いや、何事も初体験ってのはいいものですね…
撮影:にょろ氏
<2006年11月>
■祝、購入
さて、セローを買ったはいいが、ともかくオフロード経験がまったく無い俺。
友人のオフ車を借りたり、ちょっとばかりの体験走行をしたことはあるが、それも「経験」というには程遠い。
なにがなにやら右も左もわからない状況なのだ。
さて、んじゃ何をどうしようか……と言うか、こういう時にはともかく実際に走ってみるのが一番なんだよな。
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実は近所に、ほんの2週間前に俺同様初めてのオフ車を購入した人がいる。
毎度お馴染みにょろさんである。
連絡してみると「んじゃ近所を軽く一回りしますか、へっへっへ」との返事が来た。
最後の「へっへっへ」が気になるが、んじゃまぁ連れて行ってもらいますか、林道へ!
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当日、困ったのが装備である。
とにかく俺は、オフロード用装備というものを何一つ持っていないのだ。
「さすがに上着が革ジャンってわけにはいかないしなぁ…」と考え、お古の3シーズンジャケットを引っ張り出す。
これなら肩と肘にパッドが入っているし、汚れても気にはならない。
下は困った。
いつものGパンにショートブーツはいいとして、林道へ行くのに膝が裸だとどうにも怖い。
これまた考えて、棚の奥から某G-MAXのニーシンパッドを引っ張り出してみる。
※これは今を去ること数年前、目にしたカクチさんが後に「あれは引きました」と語った伝説の一品である。
伝説のニーシンパッド
う~む、なんか凄い格好になってしまうがまぁいいか、どうせ人気の無い山道へ行くんだしな…
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セロー始動。
購入したばかりでまだまだ未整備なのだが、幸いにしてエンジンの調子は悪くない。
これなら途中で機械的なトラブルに合う可能性は少なそうだ。
ぱたぱたと走り、待ち合わせ場所へと向かう。
11月にしては暖かな気温。「あ~、今日もいい天気だねぇ……」
程なくにょろさんと合流する。乗るTT-R Raidは噂に違わぬ「程度極上品」のようだ。
互いのバイクをあれこれ品定め。
考えてみれば、以前、X4とV-Maxで同じ事をやったよな…
なにやらごそごそ準備中
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それでは行きますかと走り出す。
この辺りは走り慣れた田舎道だが、バイクが変わると雰囲気も変る。「あ~、なんか新鮮だぁ…」
2台の単気筒が、ぱたぱた言う排気音と共に狭い山道を登っていく。
今日これから走るのは、「あるのは知っているが走った事のない道」。
もちろん全線未舗装である。
峠を越え、湖の脇を抜けたら、いよいよその「初林道」へと突入だ。
さぁ、行って見ましょうか
初めは砂利のダートが続く。
比較的フラットなので、特に何を意識することなく走る事ができる・・・のだが、なにしろ今回は「初体験」。いろいろと試しながら走ってみる。
スロットルを開けてみたり閉じてみたり。
前に乗ったり後ろ乗りをしたり。
立ったり座ったり。
みようみまねでリーンアウトしてみたり。
車体が軽いだけに、乗り方一つで挙動が大きく変わる。
そして砂利の振動を見事に吸収してくれるサスペンション。う~む、これは結構楽しいかもしれないぞ・・・
それにしても、これだけ試しながら普通に走れるというのは凄い事だ。
V-Maxだったら路面の凹凸の確認だけでへとへとになってしまうに違いない。
「いやぁ、やっぱオフ車って凄いなぁ…」
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途中からちょいガレ場が出てくる。
もちろんそんな大げさなものではないが、昨夜降った雨のせい(雨が流れて)で路面が削られて溝ができているのだ。
次々現れるギャップをごとんごとんと越えていく。
これまた乗り手にはほとんど苦労がない。
バイクに体を預け、フロントタイヤをこじらないようにだけ気をつけていれば、バイクが勝手に前へ進んでくれるのだ。
ロードクリアランスたっぷりの車体とストロークの大きなサスペンションがこんなに楽だとは思わなかった。
★
ちょいと走って、休憩。
持って来たペットボトルのお茶でのどを潤す。旨い。
これは出掛けに「林道行くならお茶ですよお茶!」とにょろさんに言われ買っておいたのだ。
いや、確かに水分補給は無いとダメですねぇ。
#なんで「お茶」なんだろ?
多少は慣れてきた気がしないでもない林道走行。
「いやっっほぅ~!」とか奇声を上げながら更に山を登る。
山奥に入るにつれ、木々が道に覆いかぶさってくる。
紅葉にはまだちょい早いか?それでもこのあたりまで来ると、路面は落ち葉でいっぱいになる。
赤くなっている木も少しだけ
★
前を走っていたにょろさんが急に止まる。
道が二股に別れていたのだ。
片や上り、片や下り。
下りを偵察に行ったにょろさんが「こっちは道が細くなってますぅ~」と帰ってくる。ふむ、んじゃ上りが本線なんでしょうね。
そりゃっと上り始めるが・・・うわ、これ凄いガレガレだぁ…
落ち葉に隠れてよく見えなかった路面だが、近づくと岩が転がるガレ場であることに気づく。
昨夜の雨に濡れた石、その上には濡れ落ち葉。
そして雨で掘られた大きな溝。
先にアタックを開始したにょろさんが、坂の途中で止まってしまう。
当然、簡単には再スタートできない。滑る後輪と暴れるフロント。もちろん俺は下から見守る事しかできない。
悪戦苦闘の数分後、上から降ってきた言葉は…「一旦Uターンしましょうかぁ…」
画像だと坂のイメージが伝わりにくいなぁ・・・
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こんな坂の途中でUターンできたのは、ひとえにセローの軽量とハンドルの切れのおかげだと思う。
なんとか先ほどの分かれ目までUターン。二人でぜいぜい息を吐きながら休憩する。
いや、林道はやっぱスポーツなんですねぇ…
もう一度下の道を探索するもやはり行き止まり。なら…「やっぱりこれを登るしかないよねぇ」
今度は俺が先になる。
手前で勢いを付けてアタック開始。
上半身を前に倒した「なんちゃってヒルクライムフォーム」
こんな坂の途中で止まると大騒ぎになることは、V-Maxで多少(散々)経験済みなのだ。
ギアは2速。
タイヤを滑らせないように、しかしエンストしないようにじわりと後輪にパワーをかけるという難しい操作だが・・・
セローは凄かった。
アイドリング+αの低回転から、恐ろしいほどエンジンが粘る。
車体が軽く低重心なので、後輪が多少滑っても怖くない。
そしてタイヤ。こんなガレガレなのにきちんと前に進むのだ。
初心者の俺でも、一気に坂を上りきる事ができた。
そのまま傾斜がゆるくなる場所まで進み、エンジン停止。「うはぁっ、凄ぇ、登れたよ…」
後ろからにょろさんが上がってくる。
当然また休憩。二人でぐびぐびと飲むお茶の旨い事旨い事…
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一息ついたところで先へ進む。と……「あれ?道が……」
道が完全に無くなってました。
二人で呆然と立ちつくす。
先の二股の下り側も間違いなく行き止まりだった。
とすると、その更に手前から道を間違っていた事になる。
「やれやれ仕方ない、戻りますか」はいいのだけれど……さっきの坂、今度は下らなきゃいけないんだよねぇ…
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「インチキダウンヒルフォーム」で下っていく。
腰を下げて、ブレーキはリヤだけ、できればエンブレだけ、ハンドルは遊ばせて…
初心者が格好だけのフォームで無事下れたのは、これまたひとえにセローの性能のおかげである。
もちろん、降りたところでまた休憩です
なるほど、しばらく戻ると本線と思われるルートが別にあった。
こちらは林道の入り口同様比較的フラットな路面なので安心して走り続けられる。
しかし、なんでこんな道を間違ったのだろう?いや、でもいい経験をさせていただきましたよ…
★
有名な滝で休憩。滝の下でマイナスイオンをたっぷりと浴びる。
お茶がウメー!
更に山を駆け上がる。
路面は今度は小さな砂利へと変る。
どれどれとばかり、見よう見まねのリーンアウトで足出してスロットルを開け…「うひぃ~!」
ずるっとリアが外へ出る。体がついていかない。
慌てて路面を蹴飛ばしてなんとか復帰。嫌な汗がじわりと流れる。
「ああ、格好つけるとひどい目にあうのはオンでもオフでも一緒なんだねぇ・・・」
山を上りきり、舗装の県道へと出て林道は終了となる。
いやぁ!楽しい!
怖いけど面白いわ、これ!
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興奮冷めやらぬまま、県道をほこほこと下り、昼飯にそばを食いながら「これからどうしようか?」と相談する。
まだ時間も早いし、せっかく盛り上がったのにまっすぐ帰るのはつまらない。
にょろさんがにやりと笑う。「なら、川原ですな」
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のそのそと鬼怒川の川原へと降りていく。
こちらは先の林道とは異なり、大きめの石がごろごろとしている。
走りにくいし、転ぶとダメージも大きそう。慎重に慎重に・・・
川沿いをずんずんと下っていく。
途中、いきなりモトクロスのコースが現れ空を飛ぶバイクを見入ってしまったり、トンビを追いかけて飛ぶモーターグライダーを観察してみたりする。
川原の道…というか、四輪の踏み跡は複雑に入り組んでいる。
あっちへ曲がったりこっちへ合流したり。
とうとう道は藪の中へと入り、しかも路面がふかふかの砂になってしまった。「うへぇ、この辺が限界ですかねぇ~」
初心者二人にはちょい厳しい道でした
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適当な場所で川原を脱出する。
土手の堤防の上で飲むお茶がこれまた旨かった。
せっかくだからと、Raidとセローを交換して走ってみる。
さすがはフルサイズのオフ車、Raidはすばらしくパワフルだった。だけど…俺には足つきがなぁ(笑)
傾く夕日を見ながら解散。
にょろさん、これに懲りずにまたよろしくねぇ(笑)
いや、それにしてもオフ車は面白い。
オンとはまったく違う特性もそうだが、こんなに楽に乗れるとは思わなかった。
技術が伴わないから無茶はできないが、それでも充分に遊べそう。
さぁて、次は何処へ行こうかな?
せめてオフブーツは買わないとな・・・
<本日の走行距離=約110km><本日の教訓=たった110kmでこれだけ楽しめるとは・・・>