■基本は清掃です
うちの型の隼のクラッチレリーズには弱点がある。
スプロケットカバーにセットされたクラッチレリーズ。
ドライブスプロケのすぐ近くにあり、かつシールが甘い為、レリーズピストンがチェーンオイルでどろどろになり動作不良を起こす事があるそうなのだ。
そういえば、買ってから一度もチェックしていない隼のクラッチレリーズ。
V-Max同様、一度チェック&清掃してやることにしよう。
■何を今更クラッチレリーズ
油圧クラッチレバーを握った時の圧力は、クラッチマスタシリンダ→クラッチホース→クラッチレリーズ→クラッチのプッシュロッド(以下略)と伝わり、クラッチが切れる。 つまり、クラッチレリーズは、油圧ブレーキのブレーキキャリパと同様の機構になっているのだ。 クラッチレバーの重さや半クラッチの範囲は(他にも要因はあるが)基本的にクラッチマスタとクラッチレリーズの大きさの比で決定される。
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まずは取り外しの作業。
シフトリンクにマーキングしてから取り外し、スピードセンサーを取り外す。
「ふぅん、スピードセンサーってホントにセンサーだけなんだねぇ…」
見た目はただのプラスチックです
サイドスタンドスイッチのコードも邪魔になるので外す。
これは上の方のコネクタからだ。
セロー同様、スプロケットカバーは単なる「カバー」なのでオイルも何も回ってはいない。
ボルト4本をさくさく外せばOK。例によって締め付けトルクはさほどではない。
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よっこいせと外したスプロケカバーの裏側(クラッチレリーズ込み)を覗いてみる。
「うわっ、こりゃ凄いわ」
裏側は噂どおりの汚さだった。
錆こそ無いものの、飛び散ったチェーングリスにホコリや泥が堆積して凄い状態になっている。
あとできちんと掃除してやるとして、とりあえず大きな汚れだけとっておこう。
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さて、次はスプロケカバーとクラッチレリーズの分離。
「ボルト2本だけだしさほどの手間は…」と思っていたのだったが、某説明書(後述)を読むと「クラッチフルードを抜いてクラッチホースとエア抜きバルブを外せ」とある。
「ん~、なんでだろ?クラッチレリーズは単体で動作する(密閉されている)からバラす必要はないと思うんだけど」
その理由は、取り付けボルト2本を外して判った。
なんと、クラッチレリーズは、スプロケットカバーの裏側(エンジン側)へしか外せず、ホースやエア抜きプラグが付いたままだとカバーから抜く事ができなかったのだ。
センスの無いイメージ図
むぅ、なんか変な仕様だな。
まぁ力のかかる方向を考えると安全策といえないことも無いのだけれど。
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やれやれとバンジョーボルトを外し、クラッチフルードを抜く。
エア抜きバルブも抜いて…あ、結構カスが溜まってるな。これも掃除してやろう。
空っぽになったレリーズを裏へと抜いて分離は完了だ。
分離完了。はいいんだけど・・・
裏側は凄いことに・・・
(これでも大きな汚れを落とした後)
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クラッチレリーズの後ろ(ピストン)側に付いた油と泥を落とす。
きれいに拭いて磨いた後、手のひらで気長にコンコン叩いたら、中からピストンが出てきてくれた。
#汚れに引っかかると出てこない。
綺麗にしたら外れてくれました
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場所を作業デスクに移し、レリーズの内部をこれまた清掃。
毎回思うのだが、クラッチフルード内に出てくるこの黒い汚れは、いったいどこからくるんだろう?
綺麗になりました
レリーズの内側。錆はないが少しだけ段差が感じられる。
ピストンが擦れたのかな?ちょっとだけ紙やすりを当ててやろう。
ピストンのオイルシールにシリコングリスをほんの少しだけ塗って組み立て。
よし、スムーズに動くぞ。
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それでは綺麗になったレリーズを元通り取り付け・・・ないのがお約束。
ごそごそとPOSHのアルミスプロケットカバーを取り出してくる。
「いや、今回の整備は決してこれへの交換が目的というわけではなくですねぇ…」(←説得力なし)
POSH スプロケットカバー with クラッチピストンベース
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付属してくるPOSHのマニュアルは、カラー写真付きで初心者にもわかりやすい。
なにしろ純正クラッチホースを外すために、インナーカウルの外し方から書いてあるのだ。
でも…それだったらノーマルの隼で説明すべきなんじゃないかなぁ…
#POSH仕様の隼で画像を撮っている。
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さて、それでは組み立てよう。
クラッチレリーズは、純正とは異なりスプロケットカバーの「外側」にセットする。
※もちろん相対的な位置は純正と同じ(だよな?)
また、取り付けボルトは「内側」から締め込む。
ちょいと変な仕様だが、純正のボルト穴を利用するから仕方ないかも。
#これにより、ボルト穴の縁の未塗装部分が表になってしまった。これは後で黒く塗ってやろう…
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取り付けをしていて心配になったのは、上記のように単純にボルト2本で止められている点。
純正は固定こそ同じボルト2本だが、クラッチの応力は(内側から差し込まれている)レリーズの外周(とスプロケットカバー)で受けていたはずだ。
これが今度はボルト2本だけの担当になる。
当然この辺りの事情も考えられてはいるはずだが、しばらくは緩みが無いかどうかマメにチェックしてやるとしよう。
<余談>
純正でも、レリーズの固着(動作不良)の際、応力に耐え切れず「渋いクラッチを強引に握ったらスプロケットカバーが割れた」という事例があったという。 それだけ力がかかる可能性のある場所なんだねぇ・・・
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カラー、ボルト等の取り付け作業自体はまったく問題なし。
締め付けトルクに注意しながら本締めし、スピードセンサーとサイドスタンドスイッチのコネクタを取り付け、バンジョーボルトを繋いでクラッチフルードの投入&エア抜きをすれば作業は完了だ。「ふ~っ」
装着完了
あ、シフトリンク付けないと・・・
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さて、新しいカバーの見栄えは・・・思ったほどは変らなかったかな?
ま、メインは「清掃」だし、格好は自己満足できればそれでいいんだけどね(笑)
<余談2>
汚れが相応についていた点、多少とはいえレリーズ内に段差があった点を考慮すると、今後レリーズ自体の交換も考慮しないといけないだろう。 何しろ、'04以降のレリーズには、きちんとダストカバーが付いているらしいからねぇ… …と書いて気づいたんだけど、POSHのスプロケカバーに換えると、結果的にレリーズのピストンをカバーするような位置関係になってるかも? #後で確認してみよう…
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