■なんのことでしょう?
「ごめんなさいっ!ホントごめんなさいっ!」(←いったい誰に謝っているんだか…)
…というわけで、誰に聞いても「やめろ」という返事しか返ってこない隼のバーハンドル化に着手する。
以前にも書いたが、隼にはセパレートハンドルが一番似合うと今でも俺は思っている。
今や「ツアラー」と呼ばれる事の多い隼ださが、俺的には立派なスーパースポーツ。
「やっぱ峠走るならセパハンだよな」の思いは変わってはいない。
ところが、遠出をするとちょいと疲れるようになってきたのもこれまた事実。
疲れるといっても腰や腕ではない。
前傾ポジションには慣れたし、気になっていた膝はステップを(結果的に)下げた事により負担が減ったので問題なし。
疲れが出るのは実は首なのだ。
猫背&上目遣いで乗っていると、首の後ろがじんわりと疲れてくる。
V魔ではなんともないのでヘルメットのせい(重さ・バランス)ではない。
時々ストレッチして誤魔化すものの、同じ姿勢を強いられる高速道路を長時間走ると疲れが溜まる。
スペーサーを導入し、ハンドルをノーマルより17mm上げた事で確かに楽にはなったのだが、「もう少し…」の思いはやはり強い。
そして、カウルやスクリーンに干渉しないようにハンドルを更に上げる為には、手前に引く必要がある。
現行のトップブリッジ直付けのハンドルセット(セパハン)ではこれは無理、残された手段はバーハン化しかなかったのだ。
※とまぁこれまでいろいろ偉そうな事を言ってきたのに、あっさりとバーハンへの交換に走った理由付けはこのくらいで充分ですか?
それではと銘柄の選定に走る。
先のとおり、カウルとのクリアランスが厳く、かつトップブリッジが特殊な形状の隼には、汎用バーハンキットを取り付ける事は難しい。
あえて汎用品を買い、あれこれ苦労するのもやぶさかではないが、ここは専用品を優先するのが正解だろう。
選択肢はいくつかある。
まずは古株、ハリケーン
専用ハンドルやブレーキホースまで付属した親切設定は魅力だが、目の玉が飛び出る価格設定。
悔しいので「付属ハンドルの形状は好みだがジュラルミン製だしな…」とかなんとか文句を付けてみる。
Nプロジェクト
ううむ、悪くない。ハンドルを自分で選ぶ必要はあるが、その分自由度がありそうだ。価格も割りとお買い得かも。
バーハンではないが、PLOTからアジャスタブルハンドル(WEB見つからず)というのも出ていたはずだ。
ただこの製品、セパハンなのはいいが、全体にゴツ過ぎる。ハンドルも専用品なので転んで曲げると高くつきそう、そして何より目の玉が転げ落ちる価格設定が難である
アクティブの扱いで、ギルズツーリングからバリオバーというものが出ている。
汎用品だが、フォークからバーまでの形状が自由に設定できるので楽しそう、しかも仰々しいデザインも俺好み。問題はといえば…ああ、俺の目玉がっ目玉がぁっ!
「目が」で思い出したのだが、確かメガカスタムあたりからも出ていたような気がする。
だがメーカーのHPからは検索することができなかった。まぁ会社自体アレしてしまったし…(フェードアウト)
つらつらWEBを周っていて目が留まったのがアントライオンである。
ブレーキ&クラッチレバーの印象から、antlion=高価というイメージしかなかったのだが、価格を見てみるとさほどでもない。(安くは無いが)
パイプの専用ハンドル付きだし…おお、なんと黒色がラインナップされているではないか。
隼のメーター周りは黒で統一したいと思っている俺にとっては渡りに船、実はアルミ地だったら塗装してやろうと思っていた程なのだ。
ここで出会ったのも何かの縁、これを購入することにしよう。
アントライオンのトップブリッジは2種類から選ぶことが出来る。
柄が彫られた「ナスカタイプ」と地味な「ミルタイプ」。
地味な方をチョイスしたのは言うまでも無い。
さて、バーハン化ともなれば、他に用意しなければならないものもある。
一番費用の掛かるのはフロントブレーキホースだろう。
ホース長に余裕のない隼では、アップハンドルにする場合、ロングタイプに交換しなくてはならないはずなのだ。
<余談>
フロントブレーキホースの長さは、フロントホイールを浮かせた状態で合わせる必要がある。 タイヤの接地した状態(1G)で合わせてしまうと、ホイールが浮いた時(ジャンプやウイリー)にホースが引き伸ばされ、断裂する可能性があるからだ。 かといって長すぎると、今度はフルバンプした際に折れたりぶつかったりしてしまう。このあたりの加減がなかなかに難しいのだ。 |
その他スロットルワイヤー(引き・戻し)、クラッチホース、スイッチ配線、ハンドルグリップ、バーエンドも確認もしくは新規購入が必要。
ううむ、やはり金がかかるなぁ…
それにしても、隼のバーハンドル化に関する情報が少なすぎる。
交換している人は相当数いるはずなのだが、WEB上の情報はごく僅か。詳細な交換手順や画像の載っているページなどほとんど無い。
まぁ普通はショップに依頼して交換するのだろうから仕方が無いのだろうが……んじゃまぁ、俺が人身御供になってみるとしよう。
※後に「何故自分で交換する人が少ないのか?」の理由を思い知らされる。
某日、物が届く。
まずは内容物を確認。
トップブリッジ本体とハンドル、ハンドルポストに各種ボルトというシンプルな内容である。
左下の物体は気にしないように
付属の専用バーハンドルは「専用」だけあって面白い形状である。
2次元的に曲げてあり、「垂れ」が無いのだ。
幅は純正同様640mm(実測)、曲げ角度もほぼ同様だろうか?
ううむ、取り付けるとどんなポジションになるのだろう、実に楽しみだ。
同じような形ですな
(純正アッパーブラケットを外した後に撮りました)
ハンドルのバーエンドは通常のパイプ形状。
ボルト穴の切られている純正バーとは異なるので、以前買った隼用のバーエンドは使えない。ま、これは新品をおごってやるとしよう。
フラットなトップブリッジはなかなかに好感触。やはりシンプルなデザインが一番だ。
ハンドルクランプは、トップブリッジにボルト1本で留めるタイプで前後に調整が効く。
一度決めればそうそう調整するものではないが、これまたいろいろ楽しめそうだ。
どれどれと説明書を読む。内容は実にシンプル。
『アッパーブラケットを外して、ロワーブラケット外して、それから取り付けてください』(ま、意訳って事で)
ハンドル周りは一度バラしているので見当がつく。しかし判らなかったのがこの一文。
『キーシリンダー裏のネジをポンチ等を使って外してください』
ポンチ?ポンチってあのポンチか?持ってはいるが、あんなものででどうやってネジを外すんだ?
首をひねりながらも作業開始。
まずはフロント周りを弄る時のお約束、
■リア、フロント共にスタンドアップし、フォーク・ハンドルへの余計な荷重を無くしておく。
■左右スイッチボックスを外し、スロットルワイヤー、チョークワイヤーを取り外す。
■ハンドルグリップは純正で特に不満が無いので再使用する予定。従ってスロットル側は抜くだけでOK。
■接着剤で留められているクラッチ側は、グリップとハンドルバーの間に細いパイプを突っ込みCRC-556を投入。
コジッて抜いた後、グリップとバーをブレーキクリーナーで脱脂しておこう。
余計なパーツが全部外れたら、あとはトップボルト4本を抜けば(ボルトをというより裏側のナットを外す感じだが…)トップブリッジのアッパーブラケットがハンドルバーと共に取り外せる。
挟んであったハンドルアップスペーサーも取り外してと。
次がロワーブラケット(?)
これは今まで外したことの無いパーツである。
ここから先は未知の領域
まずはと、先ほどの説明書による「キーシリンダー裏」のボルトを探す。
ブラケットの裏側から差し込まれているはずのボルトなので、下から覗き込む形になる。
あちこち覗くと…「もしかしてコレか?」
キーシリンダーの脇、影に隠れるようにして打ち込まれているボルトが2本。
とんでもなく見難い部分にある上に、ご丁寧に内側に追い込まれている。
覗き込んだだけでは、ボルトのトップの形状が+なのかヘキサなのかさえ判別できない。
ううむ、これは苦労しそうだな・・・
とりあえず確認せねばと部屋へ取って返し、某誌付属のパーツリストでこのボルトを探す。
ところがいくら探しても見つからない、受け側のパーツは載っているのに何故だろう?
キーシリンダー付近は、防犯上の理由からリストには載らないものなのだろうか?
これはとりあえず後回しにしようと、センターナットにとりかかる。
金色のアルマイト処理(?)が綺麗な純正のセンターナット。
説明書には「必ずソケットレンチで外すこと」とある。しかしさすがに30mm(?)などというバカデカいソケットは持ってはいない。
#何故か27mmならあるのだけれど…
「ま、アルミのナットだし、さほどきつくは無いだろう」と、モンキーレンチを当てて力を……パキッ
うわっ!角が欠けちまったっ!
アルミナットなのになんでこんなにトルクかけて締まってるんだよっ!
しくしく・・・(泣)
泣いても欠けたナットは帰ってこない。そのままモンキーで取り外す。
再使用は…目立つ場所だしなぁ、これも新品買わないとな。
フォークのクランプボルト(ヘキサ)を2本抜けば、後は例の2本のボルトだけとなる。
覗きこんでいるだけではラチがあかないので決断。「うむ、周りを全部外そう」
えんやらやぁとインナーパネルにメーターパネル、ミラー、スクリーン、アッパーカウルまで全部外してしまう。
ま、これは前回やったばかりなので手間はかかるが難しくは無い。
また裸にしてしまいました
さっぱりとしたステアリング周り。改めてボルトを覗き込むと…「ああ、このタイプか」
+でもヘキサでもない特殊ボルト。(種類はあえて書かない)
このタイプなら手持ちの専用ビットが使えるだろう。
合うビットを探し、手探りで取り付け、回そうとするが…「か、固い」
ボルトはピクりともしない。
場所が場所なので力が入らないせいもあるのだが、なんとなくネジロックとかで固定されている気がしないでもない。
この状態のまま力いっぱいやると頭を潰しそう、さぁて、どうしたものだろう?
翌日、大阪のアントライオンに電話で問合せ。
トップブリッジの取り外し方法につきあれこれ聞くものの、今ひとつ明確な返事が帰ってこない。
「いざとなったら特殊ボルトの頭をトバせば外れますよ」との事だが…それは最終手段だよなぁ…
#というか、ネジロックが付いたままトバしたら大変なことになるんじゃないか?
まぁあちらはハンドルキットのメーカーだ、車種固有の情報に疎いのは仕方がないだろう。
更に翌日、困った時のHOC(隼オーナーズクラブ)頼みという事でBBSで質問してみる。(毎度お世話になっております)
すると、さすがに先達がいらっしゃいました。
「あそこはネジロック付いてるよ」との事。ううむ、やはりなぁ…
※俺様さん、200mphさん、ありがとうございました。m(__)m
ちょいと気になったのは「キーシリンダーはそのボルトでトップブリッジに付けられているんだよ」と教えられた事。
あれ?キーシリンダーって別のボルトでフレームに付けられてるんじゃないの?他のボルトは全部外れてるし、って事はもしかして……
仮止めしておいたセンターナットを外し、ロワーブラケットを揺すってみる。と、「動くじゃねぇかよっ!」
ゴムハンマーでコンコン叩いたら、キーシリンダーごとすっぽりと抜けるロワーブラケット、ぐはぁ、早く気づけばよかった。
配線を外し、フリーになったブラケットをひっくりかえしてやれば、あれほど見難かった特殊ボルトが目の前に現れる。あとはじっくりと外すだけ。
確かにネジロックは付いていたが、こうして目の前に出てくれば専用ビットの敵ではない。
尤も「ポンチ」で外そうとしていたら大事になった事だろう(笑)
※取説の記述、変えた方がいいですよってアントライオンに教えてやろうかな…ボルトの頭なんかトバしてたらとんでもない事になるところだった…
苦節3日で外れました
さて、これで純正パーツをきれいに外す事が出来た。
ここから先は「組む」という楽しい作業、わくわくと新しいパーツを並べていく。
新トップブリッジの組み立ては簡単なもので、こちらは説明書のとおり作業すればなんの問題も無い。。
唯一注意する点は、純正のキーシリンダーに付いているワイヤリング用ステー(キーシリンダーの位置決めの意味もありそう)は取り付けないという事くらいである。
#本当はこのあたりも説明書にちゃんと「使いません」って書いてあれば安心できるんだがなぁ…
コレは使わないみたいです
新トップブリッジを仮組みしてみる。
センターナットはとりあえず先の欠けたものを再利用。裏返して傷が目立たないようにして・・・
きっちり水平につけましょう
おお、なんかいい感じかも。
トップブリッジ上にハンドルポストを立て、ハンドルバーを取り付ける。
2次元的な形状のハンドルも特に違和感はない。逆にすっきりと感じられるほど。これは本組みが楽しみだ。
次はワイヤー類のチェック。
■スイッチケーブルの長さは、左右とも純正のままで大丈夫そう。
隼専用ハンドルなので、バーにはスイッチ用の穴も開いているから何も考えずに取り付けられる。
これはこれで便利なような、調整できないのが不満なような(笑)
■クラッチホースもどうやらOK。
まぁステンメッシュに交換した際「長いなぁ」と思ったほどなのであまり心配はしていなかったのだが。
ただ、マスタシリンダのバンジョーの取り付け角を変更する必要があった。
純正のように真下に向けているとトップブリッジに当たってしまうからだ。
※これはハンドルポストの位置による。
■ブレーキホースはやはり無理だった。
ハンドルポストを一番遠い位置にすれば届かない事も無いのだが、調整できなくてはバーハンを買った意味が無い。
やはり長いものに交換するとしよう。
※交換は後述。
■スロットルケーブルの長さも問題なし、せっかくなので注油してから取り付け。
■同様にチョークケーブルも…っとっと、純正の取り回しのままだとピンピンに張ってしまう。
左フォークの内側を通るように取り回しを変えてやるとしよう。
■グリップは、先に書いたとおり純正品のまま。
左グリップはV-Maxの経験を生かし、べったりと接着剤を塗ってやる。うわっはみ出た接着剤がっ!
接着剤を拭いつつワイヤリング。
右スロットルホルダーの内側には軽くシリコンスプレー。
バーエンドは新品、ブレ防止になればとちょい重いものをチョイスする。(純正バーエンドに比べればかわいいものだが)
形になってきましたよ。
えんやらやぁとアッパーカウルを取り付ける。
大丈夫なはずだが、今のうちにハンドルを左右に切ってどこにも当たらない事を確認しておかなければならない。。
カウル側だけでなく、タンクとの間に指が挟まれない事を確認するのも、取り回しを考えると大切な事である。
結果的にクリアランスは問題なしだった。
これもまぁ、ポストの位置によっては微妙なものになるのだろうが。
最後に残ったブレーキホース、では新品を買ってくることにしよう。
純正のサイズ(マスタシリンダから右キャリパーまでの長さ)は640mm、ざっくり測ると+50~100mmあればOKに見える。
ショップで探すと710mmというブレーキホースが見つかった。純正+70mm、これなら丁度良いかな?
ガレージへととって返して仮配置。
長さはばっちりOK、しかしクラッチ同様マスタ側バンジョーの取り付け角を変更する必要がありそうだ。
ストレート形状のバンジョーの為、角度を変えるとホースのとり回しも大きく変える必要がある。
せっかくだから、これを期に曲がったバンジョーを新規購入してもいいけれど…後でラジアルマスター買った時に無駄になるともったいないしなぁ…(←夢物語はほどほどに)
ともあれ、ハンドルを切っても他の場所にぶつからない角度に取り出し角を変更。
新ブレーキホースを本取り付けし、フルード交換&エア抜き。ボルトの締め忘れに注意してと。
ちょいと窮屈ですけれど
フルードついでに、クラッチ側も交換しておこうとタンクを開ける。と、「げ、汚なっ!」
フルードを少し抜いた後
クリーム色のはずのフルードが完全に灰色…というか泥水状である。
隼のクラッチが熱の影響を受けやすいのは有名だが、それにしても劣化が早過ぎないか?それともなにか理由があるのかな?
ぶつぶつ言いながら交換&エア抜き完了。これで「切れ」も良くなれば良いのだが。
メインスイッチを入れてメーター動作確認。
ウインカー等のスイッチの動作も確認。
よしよし、んじゃスクリーンやらミラーやらインナーパネルやらを戻すとしましょうか。
全ての作業が終了。これで交換完了である。
改めてシートに座ってみる。
ふふふふ、バーハンだバーハンだ。
バーハンですよ
んじゃまぁテスト走行に出ますかと、隼をガレージから引っ張り出す。
キルスイッチ確認、ニュートラル確認、キーオン、メーターセルフチェック。
クラッチを握り、セルボタンオンでエンジン始……あれ?
セルが回らない。
バッテリーがあがっているとかそういう事ではなく、ボタンを押してもまったく反応がないのだ。
先に書いたとおり、ここまでに至る操作、状況はいつもと同様である。
メーターのセルフチェックも正常で、FIランプも正常。
サイドスタンドを上げても下げても状態変わらず。
クラッチスイッチもしっかりと接続済み。
ヘッドライトは通常通り点灯。ブレーキランプもフロント、リアとも正常に動作する。
試しにキーオンの状態でキルスイッチをパチパチやると、シート下で動作しているのが感じられる。
無反応なのはセルだけ。
うがぁっ!なんだこの現象はっ!?
セルスイッチの配線は、キルスイッチと一体なので断線しているとは考え難い。(キルスイッチは動作している)
しかし、どう考えてもこれは電気系だ。アッパーカウルを取り付けたとき、繋ぎ忘れたコネクタでもあったのだろうか?
せっかく付けたミラー、スクリーン、インナーパネル、メーターパネルを全て取り外す。
アッパーカウルをもう一度外し、配線を確認。しかし取り付け忘れのコネクタは見つからない。
もともとさほどの数のコネクタはないのだ。
「おかしいなぁ…」と考え込む。
セル固有の場所といえば、スイッチとモーターくらいだろう。
もしモーターが原因であれば、今ここでの修理は難しい。「とりあえずスイッチだけでも見てやるか」
右スイッチボックスをバラす。
スロットルワイヤーを外すのが面倒くさいが仕方がない。後でまた遊び調整をやりなおさないといけないが仕方が無い。
バラしたセルスイッチは単なるボタン。案の定壊れている様子は無かった。
「そうだよな、こんな単純な構造じゃなぁ…って、あれ?」
スイッチは壊れていない。
しかし、配線が外れている。
「こ、こ、こんなものが外れるなぁっっっ!」
スイッチに来ている配線のうち、片側がハンダごと端子から外れている。
これじゃぁスイッチは入らないわなぁ…
試しにこの端子をショートさせてみたら、難なくセルが始動し、エンジンがかかった。
「くそぉ、ヤラれた…」(誰に?)
ちまちまハンダ付けして修理完了。
原因はわからないが、ケーブルの取り回しをあれこれ試している時に、何かの衝撃で外れてしまった……とでもしておこうか。
#どちらにしても、ハンダこと外れるってのはアレな気がするが。
原因判明&修理完了は嬉しいけれど、外したカウル類一式(&スロットルワイヤー)、付けるの面倒なんだよなぁ…
陽の落ちかけた頃、やっとの事で試乗に至る。
まずは「跨った状態」。
ハンドルの取り付け位置は確実に上がっている。但しさほどの差ではない。
17mmアップスペーサーとの差はせいぜい数mmといったところだろう。
左:17mmスペーサー導入時 右:バーハンドル仕様
数値的なハンドル幅、絞り角はほぼ純正同様。大きく違うのは
■グリップが手前に引けた。
■バーエンド位置が上がった。
の2点である。
特にバーエンド位置変更の影響は大きい。
これにより、ライディングフォームを取った場合の上体は非常に起きたものになった。
取り回し。
切れ角は変わっていないが、押し歩き、Uターンは楽になった気がする。
わくわくとテスト走行。
第一印象、「わ~、楽ち~ん」
高く、手前&垂れが小さい事により、ハンドルがこれまでより格段に近く感じる。(実際近いのだが)
極端な言い方をすると、「シートに座って手を伸ばした先にハンドルがある」という状態だ。
直線での風当りは増えた。
マジカルレーシングのスクリーンにより純正より大幅に防風効果は上がっているのだが、それを上回るほど上体が起きているのだろう。
これまでヘルメットにしか当たらなかった風が肩にも感じられる。丁度純正ハンドル&純正スクリーンの組み合わせと同じような感覚である。
ハンドルは近くなったが、俺の体格だと伏せても特別窮屈な感じはしない。これなら「いざという時」にも問題はなさそうだ。
街中をふらふらと走り回る。
ちょいペースを上げて走ると違和感もある。
頭からスクリーンまでの距離が増え、ハンドルまでの距離が減ったせいだろうか?
「フォークが寝た」もしくは「長くなった」ような感じがする。まぁこれはおいおい慣れるだろう。
今ひとつだったのは左スイッチボックスの向き。
先に書いたとおり、ハンドルに開けられた穴に合わせてセットしたのだが、俺にはどうにも下向き過ぎる。
街中でウィンカーの出し難い事といったら…左だけでも、ボックスのポッチを削って調整できるようにしてしまおうか?
峠へは持ち込めなかったので、「走り」の感想は次回以降。
「前荷重が減った為、コーナーでの旋回性が鈍重に…」とかなんとか書くと格好良いのだろうが、俺の腕ではその辺りは多分関係なし。
逆に上体が起きたことにより、ブレーキング時に体が前へズレる事が少なくなり、ハンドルを手で押してしまう心配が減るはずだ。
また全てのシチュエーションを試していないのでアレだが、今のところ「交換して正解」と言える。
「速さ第一、コーナーリング命」と考えるなら別だが、町乗り、ツーリングならこちらの方が圧倒的に「楽」である。
前傾姿勢が減れば、これからの冬場、モコモコジャケットでも楽に乗れるだろうし、首筋から進入する風も減るはず。
ロングツーリングに出かける機会も増えるに違いない…と勝手に想像してみる。
作業期間だが、結局なんやかんやで1週間かかってしまった。
手順がわかっていて必要なものがあらかじめ揃えてあれば、3~4時間でできるだろうか?
もちろん「ああっ!ボルトがフレームの隙間に落ちたぁ!仕方ない、タンク浮かすか…」とか「ここのワッシャーどこいったかなぁ?カウル外さないとわからないか?…」がなければの話である。
フロントスタンド、特大ソケット、特殊ボルト用工具の必要性を考えると、ユーザーが日常メンテの延長として行うにはちょいと面倒な作業であることは間違いない。
無論、(俺にもできたのだから)無理ではないし、これを期にあちこちを整備して…という前向きの考えもあるのだけれど。
いろいろ書いたが、ポジションはまだまだ「仮」の状態。
ハンドルはもう少し遠くても良い気がするし、もう少し垂れていても良い気もする。
しかし、これまでと違い簡単に微調整が効くので気楽である。
ホース、ケーブル類の配置も再考が必要だ。
これからいろいろと試していこうと思っている。
とりあえずは満足ですな
<正しいと思われる交換手順>
■リア&フロントスタンドアップ。(フロントを上げていないと作業は困難)
■アッパーカウル、メーターパネルの取り外し。
■スイッチ、ケーブル、レバー等の取り外し。
■トップブリッジのボルト(4本)の取り外し。
■トップブリッジ・アッパーブラケット(ハンドルバーが取り付けられている側)の取り外し。
■フォーククランプを緩め、センターナットの取り外し(30mm(?)ソケット必要)
■トップブリッジ・ロワーブラケット(フォークにクランプしてある側)の取り外し。(キーシリンダー付き)
■ロワーブラケットを裏返してフォークへ仮セット。キーシリンダー取り付けボルトを外し、キーシリンダを単体へ。(特殊ボルト用工具必要)
以後の組み立ては取扱説明書のとおり。
<今回新規購入したもの>
■アントライオン製バーハンドルキット・ミルタイプ(隼専用、専用ハンドルバー付き)
■GOODRICH製ブレーキホース(ステンレス:710mm長)
■POSHバーエンド(内径~19mm用)
■走ると感じも変わります
某日、わずかな時間を作って隼を峠へ持ち込んでみる。
全開で…というわけにはいかないが、そこそこのペースで走る。ううむ、やっぱり峠だと感触が変わるなぁ…
まずはこれ
>ハンドルは近くなったが、俺の体格だと伏せても特別窮屈な感じはしない。これなら「いざという時」にも問題はなさそうだ。
前言撤回(笑)、結構窮屈である。
「肘」と「膝」の間隔が狭くなり、上半身の自由度が減っている。
しかもハンドルが上がった分、バイクとの一体感は緩慢になる。
結果、肩からコーナーへ突っ込んで行くようなフォームがとりにくい。
上半身にあわせて腰を引くと、今度はステップが妙に前に感じてしまう。
「バックステップがあればなぁ…」って、バーハン入れてバックステップが欲しくなるとは思わなかった(笑)
途中でハンドルポジションチェンジ。
ハンドルポスト(クランプ)位置を一番前(先ほどより10mm前)にセットする。
走り出してすぐ気づく。「おお、良いかも」
先ほどと比べ圧倒的に走りやすい。
バーエンド位置が上がっている為、今までのような「外腕でタンクを抱え込む」ポジションは取れないが、それに近い雰囲気で走ることができる。
ステップとの位置関係も許容範囲。ただペダル位置は要調整である。
気を良くして、今度はバーエンドを少し下げてみる。
ああ、これもいいな。
手を出す角度とバーの角度が近くなり、肘の張り出しも減ったようだ。
#「肘は外へ張り出し、ハンドルを丸く握る」というのが最近の流行りのようなのだが…染み付いた癖はなかなか抜けないんだよねぇ…
ともあれ、なんとか満足できるポジションが発見できた。
峠への行き帰りの街中も実に楽ちんでこれまた満足である。
ちなみに余談になるのだが…フロントが上がりやすくなったように思う。
これまでは(例外はあるが)「上げよう」と思わなければ上がらなかったフロントホイールが、1速でフル加速するとふわりと持ち上がる。
ハンドルが近くなった事で、いわゆる「後ろ乗り」になっているのだろう。
クラッチミートで上げるならともかく、スロットルワークで上がった時というのはそこそこの速度が出てしまっている。
落ちた時のショックもそうだが、なにより俺の腕ではコントロールできるかどうかが心配だ。
「加速は2速に入れてから」がやはり安心できそうである。