その0
2004/8/7
お昼過ぎまで青く晴れ上がっていた空がにわかに掻き曇り、突然の落雷と共に見事な豪雨となってから早2時間。
ううむと空を眺めても、雨は一向に上がる気配を見せてくれない。
夏の北関東名物の夕立であればそろそろ雲が流れていく頃合なのだが。
今日は"初"北海道ツーリングへの出発の日。
バイクでツーリングといえば即「北海道」と答えが返ってくるほどメジャーな場所だが、俺にとっては未知の場所である。
友人連中から、「あそこはいいぞぉ…」「帰ってきたくなくなるぞぉ…」と言われるたびに悶々としてきた場所でもある。
「くそぉ、今年こそ…」と無理矢理もぎ取ったお盆の9連休。奇跡的にスケジュールにぴったりのフェリーチケットも取れてしまった。
「うむ、これは北海道が俺を呼んでいるのに違いない…」と小躍りしていたというのにこの天候か…
現在の時刻は15:00。
新潟から苫小牧東行きのフェリーの出航時刻は深夜23:30である。
出航の1時間前に到着すれば良いとして、移動は高速道路オンリーで250km程度。
栃木県の自宅からだと、あれやこれやを考慮しても18時に出れば充分に間に合うのだが、「せっかく新潟まで行くのだから、早めに着いて観光&旨い夕飯を…」とかなんとか都合の良い事も考えていたのだ。
「仕方ない、飯はあきらめるとしてもう少し待ってみるか…」
更に待つ事2時間、17:00
状況変わらず。
ううむ、もう我慢できない、出発する、するったらする!
忘れ物が無いか指差し確認。V-Maxのリアシートに積んだ荷物にはカバーをかけ、自分はもちろんレインスーツを着用。
少し小降りになってきたようだし、ブーツカバーはヤメておくか。
控えめの暖気の後、ガレージを出発。しとしと雨に変わった国道から東北道へと乗り込んでいく。
東北道を北上するのは久しぶりだ。晴れていれば景色を楽しめる那須からあだたら高原にかけての辺りも今は雨に煙っている。
雨ということで、高速道路をメーター読み55~65で巡航する。
周囲はお盆休みで帰省(?)するご家族ご一同様の四輪車のみで、バイクの姿はない。ま、この雨じゃあたりまえか。
郡山JC(ジャンクション)から磐越道へと乗り換え、会津磐梯山が見えてきたあたりでやっと雨があがってくれた。
PA(パーキングエリア)へバイクを停め、やれやれと雨具を脱ぐ。
「コレ、もう使わずに済めばいいんだがなぁ…」(←考えが甘すぎですな)
磐越道の終点、新潟中央ICで高速道路を降り、GS(ガソリンスタンド)のお兄さんに道を聞き、フェリー埠頭へと向かう。
さすがにここまでくるとバイクの姿が目立ち始める。
皆俺同様大荷物姿、おお、同士達よ(笑)
埠頭への到着は丁度21:00。駐車場は案の定バイクでいっぱいであった。
端にV魔を停め、ほぅとヘルメットを脱ぐ。
停まっているバイクの車種は様々である。
オン、オフ、ツアラーにレプリカにアメリカン、大排気量に原付。
ツーリングに便利なバイクというのは確かに存在するが、ツーリングに行けないバイクなんてのは無いんだよなと思う。
乗船手続きに入ったターミナルは、駐車場に輪をかけて大混雑だった。
ライダーに加えてご家族連れに学生の団体が多数。旅行なのか研修なのかわからないが、こりゃぁ引率する先生(?)は大変ですな。
10分並んで受付を済ませたら、とりあえず近場のコンビニで買出し。
船内用にと買った1Lのペットボトルのお茶を、何故かその場でガブ飲みしてしまう俺。気づかなかったが体は相当に水分を欲していたようだ。
バイクの群れは定刻どおりフェリーに積み込まれた。
積み込まれました。
同じく定刻、出航。
2等船室で「お泊りセット」と地図を広げ、隣の席のライダーと走るルートを検討しあう。
まぁ明日の夕方まではフェリーの中、考える時間はたっぷりとあるのだけれど。
朝8:00起床
昨夜は意外に快適な夜だった。
船室が2等という事で狭いのは仕方ないが、鼾親父、酔っ払い青年、騒ぐ子供等が居ない比較的大人の部屋に入ったのが勝因といえるだろう。
船内をうろつきまわる。
今日は満席との事だが、船内はさほど息苦しさを感じさせない。
以前乗った四国・九州方面への便は、満席だとロビーにまで人が溢れ、日中はデッキに出るしかなかったのだが、この船ではそういった心配はなさそうだ。
内装も新しいし、なかなかやるな>新日本海フェリー
感心したので、昼食はフェリー内のレストランを使ってみる。
バイキングではなく、一品料理を取っていく方式。ビール&カラアゲ&おでんで1500円は価格的にはまぁまぁといったところだろうか?カラアゲが美味で満足。
気になる天気は、携帯電話で予報を随時チェックする。(便利な時代だよな…)
今日到着する苫小牧付近は大丈夫だが、明日以降は北海道の西側に雨の可能性もあるらしい。ううむ、ルートをもう一度考え……ても仕方ないか。慌てず昼寝でもしておこう。
定刻17:30、苫小牧東港到着
さぁ、いよいよ初の北海道上陸である。
車両デッキへと降り、荷物を積みなおし、四輪車が出て行くのをわくわくしながら眺める。
エンジンを始動して列に並び、港へのランプ(斜路)を降りる。
こんにちわ、北海道。
夕方の空は薄曇り。予報どおり雨の心配はなさそうである。
祝!上陸! お約束ショット
埠頭で記念撮影の後、走り出す。
初めは同時に上陸したバイク達に混じって走る。
道路は直線が長い、そして路肩がたっぷりと取られている。
これは海沿いだからなのか、それとも北海道の道路は皆こんな感じなのだろうか?(後に思い知らされるんだな、これが)
国道235から県道74へ。
ここで集団と離れ、バイクは俺一人となる。
道はガラガラに空いている。追い越し禁止区域ではないが、勝手がわからないので地元ナンバーの四輪に付いて走る。
西の空がオレンジ色から赤紫へと変わっていく。
「ああ、綺麗だねぇ…」とかなんとか鷹揚に構えていたら…なんでメーター読み65も出てるんだよっ!
軽自動車に付いて走っているのにこの速度である。
ううむ、いいのだろうか?こんなペースで走っていて…
国道237へと合流すると、ペースは更に上がっていった。
常時55~75。地元の四輪がいなくなり、俺一人になってもついつい同じペースを保ってしまう。
V魔は絶好調である。エンジンは無論だが、換えてきたタイヤの具合が実に良い。まるでサスペンションを換えたかのようななめらかさである。
曲率の大きなコーナーにこのペースで突っ込んでいってもまったく怖さを感じない。何か理由がありそうな…
<余談>
どうやら新品タイヤだけでなく、空気圧の関係もあったらしい。
本土で合わせた空気圧が、北海道の気温だと少々低めになったようだ。
新しいタイヤに低めの空気圧だとこんなに安心して走れるとは…目から鱗ですな。
いろいろ考えながら切り返すコーナーの途中で、北海道初のピースサインが出る。
薄暗いコーナー途中で交わすピースサインってなかなかあるもんじゃないよなぁ。
うひょうひょ言いながら、日高までの約100kmをあっという間に走りきってしまう。
まぁ信号の無い広い国道でこのペースではあたりまえといえばあたりまえだろう。
特に予約があるわけではないのでもっと先まで行ってもよかったのだが、航続距離の短いV魔で(ガソリンスタンドの開いていない)夜走るのはリスクが大きすぎる。今夜はこの辺りに泊まるとしよう。
道内5日間の今回の北海道ツーリング、目指すは全泊キャンプである。
ツーリングマップルであらかじめ目星をつけておいた「国立日高少年自然の家からまつ」にいって様子を見る。
う~む、キャンプ場というよりは研修施設だなこりゃ。
野営場の隣で青年たちが(洒落でも比喩でもなく)マイムマイムを踊っているのを見て早々に引き上げる。
隣の沙流川キャンプ場は普通のキャンプ場だった(笑)
ざっくりとテントを立て(面倒なのでペグなし)身軽になって、北海道名物のコンビニ、セイコーマートへと向かう。
「北海道最初の夜はやっぱりセイコーマートの惣菜でしょう!」と、ビール、カラアゲ、焼き蕎麦等を購入。記念にと会員カードまで作ってしまう。いったいどこで使うつもりなんだ?俺。
テントサイトまで戻り、ゆっくりとビールをやっつける。
さぁ、明日からが本番だぞ…