■ まずは外すところから
>■「りあたいや ガ ソロソロ ゲンカイ デス ハヤメニ コウカン シテ クダサイ…」
・・・というわけでリアタイヤを交換する。
例によって(工賃を浮かせる為)単体でショップへ持ち込もうとホイールを取り外したのだが…
「ありゃ?ちょいベアリングが怪しいな…」
★
リアホイール右側(ブレーキディスク側)のベアリング。
動きが渋いわけではないのだが、指で回すと少しだけ違和感が感じられる。
「ゴリゴリ」ではなく「ゴキュッ」とでもいえばいいだろうか?そんな感覚が指先に伝わってくる。
「前交換したの何時だったかなぁ…というか、交換したことあったっけ?ここ」(←をい)
17年ぶりかどうかは別にして(笑)気になったのなら交換するのが無難だろう。
トラブルになってからじゃ遅いってのは、これまで散々経験済みなのだ(笑)
★
それではとサービスマニュアルをひっくり返す。
ところが、どこにもベアリングの交換の手順が載っていない。
「ってことは特殊な事はないのかな?シャフトドライブだから何か違うかなと思っていたのだけど」
普通のベアリング交換なら、ちょい前に隼で実践済み。
ま、とりあえずはじめてみるか。
★
(新品タイヤを組み込んだ)ホイールを作業デスクへえっちらおっちら運ぶ。
あ~、やっぱMAXのリアホイールは重いねぇ…
グリスアップは結構マメにやってるんですけどね
まずは付属品(?)の撤去から。
右(ブレーキディスク)側のダスト(オイル?)シールをペンチで引き剥がす。
このダストシール、内側にスプリングがセットされていてちょい高級品っぽい。
新品どれくらいするんだろ?ちょっと心配になる。
※後日注文。そんなに高くはありませんでした。
内側にはでかいサークリップ。
ベアリングのズレ防止用かな?これはサークリッププライヤーで取り外す。
外れたサークリップとダストシール
シールにはバネが付いてます
これでベアリングとご対面。
左(ドライブシャフト)側はまずサークリップから。
それにしてもMAXはなんで両側にサークリップが入ってるんだ?シャフトドライブの特徴なのかな?
サークリップを外した後
サークリップを外すと、ギア(って言うのか?)がごっそりと抜けてくる。
ハブダンパーに刺さっていた部分は結構錆が出ている。磨いてシリコングリスを塗っておこう。
※本当はバブダンパーも交換したほうがいいんだろうなぁ・・・
抜けました。
こちら側にもダストシールがあるが、これは内側のカラーを抜いてからでないと外れないようである。
★
肝心のベアリングの「抜き」。
どれどれと右側から作業開始。
ベアリングのアウターレースにCRC-556。
よくよく観察すると、MAXのホイールに入っているカラーには1mmほど遊びがある。
つまり、カラーとベアリングの間に1mm弱の隙間があるのだ。
「うん、これならベアリングプラーで簡単に引っ掛けられるだろう」
ベアリングプーラー出動。ところがこれが使えない。
隙間はあるのに、何故か爪が旨く引っかからないのだ。
プーラーのせいなのか、それともベアリングの形状のせいなのか。
「くっそ~、やっぱ打ち抜きしなきゃ駄目かぁ…」
★
左側には先のダストシールがあるので、打ち抜くとすれば右側からだ。
ホイール左側を上にして、アクスル穴に長いパイプを差し込んでやる。
打ち抜く手順は隼と一緒。
遊びもあるし、簡単に打ちぬけ…ないのがお約束ですな。
★
・カラー(みかけのホイール幅)が長く、径が小さいので、打ち抜く角度が付けにくい。
・ベアリング径が小さく、引っ掛かりが少ない。
いらいらして手元が狂い、右手に持ったハンマーで左手を打つ事数回。
「あ~ヤメだヤメだっ!休憩休憩!」
自室へ引き上げ、ゆっくりとコーヒーを飲みながら考える。
このままだと多分打ち抜けない。
良い機会だし、新しい(高い)プーラーを買うのも悪くはないのだけれど、それはちょいと悔しい気もする。
工事用アンカーを使う方式は、隼でもダメだったんだからMAXでも使えないだろう。
他に何か方法は…
★
ふと思いつく。
先の1mm弱の隙間、あれに何か挟めば打ち出すポイントになるんじゃないだろうか?
そしてまたセンスのないイメージ図
ガレージへ取って返して確認する。
どうやら大きめのワッシャが挟めそうだ。
工具箱から適当な物を引っ張り出して隙間に挟み込む。飛び出たワッシャの端を反対側から……よ~し、これなら叩けるぞ。
しかし、数回叩くと、鉄製の薄いワッシャはぺこりと曲がってしまった。
ホームセンターへ駆け込み、ステンレス製でカラーの内径20mmぎりぎりのサイズのものを購入してくる。
ワッシャを2枚挟み込んで、さらにそれにひっかけるように中央に1枚をセット。
これを反対側から太目のパイプで引っ叩けば……うひ~、外れたぁ~
★
「頭は使うためにあるんだねぇ」とか「この方法、実用新案とれないかな?」とか考えながら外れたベアリングとカラーをチェックする。
付いていたベアリングは片側シールだった。
そしてそのシールはなぜか内側に向いていた。外側には別途ダストシールが付いているからなのだろうか?
これで一安心・・・?
★
さて、次は反対(ドライブシャフト)側。ホイールをひっくり返す。
カラーの外れたダストシールを引き剥がす。
「まぁ片側が外れたから後は簡単に叩きだせ……って、なんだよ!ニードルベアリングじゃねぇかよっ!」
現れた左側は、右側のような一般的なボールベアリングとは異なり、細い棒がローラー状に置かれたニードルベアリングだった。
あ~、これどうやって外すんだぁ?同じように叩けばいいのかなぁ?
内側のニードルが見えますか?
★
しげしげと観察。
う~ん、形状が違うだけだから叩けば大丈夫な気がするんだけど…まぁ、壊れても外れりゃいいんだけどさ。
ホイールの裏側(右側)から覗くと、こちらのホイールの座面には切り欠き様の部分があった。多分ここから叩けば外れやすい…よね?
そしてまたセンスの無いイメージ図
※切り欠きは幾何学的ではなく結構いいかげんな形状だった。ホイールの鋳造状態と関係あるのかも?
★
裏側からひたすらに叩く。
ベアリングからニードルが外れ、ばらばらと下へと落ちる。うん、やっぱこれは「壊してる」って言ったほうが正解だな。
★
4箇所ある切り欠きを交互に叩いてニードルベアリングを押し出す。
ベアリングの厚みが小さく、相当にしぶとかったが、なんとか外すことに成功。あ~、面倒だったぁ~
CRC-556で「穴」を綺麗に清掃。
「やれやれ、あとは新品のベアリングをセットすればいいんだけど……そういえば、ニードルベアリングって叩いて入れて良かったんだっけ?」
確か、「ニードルベアリングはプレス機で圧入すること」「うかつに叩くと壊れる」とか聞いたことがあるような気がする。
モノがリアホイール(それもディッシュタイプ)だけに、プレス機代わりの万力にかけるわけにはいかない。
もちろん、シャコ万とかでも届かない。
外したはいいが、さて、どうやって入れりゃぁいいんだ?ベアリング?
■ そして入れる方はといえば
いろいろと調べてはみたものの、ニードルベアリングを圧入する良い方法はみつからない。
「仕方ない、いつもどおり叩いて入れるか」
★
入手後、冷凍庫で1週間キンキンに冷やしておいたニードルベアリング(理由はこちらで)を取り出してくる。
給脂したホイールにセット。
ニードルベアリングには、叩いて良い面(刻印あり)と悪い面があるものがあるそうなのだが、このベアリングはどちらも同じ様子。
「ま、壊れたらそれまでよ」
グリスも凍る新ベアリング
上に古いベアリングの枠(中は外す時にばらばらになってしまった)を置き、ハンマーで叩く。
垂直に入るように、そして壊さないように慎重に慎重に・・・
冷えていたせいか、ベアリングは比較的すんなりと打ち込まれていった。
面一まで打ち込んだら古いベアリングを外し、以後は枠を、打ち込み用にしている棒(以前ねじ切った延長バー)で叩いて入れていく。
音が「コンコン」が「キンキン」に変わったら奥まで打ち込めた証拠である。
しげしげと眺め、中に指を突っ込んでぐるぐると回す。
「変な感じもないし、きちんと打ち込めた・・・よな?」
ニードルが曲がったんじゃないかと心配で…
「大丈夫であってくれよぉ・・・」と祈りながらホイールをひっくり返す。
磨いておいたカラーを入れる。
下(ニードルベアリング側)までしっかり差し込まないと高さが合わなくなる。ここまできて失敗すると大変なのでこれまた慎重に。
これまた冷え切った新(ボール)ベアリング。
前に付いていたのは片側シールだったが、こちらは両面シールだった。
これまた上に古いベアリングを置いて叩く。
「コンコン」「キンキン」も同様だ。
両面シールの改訂版
サークリップの溝の位置まで打ち込めればOK
サークリップをセット。
その後、シールをハメ込んでこちら側の処理は完了となる。ふぃ~・・・
これは内ガケのサークリップです
ダスト(オイル)シールセット
もう一度ホイールをひっくり返す。
指で中のカラーの動きを確認した後、こちら側のカラーをセット。その後シールをハメ込んでやる。
カラーを入れて
シールは奥まで押し込みます
最後に綺麗に磨いておいたギア部(ゴムの場所はシリコングリスで磨き、裏側のOリングは新品に交換済み)をセットし、サークリップで留めてやれば交換作業は完了。
や~、出来た出来たぁ~
こちらのサークリップは外ガケです
後はいつもどおり、ホイールを車体へ取り付けるだけ。
アクスルシャフトを仮留め後、一旦センタースタンドを外してスイングアームを動かしてみる。
これは各部を馴染ませるため・・・というか、単なるおまじないみたいなものだけど。
センタースタンドを掛けなおして各部を本締めする。
手で回してみると、心なしかホイールの動きが軽いような?
まぁプラシーボなんだろうけどさ。
これでホイールベアリングの交換作業は完了。
でも・・・やっぱりニードルベアリングが心配だから、少し走ったらもう一度チェックしてやることにしよう。
■ そしてその後
まったく問題なし。というか実に快調。
やー、良かった良かった・・・