その4
7:00am前、他の客とかち合わぬよう(笑)とっとと出発する。
まぁどうやら、俺同様一人の宿泊客の方が多いようではあるのだが。
昨日までとは異なり、空はどんよりと曇っている。
朝なので靄っているのか雨雲なのかははっきりとしないが、いずれにせよ今日は晴天というわけにはいかなさそうだ。
例によって、市内のコンビニで朝飯のおにぎりを齧りながら今日のルートをチェックする。
まずは目の前の桜島、これは当然外せない。
「リベンジ」と称してやってきた今回のツーリング。
「阿蘇」はもちろんだが、前回来られなかったこの「桜島」そして「佐多岬」へも復讐しないわけにはいかないのだ(笑)
とりあえず桜島へは渡らず、このまま南下して指宿へ行って帰って来るルートも考えたのだが、時間的にも一つ余裕がない。
指宿近辺は次回のお楽しみにとっておくとしよう。
朝の仕入れの帰りなのだろうか、いかにも八百屋、見るからに魚屋、といった感じの人々に混じり、フェリーへ乗船となる。
鹿児島から桜島まではフェリーでわずか15分。
正面、雲が広がる空の下にどんとそびえる桜島。おお、九州だねぇ。
いよいよ桜島
県道26をちょいと走り、湯の平展望台を目指して峠を駆け上がる。
早朝の為か観光客は皆無、道路は貸切状態だ。
展望台・・・というには山頂がちょっと遠くないか? おお、溶岩じゃ溶岩じゃ
ふむふむと見て回る。
溶岩はちょいと拍子抜け、群馬県の浅間山あたりの方が迫力があるように思える程だ。(後に勘違いだったことに気づくのだが・・・)
国道224へと降り、東へ向かう。
桜島の東(南?)岸はなにやら大規模な工事の真っ最中だった。
最初は川の改修工事かと思ったのだが、それにしては派手過ぎる。もしかして土石流とかの通り道用なのだろうか?
単なる川じゃないですよね?
島の東端から北側の県道26号へと回りこむ。せっかく桜島までやってきたんだから一周するんだもんね~
県道へ入ってすぐ驚く。こちら側の溶岩が凄いのだ。
真っ黒な溶岩の広がる原野。その間から草木は生えているのだが、かえってその分だけ溶岩のおどろおどろしさが強調される。
ううむ、先ほど行った展望台近辺より、こちらのほうがはるかに迫力があるな。
溶岩の間をうねって走る県道は、上ったり下ったり曲がったり。
右手に海、左手に溶岩。いや不思議な雰囲気だなぁ・・・
時折現れる集落には犬の散歩をさせる老人の姿。
この辺りでの生活は大変だよな・・・などと考えるのは、ちょいと立ち寄っただけの人間の安易な発想なのだろう。
うむうむと考えながら、有名な「溶岩に埋もれた鳥居」を見学し、だーっと走ってUターン。
難しいことを考えるのは苦手なので、噴火の時に逃げ込む「退避壕」に意味も無くMAXを退避させてみたりもする。
ここまで溶岩が来たという事で 退避されてみました・・・
さぁて、これで念願だった桜島見物も済んだし、鹿児島湾沿いに南下するとしますか。
次の目的地は佐多岬。九州(本土)最南端の岬である。
本当は、丸一日桜島で遊んで翌日ゆっくりと佐多岬へ…というのが当初のスケジュールだったのだが、先に書いたとおり、今日の午後から天気が怪しい。
佐多岬は友人から「あそこは雨降ってる時にだけは行っちゃぁなンねぇ…」といい聞かされていた場所である。ちょいとがんばって今日の昼過ぎに制覇するとしよう。
海沿いの国道220を南下する。
この辺りもシュロの木が並ぶ南国ムード。九州の海沿いってのも気持ちの良い道が多いねぇ。
いったいどのあたりを走っていた時だろう?地図に無い新しいバイパスを走っていて道をロストしてしまう。
地図を上下に回転させて確認するも(←意味なし)現在の場所がはっきりとしない。う~む、やっぱり地図と畳は新しくなけりゃダメだなぁ。
ま、これも一人旅の醍醐味よ…と適当にふらふら走っていたら、いつの間にか山の中に紛れ込んでしまった。
アップダウンの激しい山間の峠道。道は狭く、路肩には雑草が生い茂る。
海岸線を走っていたはずなのに、いったい私はどうしてこんな場所にいるのでしょう?
やっとみつけたランドマーク(←小学校)で現在地がわかる。
なんで20kmも内陸部に入っているんだか、途中で気づけよ、俺。
たっぷり1時間を無駄にして海岸線へと復帰。
えっほっほと走り、やっとの事で半島の先端、佐多町へ到着になる。
本土最南端の地、佐多岬。
その先端へ行く為には「佐多岬ロードパークウェイ」という有料道路を通る必要がある。
ところが、この道路を管理する企業が最近倒産(というか廃業?)してしまったのだ。
つまり、今後この道路が走れなくなる(=先端に行けなくなる)可能性がある。走れるうちになんとしても来ておかなければならなかった場所(?)なのだ。
#現在は処分保留状態(道路の閉鎖となるといろいろ手続きがあるらしい)なので走る事ができる。が、いつまで可能なのかは不明。
ちょいと物悲しい雰囲気も・・・
・・・とまぁそんな事はさておき、ゲートで通行券を買って中へと入る。
あちこちで「南国の植物に囲まれて走る快適ロード」と書かれているが、今は時期的にちょっと早いようだ。
それでも雰囲気は充分感じられる、夏来ると凄いんだろうな。
アップダウンは激しく路面もうねっているが、流して走るには問題なし。
10分ほどで終点の駐車場へと到着。四輪車が十台程、バイクは1台(ニンジャ)。
ここから先は徒歩となる。
幸いにして、今のところ雲は多いが雨の降ってくる様子はない。
丁度先端から帰ってきたところらしい先客のニンジャ氏に「ここからどれくらい歩くんですか?」と聞くと、「う~ん、20分位ですかねぇ?」との返事。
うわ、結構距離がありそうだな。
入場料100円を払って入り口のトンネルへ。
それを抜けると遊歩道。お~、ここから上りかぁ。
狭い遊歩道をえっほえっほと上る。
周囲の木々の緑が美しい、鳥の鳴き声も聞こえてくる。行程の半分ほど来ると道は尾根伝いになり、眼下には海が広がるすばらしい景色。う~ん、風が気持ちいい……が、「はぁはぁはぁ…」
せ、先端はまだか・・・ 景色は良いんだけど楽しむ余裕なし
日頃の運動不足で怠けきった下半身を叱咤しながら足を前へと進めていく。
背負った革ジャン(暑くて着ていられない)が肩に食い込むようになった頃、やっと先端の見晴台へと到着する。
見晴台には当然のように展望台。
「毒を食らわば皿までも」(←使用法違)と展望台の頂上まで階段を登る。高さはビル4階分程、ひ、膝が笑うぅ・・・
笑う膝に加え、ぜいぜい言う肺と心臓をなだめながら見学する・・・ゲホゲホ・・・
曇天に水平線がにじむのが残念だが、まぁ景色云々というよりはここまで来たという事実の方が大切なわけで・・・ゲホゲホゲホ・・・
そしてまたビル4階分を降りる。階段の下りは膝への負担が・・・ゲホゲホゲホゲホ・・・
すいません、ちょっと息を整えさせてくださいな・・・
一休みの後、駐車場まで戻るのがまた一苦労。
ほうほうの体で辿り着いた駐車場で、缶ジュースで喉を潤す。
あ~、でもこれで今回の九州ツーリングの目的は完遂できたなぁ・・・
ゆっくりと出発。
有料道路を抜け、県道68から564。
時間の経過と共に、風が強くなり、雲が厚くなる。
県道74に入ったあたりで雨がぽつぽつと落ちてくる。くそぉ、とうとう降り出したか、まぁ目的は達成したし、ここから先は慌てず行くとしよう。
雨宿りを兼ねて、風車の回る丘の近くのレストランで遅めの昼飯をとる。
メニューはやはり鹿児島豚のとんかつ、美味。
大きな風車が回ってました
膨れた腹をかかえて、雨が降ったりやんだりの空を見上げながら考える。
雨だし、時間は早いがこのあたりにテントを張ってしまうという手もある。
だが、どうせ明日もまた雨(の予報)だ。今日ならまだ小降りだし、このまま一気に宮崎まで行ってしまうというのはどうだろう?
帰りの日向からのフェリーは明後日の夜。
今日中に宮崎へ着くとすれば、移動を考えても明日丸々1日予定が余ってしまう。しかし宮崎の街中であれば有意義な時間の使い方が山ほどあるだろう、雨の中をバイクでただ走る事に比べれば…だ。
よっしゃぁ行くかと出発する。
雨はぽつりぽつりといったところだが、路面は完全なウエットに変わる。
国道448に乗り換え、太平洋を目指す。
しぶきを上げて水溜りを掻き分け、ざばざばと水の流れる峠を下っていく。メッシュのグローブはずぶ濡れだが、気温が高いので寒い事はない。
#よくまぁあんな走りしてなんともなかったよな…(←後述)
太平洋側へと出たところで給油となる。
一時的だが、天気もやや持ち直す。
明るくなった空にやれやれとヘルメットを脱ぎ、GSのおねぇさんに軽口を叩きながら、何気にフロントタイヤに目をやる。すると・・・
ありゃ、溝がないぞ?
いつの間にかフロントタイヤが坊主になっているではないか。
画像のとおり、センター部はともかく、その両脇の溝が完全に消え去っている。
フルバンク付近には溝が残って見えるが、実際はささくれだっているので目立つだけ。
完全に「要交換」というか「注意危険」に属する減り方である。
今回のツーリング前にタイヤのチェックは済ませてある。
フロントタイヤは「少し減ってるけど帰ってきてから交換すればいいや」程度の減りだったはずである。となれば・・・原因はやはり一昨日のやまなみハイウエイか?
確かにちょいと気合を入れて走りはした。距離も往復で160km程、ううむ、しかしいきなりこんなに減ってしまうとは・・・
気づかなければ平気だが、気づいてしまうと気になるのが人情である。
ウェット路面でのスリップダウンが一番心配だが、これだけ減っていると「異物を踏んでバースト」などという言葉もちらほらと脳裏を過ぎる。こりゃぁ益々ゆっくり走るしかないなぁ。
雨は相変わらず降ったり止んだり。
急加減速厳禁・バンク不可・法定速度厳守
あ~神経使うぅ~(笑)
それでも夕方にはなんとか宮崎市内へと到着する。
市街地手前のバイパスは高架&シュロの木の街路樹。晴れた日中ならさぞかし綺麗なことだろう。
市内のファミリーレストランでまったりと飯を食いながら考える。
「とりあえず」とばかりに宮崎まで来てしまったものの、いったいどこへ泊まろうか?
ぶらり回って健康ランドを発見するも、仮眠・宿泊は不可との事。
くそぉと携帯サイトで探した街中のホテルに片っ端から電話する。
すると1件のホテルで、仮眠でもOKだし、カプセルホテルもご利用になれますよとの返事をもらう。
場所は市内のど真ん中、明日の観光にもばっちりの場所だし、今夜はここにお世話になるか。
到着したホテルでは、バイクでは大変でしょうと、なんと屋根付き駐車場を用意してくれた。ありがとうフロントのおねぇさん。
屋根下で荷を解き、ホテル内へ。
大浴場でゆったりと湯につかり、カプセルルームへ潜り込む。
再度確認した天気予報でも、明日の宮崎の降水確率は100%だった。
缶ビール2本が効いてきた頭で夢うつつになりながら思う。
そういえばこれだけ重い思いをして持ってきたキャンプ道具、結局1泊しか使わなかったな・・・