■とうとう手を出してしまいました
というわけで、ラジアルポンプのフロントブレーキマスタシリンダ(通称「ラジポン」)を買ってしまう。
もちろん○万円(+備品に△万円)かかるブレンボ製ではなく、DAYTONA-NISSINのものだ。
シリンダを鋳造にして安価に仕上たとはいうが、ラジポンマスタが各種備品(リザーブカップ、ステー、ブレーキスイッチ等々)付きで定価21,000で手に入るというのは、いや実に良い時代になったものである。
★
現在、隼の純正ブレーキマスタに特別な不満があると言うわけではない。
ツーリングはもちろん、峠で気合を入れるような時にも、俺程度の腕には充分な性能である。
だが、正直なところもう少し…と思うところがあるのもまた事実。
絶対的な減速性能や初期制動のタッチはパッドの範疇として、マスタとしてはもう少し「安心して引ける」ようになってくれるとありがたい。
夏のサーキットでローターとパッドが丁度良い温度に焼けた時のVガンマ(乾燥重量120kg台)と同様に…というのは贅沢すぎるだろうけれど(笑)
ラジポンにするとブレーキングのコントロール性が良くなるとは良く言われる事だ。
レバーを引く方向とピストンを押す方向が同じ為、「引き」と「効き」にダイレクト感が出る。
また、ブレーキは他の走り系パーツと異なり、「下手な奴にほど良いブレーキを」とも言われる場所。
良いブレーキは、買っても持て余すようなことはないだろう。
#と、自分を納得させる(笑)
購入したマスタのサイズは19mm
ラジポンの19mmというのは、横置きの5/8インチ(隼の純正サイズ)と同じサイズになる。
※ラジポンの17mm≒横置きの14mm
マスタの(キャリパもだが)サイズを変えるとタッチや効きが激変する。
実はここで、あえて17mmを入れてタッチの変更を…というのも考えたのだが、何しろブレーキは命を預けるパーツである。無難に標準サイズにしておくのが正解だろう。
さて、一般的に、ブレーキやクラッチのマスタを横置きから縦置き(ラジアル)へ換える時の注意点としては、カウル(スクリーン)とのクリアランスがある。
横置きよりも前後方向へスペースをとるので、ぶつかる場合があるのだ。
幸いなことに、隼はラジポンへ交換の先駆者には事かかない。事前にWEBを調べたのだが特に問題はなさそうであった。
#ノーマルハンドルなら、ね…
色は見てのとおり黒ベースにアルミ地レバー、これは他の純正部品との相性を考慮しての選択である。
物が届き、さてさてと交換作業。
まずはノーマルマスタを取り外す。
ブレーキホースとバンジョーを切り離し、マスタをフリーにしてから取り外し。
ブレーキフルードが流れ出ないように気をつけて…っと。
お疲れ様>ノーマルマスタ すっきりハンドル
まずは、本体のみ仮組みしたラジポンをハンドルにつけてみる。
ハンドルを左右に切ってみるが、やはりカウルとのクリアランスは問題なし。思っていたより余裕(後述)があるようだ。
それではと、ラジポンにバンジョーとバンジョーボルト、ホースを仮組みする。
さすが国産品、ボルト締め込み時に動かないように、バンジョーの取り付け位置(ホース取り付け部分)の指定がある。うむ、これなら間違えようが無いな。
取り出し口を出す切り欠きがあります
これをハンドルに取り付けて……って、あれ?なんか当たってる?
今付けたバンジョーのホース取り付け部が、見事にフロントフォークのトップに干渉する。
バンジョーだけならマスタの取り付け角度によっては逃げられない事もないが、ホースが付いているとなれば話は別である。ホースのコネクタ部は更に太くなっているのだ。
見事にぶつかりました
「おかしいなぁ、大丈夫なはずなのになぁ…」って、そうか、ノーマルハンドルなら、ハンドルバーはフォークトップよりかなり先(フロント側)にセットされるので問題ないだろう。
#バーハンは大分手前に引けてるからねぇ…
先のカウルとのクリアランスで予想より余裕があったのは、「その分フォークとの余裕は減る」という事だったのだ。ううむ、これはやられたな…
#単なる下調べ不足。
★
フォークトップからバンジョー(&ホース)逃がす為には、
1.バンジョーの取り付け角度を変える
2.曲がったバンジョーを買ってくる(現在はストレート)
・・・が考えられる。
金が掛からないのは1.なのだが、先のとおり本来のバンジョーの取り付け角度が決められている為、微調整ができない。
用意されている切り欠きを避け、バンジョーを上から見て右回り(レバー側)へズラすと、取り付けはできるがレバーを握った時に、レバーがバンジョーにぶつかってしまう。
これは某パーツ屋でウィンドショッピングをしている時に見かけた注意書き、「絶対してはいけません」という取付方法そのままである。
やっぱりダメでした。(バンジョー変えた後)
ふむ、仕方が無い。曲がったバンジョーを買ってくるか。
ショップへと出かけ、バンジョーを探す。
曲がった物はいくつか種類があるが…どれも今ひとつなんだよな…
地元のショップには、○~←こういう位置にバンジョーを置いた時、ホース取り付け口が、
・上に20度曲がる
・横に20度曲がる
・一旦横に出た後、90度上に曲がる
の3種類しかない。ライコランドあたりまで行けばもっと種類があるかもしれないのだが…
上に曲げても意味はないし、というわけで、とりあえず横に20度曲がったバンジョーを買ってくる。
#ステンレス製で\1,890-…orz
★
さぁ、これでどぉだぁ!と取付すると……あ~、やっぱりぶつかるなぁ。
今度は仮組みはできるのだが、ブレーキレバーの角度を合わようとマスタを下げるとぶつかってしまう。
ぶつからないぎりぎりの位置だとレバーが上過ぎる。
操作云々はもちろん、これではカウルとさえ当たってしまうだろう。
う~む、と悩む。
ショップにあった他のバンジョーでも、この問題は解決できそうに無い。
例え運良く逃がせるようなバンジョーが見つかっても、取り出し口に変な角度が付くとブレーキホースの長さが足りなくなる。
このブレーキホースも半年前に買い換えたばかりだしな…むむむむむ…
★
クラッチ側に付いているチョークケーブル。バーハン化の際取り回しを変えたのだが、これと同じ要領でできないだろうか?
今度はバンジョーを上から見て左回り(タンク側)へズラし、フォークの手前にホース取り付け口を出してみる。
ブレーキホースもチョーク同様内側から。おお、これならなんとか付くみたいだぞ。
手前へ出してみました
ブレーキホースが内側から出ているというのはなにやら変な感じだが、ハンドルを切っても干渉するところはないし、レバー調整も問題なし。
ショップでは絶対やってくれないであろう仕様だが、ま、自己責任ってことでこれに決めますか。
再度仮組みしてホースを繋いで再確認。
念の為、ブレーキホースはフォークにタイラップ留め。もちろん、フォークがバンプした時に曲がって吸収する分を残して、だ。
よぉし、なんとかなった!とレバーを再調整。
好みの位置を確認しようとレバーを引くと…うがぁ!今度はスイッチボックスと途中でぶつかりやがるっ!
ここでぶつかってます
引いたブレーキレバーの根元が、スロットルケーブルの引き側の付け根に見事に当たる。
半分くらいは引けるから、きっちりエア抜きすれば問題ないかもしれないのだがやっぱり気持ち悪い。
ラジポンの位置をいろいろ変えて見るが状況変わらず。
バーハンの垂れを減らして逃げる手もあるが、バーハン化の際に書いたとおり、気軽に調整できなくなるのは願い下げ、となれば……
「スイッチボックスを回すしかないな」
ハンドルバーに開けられた穴に、ポッチでぴったり位置決めされているスイッチボックス。
そのポッチを、ニッパでバチバチと削ってしまう。
削り跡は入念にヤスリをかけて平滑に。
ハンドルの穴はビニールテープでふさぐ。
フリーになったスイッチボックスを上向きにすれば…ほぉら、ぶつからなくなりました。
せっかくなので、クラッチ側のボックスも同様に処理。
こっちは以前から「下向きすぎる」と思っていたので躊躇は無い。但し、取付ネジをちょいときつめに締めておくとしよう。(走っている最中回ってしまったら大事)
★
全ての位置決めが終わればあとは普通のエア抜き作業。
ラジポンには、なんとポンプ部にエア抜きブリーダーが付けられている。
ここから抜いた後、下からエア抜きすれば作業は実にスムーズに進む。
※もちろん最後にもう一度上からエア抜きする。
上から抜けるのはありがたい
ブリーダー内のフルードをコヨリにしたティッシュで吸い取り、キャップを締め、フルードが飛んだ可能性のあるところにざばざばと水を掛けてふき取る。
うむ、これにて作業完了。
リザーブタンクの状態と、ハンドルを左に切った時のクリアランス
メーターパネルへの視界はちょい狭くなったがまぁ許容範囲。邪魔になる事はないだろう。
それにしても・・・
はっはっはっ、ラジポンだったらラジポンだっ、嬉しいなったら嬉しいなっ。
■走ってみました
数日後、雨の予報にビクつきながら「インプレの為よ…」と走り出す。
北の山へは(雪の為)まだ走りに行く事はできない。
とりあえず街中を流してみることにする。
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走り出してすぐ感じたのはレバーが「遠い」事だ。
俺は、ブレーキレバーは遠い方が好きなので、調整ダイアル(アジャスタ)を「1」にする事が多い。
だが、このラジポンの場合はそれではちょいと遠すぎる。
「2」に合わせてやるとこれまたちょい違和感がある。今度は「効く位置」が近く思えるのだ。
まぁダイアルがどんな位置だろうとたいした問題ではないのだが、どうやら今までのブレーキと比べると、
■遊びを取った位置を基準にレバーを合わせると、ちょい近い
■ブレーキが効く位置を基準にでレバーを合わせると、ちょい遠い
となるようだ。
ブレーキの「効き始め」から「効き終り」までの距離が長い、と言えばお解りいただけるだろうか。
もっと即物的に言うと「スポンジー」。
一瞬「中にエアが残っているのか?」と思うほど握りしろがある。これが「コントローラブル」という事なのだろうか?
確かにブレーキの効き自体は悪くない。
「クー・・・」とフロントタイヤが鳴くくらいのブレーキングも問題なく行えるし、あえてラフに扱ってフロントロックへも持っていける。
峠でハードブレーキングを繰り返したわけではないので確証はないのだが、エア等の影響ではなさそうである。
う~む、こういう感覚は新鮮だな・・・
いろいろ試しながら走る。
タッチに馴染んでくると「なかなかいいかも?」と思えてくる。
カツンと効くわけではないので神経質にならずに済む。
また、ブレーキング中のコントロールは確かに楽。バンク中にもちょいちょいと弄る事ができる。
今日は街中ツーリングだったが、もう少し暖かくなったら早朝の峠に持って行って、ちょいとハードに試してやるとしよう。
■もう少し気合を入れて
後日、箱根&日光を走る機会があったので、その時の感想を。
まず、
>走り出してすぐ感じたのはレバーが「遠い」事だ。
に対応する為、レバー位置…というか、取り付け位置自体を調整する。
ブレーキレバー全体を外側にズラし、相対的に内側を握る事になるよう変更する。
同時にエア抜きし、空気の混入が無い事を再度確認する。
これで取り付けに関する懸案事項は無くなったはずだ。
峠では、前に書いたとおり「ちょいとハードに」試してみる。
登りのブレーキング。
特に問題なし。というか相変わらずの好感触。
タッチの柔らかさ(ストロークの大きさ)は相変わらず気になるが、ブレーキングに影響がでる事はない。
慣れてくると、コントロール幅が増えたせいかこれまでよりブレーキに頼りがちになってしまう。
結果、突っ込みすぎてのオーバーラン発生。これはまぁ俺が下手だから仕方が無いといえばそれまでだ。
下りのブレーキング。
峠の下りはブレーキへの負荷が大きい。
特に隼のような大型車では、ブレーキの性能というか、影響が大きく出る。(V魔ほどではないが)
下りでは「ソフトだが効く」というのが登り以上に顕著に感じられた。
ブレーキを残したままコーナーへ入ったり、コーナー途中で軽く再ブレーキしたりする際、これまでよりスムーズに操作できる気がする。
#やらずに済めばそれに越した事は無い操作だが…
絶対的な効きは変わらないが、コントロール幅が大きくなったのはやはり安心できる。
・・・とまぁ登り・下りとも、交換した悪影響は感じなかった。というか、「思っていたより変わったな」というのが正直な感想である。
#もちろん良い方向に
マスタシリンダの形式変更でここまでブレーキが変わるとは思わなかった。
先にも書いたが、「これで\21,000-」は相当にお勧めだといえる。
#ブレンボとかだともっと変わるのかな?・・・