■ いろいろ関連しているようで
さて、ちょい前から書いていたとおり、MAXのギアの「入り」の調子が今ひとつである。
エンジンが冷えているときはそこそこ良いのだが、熱くなってくると機嫌が悪い。
最初はゴールデンウィークに交換したクラッチ板が馴染んでいないせいだと思っていたのだが、3000km近い北海道ツーリングをこなした後も同じ(というか若干悪化)というのはどうにもおかしい。
エンジンオイルは新品のエフェロプレミアムだし、量も問題なし。
何か他に原因があるに違いない、時間のあるうちに観てやらねば。
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まずは原因を究明すべく、いろいろと試してみる。
北海道では、特に2,3速へのシフトダウンが調子悪かった。
現在も状況はほぼ同じ。
「こりゃぁドッグ(シフトを変える為の爪)でも曲げたのかなぁ?」と、試しに(教習所式に)4本指で握りこんでみたら、スコっとチェンジできた。
う~む、ギアじゃなくてクラッチだなこりゃ。
それではとセンタースタンドを立て、エンジンをかけ、クラッチを握り、ギアを一速に入れてみる。
クラッチは握ったままだが、動き出すリアタイヤ。まぁこれは普通とも言える。
※湿式クラッチはオイルの粘度で僅かに動力が伝わるのだ。
ところが、その状態から右足をこすり付けてタイヤの回転を止めようとすると結構な力が要る。(←注意危険)
以前は、軽く足を添えてやればぴたりと止まったのだけれど。
やはりクラッチが完全に「切れて」いないようだ。
状況をまとめると、「エンジンが熱くなるとクラッチが切れ難い(握りこまないと切れない)」という事になる。
温度で切れに影響が出るといえば、まず思いつくのはフルードへのエア混入である。
空気が入っていると、熱によりエアが膨張する。
そしてこの状態では、レバーを握ってもエアが圧縮されるだけで圧が伝わらない。
ブレーキで言うフェードと同じ現象だ。
それではとクラッチフルードを交換し、入念にエアを抜く。それはもう入念に抜く。
しかし状況はかわらない。
う~む、他に影響するところあるのかなぁ?
思いついて、GWにクラッチの修理をお願いしたショップへTELし、相談してみる。
聞くと、やはりフルードがらみが怪しいという。
クラッチマスターは既に交換してあることと伝えると、「んじゃレリーズ側かも?」との事。
クラッチレリーズ(エンジン側)か。そういえばここはバラしたことなかったな・・・
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■ 最初はクラッチレリーズです
某日夜、作業開始。
まずはサービスマニュアルをざっくりと読む。
うむ、構造はブレーキピストンと同じと考えて良さそうだ。
最初はケースカバーの取り外し。
ボルトのトルクはさほどではなく、すぐ緩めることができたが…とっとっと、オイルが流れ出てくるじゃないか、ここ、オイル回ってたっけ?
そりゃまぁガスケットも入ってますし
100cc程でオイルの流れは止まる。この分は後で足してやらねば。
#オイルをペール缶で確保しておくと、こういうときにも慌てず済むのがありがたい。
カバーを外そうとして、下部がシフトロッドを貫通していることに気づく。
くそぉ、やっぱりステップ一式外さなきゃダメか。バックステップだからこのままイケると思ってたんだけどな。
#取り付け位置のマーキングもお忘れなく。
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さて、奥のほうにやっと姿が見えたクラッチレリーズ。
サービスマニュアルによれば、これを取り外すには、まずオイルライン(バンジョーボルト)を外せとある。
当然だが、そうすると後でフルードの再充填が必要となる。
しかし、クラッチフルードはこの前新品に交換し、エア抜きしたばかり。
なんとか誤魔化せないかな~と思っていたのだが、よくよく見るとバンジョーボルトがレリーズの取り付けボルトの上に被っている。
こりゃぁ駄目だ。仕方が無い、マニュアルに従うとするか…
#なんでこんな設計にしたんだろうねぇ…
バンジョーボルトを外し、垂れてくるフルードを洗面器で受ける。
付近のホース、ケーブル類を引っ張り出してスペースを空ける…っと、この辺りのケーブルも汚れてるなぁ、ゴムじゃないからCRC-556で洗っても大丈夫だよな?
後は2本のボルトを外すだけ。
尤も本体がかなり奥まった場所にあるので、Tレンチの先にヘキサバーを付けないと緩めるのは難しい。
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さて、取り出したレリーズはというと・・・
うむ、確かに汚れてるし、少し錆も出てるけど、そんなに酷い状況じゃないぞ。
15年物にしてはまともじゃないでしょうか?
バラしてみると、オイルシールやダストシールのゴム部はまだまだしっかりしている。これなら交換の必要はなさそうだ。
金属部をCRCで磨き、ゴムは汚れを拭いてシリコングリス。
レリーズの受け側、クラッチのプッシュロッドも引き出してグリスアップしてやろう。
綺麗にしたレリーズを仮組みして様子を見ると、ピストンがスコスコと軽やかに動く。よしよし、いい感じになったな。
後は逆の手順で組んでいくだけ。
レリーズを取り付け、ケースカバーのガスケットは見なかったことにして再利用。
手ルクレンチで均等に締め付けたら、ステップを取り付ける。
シフトバーの位置を前と同じになるように…
空になったクラッチフルードは、ちょいと考えて下から入れて見ることにする。
ホースをつけた注射器に満タンに入れたフルードを、レリーズ側のバルブからゆっくりと流し込んでやる。
やがてマスタ側のリザーブタンクまで上がっていくフルード。よし、あとは普通どおりにエア抜きしてやろう。
これまたいつもより入念にエア抜きして本日の作業は終了となる。
さて、これで状況が改善されれば良いのだが。
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某日、テストの為にエンジンを始動する。
センタースタンドを立て、暖気。
試しにギアを1速に入れたが、リアタイヤは回らない。
これは・・・多少は「切れ」が良くなったのかな?
レリーズの動きがスムーズになったのか、クラッチレバーが前より少しだけ軽く感じる。
それでは・・・と走行開始。最初は「お、直ったか?」と思っていたのだが。
15分程走った辺りで、またまたギアの入りが悪くなる。
ありゃりゃとMAXを停め、センタースタンドを立て、朝同様のチェック。
ギアを入れると回りだすリアタイヤ。右足で止めようとするとかなりの力が・・・う~む、同じ状況だなこりゃ。
どうやら原因はべつの場所らしい、やれやれ。
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■ 次はクラッチホースを
多少クラッチが軽くなったという利点はあったものの、根本的な解決にはならなかったレリーズ分解清掃。
そうすると原因は何だろう?
熱が加わると症状が悪化するのだから、やはり原因はフルードがらみの気がする。
エアはそれはもう入念に抜いたし、あとは…もしかしてクラッチホースか?
これまた純正、15年もののクラッチホース。
もしかするとゴム(ではないのだろうが)ホースが劣化して膨らみ、圧が逃げているのかもしれない。
であれば、熱が加わった時に悪化するというのもわからない話ではない。
「でも新しいホースなんて簡単には買えないしなぁ…」と考えている時に限って、ステンメッシュホースが安売りしているところへ出くわしたりするから人生なんてわからないものだ。
#はいそこの人、「安売りしているとこ探したんだろ?」とか言わないように。
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今回購入したのは、
・ステンメッシュホース(1350mm)
・マスタ側バンジョー(バンジョーボルトは前回のマスタシリンダ交換時に購入済み)
・レリーズ側コネクタ(レリーズへの取り付け部は純正を使用する。)
…の3品。
安売り品なので、フィッティングは赤青のアルマイト仕上げ。
本当はあんまり好きじゃないんだけど…まぁ今回は仕方が無いでしょう。
さて、実際の交換作業となると、実は一番面倒なのは純正ホースの取り外しである。
金属パイプ部が長いので、サブフレームを付けたうちのMAXの場合、左側ダミーインテーク回りをごっそりと外す必要があるのだ。
電装パネル外してステアリングダンパーの基部を外して…せっかくだからこの辺りの電装コネクタ外して磨いて接点復活剤をかけておくか…
あ~、面倒臭いぃ~ でもコネクタは磨かねば・・・
外した純正ホースの構成は、金属パイプ部が6割、ホース4割といったところ。
金属部は膨らみようが無いし、ホースもあまり劣化しているようには思えない。
こりゃやっぱり原因じゃないかな?
ともあれ、作業を継続。
ステンメッシュホースを引っ張り込み、取り回しをあれこれ試してタイラップで固定。
バンジョー、バンジョーボルト等をきっちりと取り付ける。
そしてフルード補充、エア抜きにはもう慣れた(笑)
さぁて、今度はどんな感じだぁ?
付きました フロント周りはこんな取り回しで
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テスト走行開始。
エンジンが冷えている時の状態は変わらず。
それではと、その辺りを走り回ってエンジンを温めてから再テスト、のはずが…ええい、なんで今日に限って気温が低いんだよっ!
気温は25~6度。
30度を超えていた前のテストとは状況が異なってしまう。
それでもファンが回るくらいまで温度を上げて様子を見る。
う~む、前みたいにひどい状況ではなくなってるけれど…
センスタを立ててのクラッチチェックでは、冷えているときとそう変わらない感じである。
走っている時も大きな違和感は感じないが、それでもシフトダウン時に引っかかりが感じられることもある。
「くそぉ、もう少し、って感じなんだけどなぁ…」
温度による変化は少なくなっているから、多少なりともホースが影響していたのは間違いない。
しかし、どうやらそれだけでもなさそうだ。
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今回気になったのは、クラッチの「近さ」である。
先に書いたとおり、クラッチレバーを目いっぱい握ってやればクラッチは切れる。
しかしほんの少し離しただけで半クラッチ状態。
3本指シフトの俺にはもう少し遠い方がいいし、事実、これまではもっと遠かったのだ。
※デイトナのクラッチマスタの調整レバー位置は、当然「1」(一番遠く)にしてある。
これが調整したくてマスターを買ったようなものなのだが・・・
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(温度変化ではなく)単にクラッチが近くなる場合、一番有名なのはマスタシリンダのプッシュピンとタイコの磨耗である。
頻繁に動作する上、材質が真鍮なので変磨耗しやすいのだ。
しかし、うちのMAXの場合、マスタシリンダを交換したのはたった3年半前である。
走行距離にすれば20000kmも走ってはいない。磨耗しているはずなどないのだが……「ええい、交換だ交換!」
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半分ヤケになりながら交換を決意。
そうだ、どうせ交換するなら、流行りの「クラッチベアリングシステム」を入れてやろう。
タイコの部分にベアリングが入ったものがクラッチベアリングシステムである。
微妙な動きをするクラッチレバーの根元部分。ベアリングを入れる事で軽くスムーズな動作に……と言われているようだが、まぁ気休め気休めっと。
購入しようとして困ったのが、今使っているデイトナのクラッチマスタ用のものがあるかどうかである。
VMG大原のHPには対応品が載っているのでここから買ってもいいのだが……ショップに現物持って行って付き合わせるのが一番確実だよな。
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某日、外したタイコとピンを持ってショップへ。
RCエンジニアリングのクラッチベアリングシステムは4種類あるのだが、タイコの大きさ(直径)はみな同じ。後はピンのサイズとラバーブーツの取り付け位置の違いのようだ。
実物と比較して選んだのは、XJR1200,1300対応の「30-10-28Z」という型番のもの。
価格は1700円、う~ん、高いのか安いのかよくわからない価格設定だな…
自宅へと戻り、交換作業。
まずはもう一度サイズ測定。
もし、旧タイコ&ピンが磨耗しているのであれば、若干短くなっているはず。
逆に言うと、新しいものが今より少し長ければ、レバー位置が遠くなるはずなのだ。
新の全長:43.0mm
旧の全長:43.0mm
はっはっは、見事に同じだぁ(泣)
上がベアリング入り 全長はこの↑長さを言ってます
泣きながら(嘘)取付け作業。
シリコングリスを忘れずにっと。
「これじゃぁ変わらないよなぁ・・・」と考えながらテスト走行に入る。
クラッチの近さは相変わらず。しかし、切れというか軽さはまた少し良くなっている気がする。
温度による変化は、また一段と下がった気温により再現不能である。
・・・というわけで、いろいろ交換した「とりあえず」の結果は、
■クラッチフルード交換・エア抜き
・関係なし
■クラッチレリーズ分解清掃
・クラッチが軽くなった
■クラッチホース交換
・高温時の切れ悪化が軽減か?但し完全に直ったかどうかは疑問
■クラッチベアリングシステム
・クラッチが軽くなった気がする。
・・・といったところである。
クラッチ板を交換した(厚くなった?)事で露呈したクラッチ周りのトラブルだが、明確な原因は未だわかってはいない。
これから寒くなる季節なので、「熱くなった時…」の現象は出にくいと思うが、機会がある毎にチェックしていく予定。
クラッチの「近さ」についても同様だが、こちらは場合によれば、前回交換したグリップラバーを更に薄い(細い)ものに交換してやろうかとも思っている。
※「もったいないおばけ」が出ないといいな…
<続く>
(多分・・・)