが立つ店を見つけた。丁度お昼だしあそこで何か食べていこう。

 駐車場の片隅ににVMAXを乗り入れる。ほぼ満車の駐車場同様、お店も結構な混雑だった。
 もしかすると有名店なのか?予約表に名前を書き入れ隣の土産物兼魚屋で時間を潰す。

 魚屋は決して大きくないが品揃えはなかなかだった。どうやらこちらが本業で食堂は副業のようだ。だとすれば出てくる魚には期待が持てる。

 つい「その手」に乗ってしまい自家製塩辛とジャコの佃煮を買う。
 今日はVMAXのリアシートに小ネットを付けてあるので持ち帰りは問題なし。冬は心配なしに生ものが買えるのがありがたい。

 トータルの待ち時間は15分ほどだったろうか。名前を呼ばれて中へ入りカウンターへと座る。

 旬らしい牡蠣や店の名前の付いた丼にも惹かれたが、「地魚」の文字が目に入り海鮮丼を頼んでみる。
 出てきた丼は、なるほど茨城産らしい白身の魚の刺身がメインだった。
 山葵醤油をかけて喰う。うん旨い、端に盛られたアンコウの肝を付けるとまたコクが出る。なるほど、確かに人が並ぶだけのことはあるな。
 量的にちょい少なかったのと蟹の味噌汁の出汁が少し甘かったのが残念だったが完食。この店は後でもう一度来て他のメニューも試してみるとしよう。

 相変わらずの待ち行列を尻目に駐車場でゆっくりと身支度する。
 ゆっくりとVMAXを後退させる。人目がある場所では万に一つも立ちゴケするわけにいかないのでくれぐれも慎重に。

 「飯を食うと体が温まるな」と出発。
 そういえば海沿いへ出てから他のバイクも見るようになった。この辺りではハーレーの団体とすれ違う、同じ雰囲気の車両なのでミーティングでもあったのだろう。
 国道51号線へと出る直前、GSXとR1が俺の前へと出る。を、宇都宮ととちぎナンバーか、気をつけて帰るんだぞ。

 国道を北上する彼らと別れ俺は南下する。
 海沿いの高台を走る国道51号だが、ガードレールと防風林が視界を遮る。こんな時ステップに立ち上がって景色を眺められる二輪車は良い。こればかりは隣を走るポルシェには真似出来ない事だ。

 国道がゆっくりと海から離れていく辺り、ふと考える。
 この先特に目的があるわけではない。飯は食ったし、土産も買ったし、夕方までには自宅へ戻りたい。そろそろUターンして帰り道にするか。

 コンビニの駐車場を使ってUターン、来た道を戻る。
 「大洗IC」の標識が見えたあたりで走行距離が130kmを超える。高速へ乗る前に給油しておこう。

 道沿いのセルフスタンドへ入ると、4台ある給油機は全部使用されていた。
 そして、こういうときに限ってセルフ初心者やら現金払いやらで一向に前に進まない。まぁそんなこともあるさ。俺だって最初のセルフ給油の時にはずいぶん手間取ったものだから。

 カード払いでさくっと給油を済ませ発進、ICから高速へと乗り込んでいく。
 ランプを曲がりながら自分に言い聞かせる。「いいか、帰りは慌てずゆっくり走るんだからな。」

 1.5KS(KousokuSeigen:意訳)以上を使うのは追い越し時のみとし、1.2~1.3KS巡航といったあたりでまったりと西へと戻る。
 まったりとはいえ、この辺りは一番捕まりやすい速度域ともいえる。後ろ&横からの車両確認は来る時同様慎重に行っていく。

 予定通り、行きに気になった笠間PAへと入ってみる。
 二輪駐車場には他のバイクに混じり先のGSXとR1の姿も。を、そんなに時間は違わなかったんだな。

 PAは大幅に変わっていた。
 以前はトイレと自販機、それに地元の土産物屋台が出ていた程度だったのだが、GSの他に食堂とコンビニ的な店舗の入った建物が増設されている。
 駐車場の端には地元屋台も健在、これなら立ち寄る人も増えることだろう、事実今日も結構な人出なのだ。

 自販機でコーヒーを買い、駐車場脇の日当たりの良いベンチに座る。
 このPAは上り下り共通の施設。なのでここからは反対側の駐車場も良く見える。
 そしてあちらにもバイクの集団が。カワサキが多い10台ほどの集団だが、面白いのは皆GIVIと思われる箱を装備していたことだ。車種ではなく箱のユーザーオフ会などというものもあるのだろうか。

 ぐるりと見渡すと、あちらもこちらも二輪車駐車場の脇は身障者エリア。俺が見ているうちにも、1台2台とワゴン車が止まり、杖をついた爺様婆様が降りてくる。
 何不自由ないからだにも関わらず「今空いてるから、便利な場所だから」とあの場所に平気で車を停める奴等がいるのは嘆くべき事だと思う。そんな時俺は「あいつ等は体じゃなく心が病んでいるんだろうな」と思うことにしているのだけれど。

 飲み干したコーヒーカップをゴミ箱に放り込んで出発する。
 トンネルを抜け、直線を一気走り。周囲は水田と畑、景色を愛でながら流して走っていると眠くなってくるほどの快適さだった。

 快走を惜しみながら宇都宮上三川ICで高速を降りる。
 国道4号を北上、自宅はもう目と鼻の先だ。
 日が暮れるまでにはまだ1時間程ある。帰ったら軽く洗車でもしてやろうか。そして今夜は早めに買ってきた塩辛で一杯やるとしよう。

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<本日の走行距離=250km><給油回数=2回>
<教訓:特に大きな出来事もサプライズも無かったちょい乗りツーリング。今回はあえて画像なし・文字修飾なしで書いてみました。>

 <了>




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