いや、結構走りましたよ・・・
<2007年7月>
■一応地元ですし
「何かイベント企画しようかなぁ?」と思っていたとある週末。
ところが日曜日の天気予報が今ひとつ。
「仕方ない、イベントは諦めて、天気良さそうな土曜日にちょっとだけ出かけるとするか…」
どこへ行こうか?と考えていて思いつく。
セローを買って8ヶ月。そこそこ走っている風を装ってはいるが、実際に走った林道の数などごく僅か。
これから先、オフロードオフも計画してみたい。
となれば、道案内できるように近場のメジャールートを一度は走っておかなければいけないんじゃなかろうか?
★
それではと調べ始めたのが金曜の午後(←仕事は?)
これまでひとまとめに「林道」と言っているが、その状態は千差万別らしい。
・普通に走れるところあり、走れたらラッキー!なところあり。
・特定の時期しか走れないところあり、名目上ダメだが実際はゴニョゴニョなところあり。
「う~ん、なかなか難しいものなんだねぇ…」
それでも、メジャールートの見当はついた。
本来なら複数台で行くのが正統派の林道走行だが、突発的な思いつきなので今から誰かを引き込むのは気が引ける。
今回は単独行で問題ない範囲で頑張るとしよう。
★
土曜日朝。ばしっと目が覚めるのは遊びの日のお約束。
いそいそと準備…といっても大層なものはない。
持ち物は雨具とパンク修理剤と少々の工具。もちろん装備的にはオフブーツにニーシンガード、肩肘パッドの俺的完全装備である。
7:30am、コンビニでパンを齧りながらルート再確認。
「ああ行ってこう行って…あ~、地図だと林道の入り口が今ひとつわかりにくいんだよな。ま、最終的には近くへ行ってから探すしかないか…」
★
まずはと、いつもどおり川原へと降りていく。
天気は予報どおり良好。軽く準備運動して画像を撮ったら、「よ~し、行くかぁ!」
天気は上々
ここから先は、俺がこっそり秘密にしている「丸々20km未舗装&信号なしで県道使うより早く北の山へ行けるんだもんねルート」である。
「おりゃ!」とか「ふむぅ!」とか意味不明の独り言を吐きながら走る。
セローは相変わらず好調。ちょい回転を上げて走ると歯切れの良い排気音が心地良い。
草むらから土鳩が飛び立ち、散歩途中の犬が不思議そうにこちらを見る。
空は青く、朝の風は涼しい。「あ~、気持ちいいなぁ…」
秘密の快走ルート
★
上機嫌で走っていた土手の上。何気に後ろを振り返る。
リアシートになんとなく違和感あり。
「あ、雨具が無い…」
ネットでしっかり留めてあったはずの雨具。それが無くなりネットがぷらぷらとしていたのだ。
この雨具はかなり昔から使っていたもの。ちょい穴も開いているし、他に新しい物もあるので無くしても困ることは無い。
今日も「オフロードで雨具使うとどろどろになるしな」と古い方を持ってきたのだ。
しかし古いとはいえ、この雨具には愛着がある。
四国も九州も北海道も、こいつと一緒に悪戦苦闘した。
「古いのを取っておいた」というより「捨てられなかった」というのが実は正直なところである。
「くっそー、どこで落としたんだ?」
カメラで確認すると、先に撮った画像にはリアシートにしっかり雨具が写っている。
「そうか、あそこまでの間か。なら探すぞ!」
★
今来た道を戻る。
ここまでは全て川沿いのダート、他に走る車は無い。
雨具は黄色でとても目立つ。夏草が伸びる土手とはいえ落ちていれば目に留まるはずだ。
周囲に目を配りながらゆっくりと走る。
フラットな路面は比較的遠くまで見渡せる。ルートを2/3ほど戻ったあたりで…「あ、あれかぁ?」
路上にぽつねんと転がる黄色い円筒状のもの。近寄ればやはり俺の雨具であった。
「ふいぃぃ、見つかったぞぉ!」
幸い何かに踏まれた様子も無い。拾い上げてリアシートへ。
良かった良かった、今度はしっかり固定してやらねば。
あ~よかった…
★
往復のロスタイム30分を取りもどすべく走り出す。
まぁ今日は気ままな一人旅、ロスタイムも何もないわけだが。
そんなこんなで1時間程で着いた「いつもの林道」
まずはここで足慣らし。
林道は昨日夜の雨のせいで荒れていた。
水溜りは言うに及ばず、雨で掘れた溝と山から落ちてきた石が前を遮る。
俺レベルの足慣らしにしてはちょい厳しい状況。ま、これも試練のうちよ…
ひなたの路面は悪くないんですけどね
えいほら走る林道の脇を流れる川も増水中。
ごうごうと音を立てる結構な水量なのに、そこそこの数の釣り人がいる。
「本格的な渓流釣りってやった事ないけど、こういう時にも釣れるものなのだろうかねぇ?」
心霊写真じゃないですよ
★
ブーツを泥で真っ白にして林道を駆け抜ける。
舗装の峠道で山を越え、鬼怒川温泉方面へと降りていく。
まださほどの距離は走っていないが、川治温泉近辺で給油。
250km以上の航続距離を誇るセロー。だが、次のガソリンスタンドが何処にあるのかわからない時にはやはり安全策を取るべきだろう。
★
川治温泉から湯西川方面へと向かうのはいつぞやのツーリングと一緒だが、今日は途中から西へと道をかえる。
工事用ダンプの後ろを煙い煙いと走り、道幅一杯使って道路を掘り返しているパワーショベルの後ろで道が空くのを5分ほど待つ。
今日はきままな一人旅(繰)、慌てない慌てない…
お仕事ご苦労様です
道が簡易舗装からダートに変わり、別れ道に「桧枝岐村」の標識が現れる。
さぁ、ここから初チャレンジ林道の始まりだ。
★
路面を確認しながらゆっくりと進む。
道の荒れ具合は、先の「いつもの林道」より悪くない。
路肩に尖った石が落ちているのと雨水の流れた深い溝にだけ気をつけていればさほど苦労する事もなく進むことができる。
右手に湖(ダム湖)が現れる。
ダムといっても砂防ダムのようだ。どれどれと突堤(?)に登って景色を眺めてみる。
「あー、枯れ木がなんか凄いなぁ」
湖からにょきにょきと立つ枯れ木の森。後ろの山と相まって不思議な雰囲気をかもし出す。
こういう場所は、カメラ好きな人だと一工夫して面白い写真を撮るんだろうな。
不思議な光景
そして不思議な男
★
一通り納得したところで先へと進む。
こんな山奥でも、対向して来るバイクがある。
挨拶してすれ違うのはセローとXR。そしてその後ろからデカいトヨタランドクルーザー。
「ふうん、こんな車も通るんだ。この道、途中崩落があったと聞いているんだけど修復されたのかな?」
数キロ走って、その「崩落地点」へと到着する。
山から崩れ落ち、道路を見事に塞ぐ大量の土砂。そしてその上に倒木。
「はっはっは、あのランクルはUターンか。こりゃぁどう考えても四輪では通行できないよなぁ」
#いや、でもスズキのジムニーならもしかして…
現場到着
幸いな事に、二輪なら(もちろん人も)通れそうな迂回路らしきものが作られていた。
崩落斜面を途中まで登ればその迂回路に入ることができる。
バイクを降り、入念に下見する。
迂回路入り口までの高さは3,4mくらいか?斜度は相応、そして路面はざくざくの土砂。
「ん~、でもこれくらいなら俺でもなんとかなる…かな?」
んじゃ一丁やってみるとしましょうか。
さてお立会い
★
エンジン始動。タイヤを通すルートを目で追って再確認。
「おら~っ!」
勢いをつけて駆け上がる。
リアが滑ってもスロットルは戻さない。
最後だけちょいスロットルを緩めて両足付いて、迂回路入り口にセローの車体を乗せてやる。
「ふい~、なんとか上がれたぞぉ。これも軽いセローのおかげだなぁ…」
よっこらせっと……登りました
細い迂回路(途中でサイドスタンドを立てることさえできない)を渡って向こう側へ。
最後に1mほどの段差をえんやと飛び降りれば通過完了。
あ~疲れた。というかかなりどきどきした。お茶でも飲んで落ち着こう…
携帯で撮ったらジオラマみたいに写りました(笑)
★
5分休憩して走り出す。
先の崩落のせいか、こちら側を通る人はまったく無く、道も荒れ放題。
・草のぼうぼうと伸びている場所。砂利の深い場所。
・枯れ木が前を塞いでいたり、大きな石が落ちていたり。
「こりゃこっち側も四輪じゃ無理だなぁ・・・」
#いや、でもジムニーならもしかして…
こんなのも転がってますしね
★
「熊とか出るなよ~」と叫びながら山を上り、頂上へと到着する。
頂上は駐車場になっており、四輪車が多数停まっていた。
「なるほど、ここまでは四輪も入ってこれるわけなのね」
そこから先はごく普通の未舗装路。下りのダートではあるが快適に走ることができた。
いつもならちょい物足りなく感じるところだが、先のルートを走破した後だと一息つけてありがたかったりもする。
えんやらと福島県の桧枝岐温泉へ出たのがお昼ちょい前。
ここで名物「裁ち蕎麦」の大盛りをやっつける。
十割蕎麦なのに固くなく細い。濃い目のツユにぴったり合って美味。
シンプルな蕎麦です
蕎麦湯を呑みながらほぅと一息ついたら…「さあ、午後も行くぞぉ!」
★
まずは木賊温泉を目指して走る。
この辺りは、かつてV魔で走った事もある。(もちろん舗装路)
これまた数年前に土砂崩れで通行止めとなっていたのだが、近年補修されたようだ。
途中の名物「高速S字」も残っていてほっと一安心。
途中ほんの少し残るダート部分には現在トンネルが建設中。
他に国道も通ってるのに、ここにこんな立派な物作る意味って何なんだろうねぇ?
#せめて「この辺りに住んでいる人はとても感謝している」と思いたい。
ダートもなくなっちゃうんだろうなぁ…
久しぶりに来る木賊温泉。並ぶ民宿には「露天風呂」「足湯」の看板を掲げているところが多い。
これまであまり意識しなかったけど、この辺りでゆっくり一泊するツーリングってのも良さそうだよな。
一旦国道へ出る。
この辺りは国道といってもすぐ脇にこんな景色↓があったりするので油断はできない。
人工滝ですが綺麗でしたよ
何気ない路地から入っていく林道は、この前のツーリングで教えてもらった道。
二度目ではあるが油断せず走ろう。なにしろ今日は単独行だし。
★
この林道、(一部を除き)路面は総じて良い。
また林間あり、渓流沿いあり、岩場に砂地ありとバリエーションも楽しめる。
細いトンネルあり
サンドトラップあり
だが、路面が良いだけに交通量も多い。
オフ車は言うに及ばず、4輪のセダンやファミリーカーも走ってくる。
渓流沿いでマツダの新型ロードスターとすれ違った時にはさすがに目を疑ったものだ。(Uターンだろうなぁ…)
★
うひゃひゃと走って「平家落人の里」湯西川温泉へと降りていく。
自販機を見つけてお茶休憩。「あ~、そろそろ尻が痛くなってきたなぁ…」
周囲をきょろきょろ見渡しながら走り出す。
すぐ近くに別の林道の入り口があるはずなのだが…あ、ここかな?
★
横道の細い橋を渡ると小さな林道の標識があった。そしてその先には「通り抜けできません」という大きな看板。
「ま、抜けられなかったら戻ってくるとして・・・」
それっと走る。
しばらくは立派な舗装路が続く。
九十九折れの急坂を駆け上がり、一山超えたところでやっと道がダートへと変わった。
始まり始まり~
山間を抜け、針葉樹の林を抜ける。
渓流沿いの峠道をウホウホ走っていると・・・
唐突に、工事現場に行き当たる。
工事車両が数台、ヘルメットを被ったおじさんがこちらを見ている。
「行き止まりか?」と思ったのだが、おじさんが「通れるよ」風の手招きをしている。
「あ、行けますか、んじゃちょっと失礼しますね」
どうもどうもと頭を下ながら現場を通過する。そしてその先は・・・「げ、なんじゃこりゃ」
一応「道」ではあるのだが、路面は砂というか岩というか、とにかくグズグズのフカフカだったのだ。
崩れた崖を重機で削っただけ、というとイメージが伝わるだろうか。
柔らかい上に岩が転がっているので走りにくいこと甚だしい。
「うう、パンクとかしないでくれよぉ…」
崩落現場(と思われる)その領域を抜けると、ほんの少し道は良くなった。
しかし、相変わらず(雨でできた)路面の溝は深く、転がる岩にはびっしりと苔が生えている。ううう、怖い怖い。
景色はいいのだが、見ている余裕は無い。泣きそうになりながら峠を越え、下りへ。
路面状況は…あ、また少し良くなってきたかな…
大分良くなってきました。
(一番酷いところは走るので精一杯)
林間へと入り、渓流の音が聞こえてくると路面は更に良くなった。
この辺りまでは人が入ってくるのだろう。広くなったところに釣り人の車が路駐されているのを見て一安心。休憩休憩っと。
渓流脇まで降りてお茶で喉を潤す。
目の前には深い淵が広がっており、水はとても澄んでいる。昨日の雨の影響はもう消えたのだろうか?
泳ぐのは・・・ちょっと怖いかも(笑)
するりと走って、朝通った川治温泉へとたどり着いた。
「ああ、無事に降りてこられたか。これで一安心…」はいいのだけど、尻がやっぱ痛いなぁ…
★
尻をカバーしながら、国道を鬼怒川温泉まで走れば、もう帰りついたも同じ事。
だが「せっかくなので」と通った事のない細い峠を探索してみる。
山間をくねくね抜けていく細い道。
舗装路ではあるが、路肩の草がこれでもかと伸び、車線は半分以下になっている。
そして何故か道路の真ん中に一匹のオンドリ。
「なんか変な道だなぁ…」
この辺りは、どうやら少し前に通り雨があったらしい。
差し込む夕日に水蒸気がもうもうと立ち上がっている。
道路脇の静かな沢は、なかなか幻想的な風景と化していた。
実に綺麗でした
「あ~走った走った!今日は本当に良く走ったぞぉ!」
そう思って計算してみると、今日の総走行距離は約260km。
そう、たった260kmなのにこの疲労感なのだ。そしてかかった時間は約10時間。
一人旅だから休憩時間は最小のはずなのに…まぁうち100km以上未舗装路だったからねぇ。
これからオフでツーリング計画する時には、この辺りの距離感を忘れないようにしないといけないな。
#あ~、尻が痛ぇ~
<本日の走行距離=約260km><本日の教訓=今度はもう少し遠くへも>