SUZUKI GSX1300R 隼

☆ メンテナンス編 ☆

ホイールベアリング交換記

さて、外せるかどうかお立会い

 取り外し   取り付け 


取り外し

<2007年3月>

自分でできるかどうかが問題で。

 買って7年、総走行距離4万。
 そろそろ隼の足回りを一通り見直してやらねばならない頃にきている。

 気になる箇所はいくつかあるのだが、まずは自分でできる(できそうな)場所から始めるとするか・・・というわけで、ホイールベアリングを交換してやることにしよう・・・
 
・・・と気軽に書いたものの、実はホイールベアリングの交換は素人には結構大変な作業のはず。
 以前買ったベアリングプーラーが活躍してくれるといいんだけどねぇ・・・
 
 

 まずはフロントホイールの取り外し。

 スタンドアップしてブレーキキャリパ外してホイールを外す。
 うむ、ブレーキパッドはまだ大丈夫そう、外したキャリパはブレーキホースに負荷がかからないように、伏せたバケツに乗せておこう。


そういえばこのバケツ、いろいろな事に活躍してるな・・・

 外したホイールをうんこらせと作業デスクへ。
 さぁて、んじゃ腰すえてやっつけますか。

 最初に外すのはダストシール。
 「ま、ダストシールなんて簡単に・・・」・・・外れないのがお約束って奴ですな。

 大きめのマイナスドライバーでコジるのだが、がっちりハマったダストシールはびくともしない。
 それはもう、本当にぴくりともしないのだから大したものだ。
 
 「ええい!ならこうしてくれるわっ!」

 太目のプラスドライバーを突っ込んで強引に曲げ、浮いた箇所をペンチで挟んで引っこ抜く。
 これならさすがに外れるダストシール。
 再使用しないことが前提だからできる強引技である。


壊して良いならなんとでもなりますが

 ダストシールが取れれば、次はいよいよベアリング。
 「あ~、ちゃんと外せるかなぁ・・・」


ここで確認
黒:ホイール断面
緑:ダストシール
赤:ホイールベアリング
青:カラー

 どれどれと、ベアリングプーラーをセットしてみる。
 
 プーラーの爪がベアリングカラーの境目になるようセットして・・・う~ん、やっぱりうまくひっかからないな・・・

 予想はしていたのだが、ベアリングとカラーの境目が非常に小さく、爪を上手に引っ掛けることができない。
 何度か試したが全て失敗。
 仕方が無い、違う方法を試してみるか。

 ホームセンターで、工事用のアンカーとそれにネジ込める棒を買ってくる。
 これはちょい高級なベアリングプーラーと同じ方式。
 もちろん精度は異なるが、うまくすればこれで外れてくれるだろう。


買ってきたアンカー


こんな風にセット

 アンカーを打ち込んで固定して、更に打ち込んでベアリングを・・・う~ん、やっぱり滑ってダメだな。

 何度やっても抜けてしまうアンカー。
 小排気量だとこれで外れる事が多いのだが、さすがに隼クラスだと簡単にはいかないようだ。

 それに、もしかすると季節的なものも関係しているかもしれない。
 気温の低い冬場は、いわゆる「穴」が縮んでしまい、「抜く」作業にはあまり適してはいないのだ。

#「穴」系は、「温めると大きくなり、冷やすと縮む」
 今回も一応ヒートガン(という名をつけたドライヤー)で温めたりしてみたのだけれど・・・

 「よし、ならやっぱ基本にかえるとするか!」
 


 
 基本といえば、やはりベアリングは「叩きだし」である。

 中央のカラーには、ホイール内に「遊び」がある。
 これを利用して、カラーを片側に追い込んでやる。
 するとベアリングとカラーの間に(片側だけ)段差ができる。
 ここをマイナスの貫通ドライバーで引っ叩いてやるのだ。


青いカラーを片側に寄せて
できた段差部分を叩きます

 少しでもベアリングが外へ動くとカラーの動く範囲も大きくなり、結果的に叩ける部分も大きくなる。
 
 少しずつカラーを回して叩く部分を変える。
 叩くためのものもマイナスドライバーから長いボルト(これも工事用)に変え、次第にベアリングを外へ出して行く。

 苦節5分(←苦節じゃない)、カランという軽い音と共に落ちるベアリング(と、カラー)
 
 「ふぃ~、やっと外れたか・・・」


やっと外れました

 外れたベアリングには、特に異常は見当たらない。
 錆もなく動きもごく普通。グリスの切れた様子も無い。
 
 「まだ大丈夫だったかな?ま、距離も距離だし、壊れる前に交換できて良かったとしておくか・・・」

 カラーが外れたあとなので、反対側のベアリングを外すのは簡単なもの。
 さくさくたたき出しててチェック、こちらも特に異常なし。
 
 

俺的メモ
 
1.ベアリングは左側から外す事。
  内部スペースの関係で、左側の方がカラーの自由度が大きく、結果叩ける場所が大きくなる。
 
2.まずはカラーを叩け。
  反対側からカラーを叩くことで遊びが大きくなり、カラー自体の動きも良くなる。
  但しアルミ製なので傷に注意すること。


もちろん中は綺麗です。

 フロントが終わったら、次はリアホイールだ。

 「そういえば久しぶりだなぁ・・・」と考えながらリアホイールを外すと、「カラン・・・」と音を立てて落ちるスプロケット
 う~む、そろそろハブダンパーも交換時期にきているみたいだな・・・


また外れちゃうし・・・

 フロントと異なり、リアホイールには3箇所にベアリングがある。
 ホイールの左右に2箇所と、スプロケットに1箇所だ。

 まずはスプロケット側。
 
 ダストシールの取り外しはフロント同様。
 ベアリングは剥きだしだから、叩き出しにはなんの問題もない。


だんだん慣れてきました。
#スプロケの歯はまだまだ大丈夫そう・・・

 ホイール側は、まず外側にセットされているカラーを外す。

 ダストシールの取り外し&ベアリングの叩きだしはフロント同様だ。
 

俺的メモ2
 
1.ベアリングはこれまた左側(スプロケット側)から外す事。
  ホイールの肉厚が薄いので、比較的外しやすいと思われる。
 
2.カラーの順番を忘れぬこと。
  順番と向きは、別途撮影した画像確認のこと。

3.外す前に撮影した、ベアリングの打ち込み深さを覚えておくこと。


全部の場所を一応撮影しておきました(笑)

 リアもこれまた外したベアリングの状態は悪くない。

 「ま、壊れる前に交換…(略)」

 さぁ、これで全部のベアリングが外れた事になる。
 

 あとは新しいベアリングを注文して、ちゃんと打ち込んで組めばOKのはずだよな・・・」


準備完了



取り付け

<2007年3月>

ここからが肝心です。

 某日、パーツ到着。どれ、それでは取り付けるか。

 ちなみに今回発注したパーツは、
・ベアリング前2個後3個
・ダストシール前2個後2個
・ハブダンパー6個
 合計で、約11,200円だ。

 今回は全て純正品だが、ベアリングに関しては、外した古いベアリングを元に「ベアリング専門店に同等品を発注」という手法もあるらしい。
 この場合はパーツ代が相応に安く済むとのこと。まぁその分、精度や耐久性は全て自己責任となるわけだが。

 取り付け作業はリアのスプロケ部から行う事にする。

 部屋の冷凍庫から、キンキンに冷えたベアリングを取り出す。
 これはたっぷり一昼夜かけて冷やしておいたのだ。
 「暖まると穴が広がる」のと同様に、中に入れる方は「冷やす縮む」ので挿入しやすくなるのだ。


お客さん、よく冷えてますよベアリング

 スプロケ部の穴をCRC-556で綺麗に掃除する。
 内側には薄くグリスを塗る。これは潤滑ではなく錆防止用である。

 新しいベアリングは全部半シールタイプなのでグリスの追加は必要ない
 箱から出したままで打ち込み可能なのだ。

 新しいベアリングを置き、その上に古いベアリングをセット。
 上からハンマーで叩いて打ち込んでいく。


上に乗っている方が古いベアリング

 ベアリングが水平に入るように、叩く場所を調整しながら打っていく。

 冷えているせいかグリスのせいか、ベアリングはさほどの苦も無く打ち込まれていく。
 「途中で引っかかったらどうしよう・・・」と心配していただけに一安心だ。

 淵と面一になるまで打ち込んだら、そこから先は古いベアリングの代わりに大きめのラチェットコマで打ち込んでいく。
#そのまま打ち込むと古いベアリングも一緒に打ち込まれてしまうので。
 
 打つのはベアリングの外カラー(穴に接している側)
 間違って内側を叩くとベアリングが壊れるので慎重に・・・っと。

 最後まで打ち込むと、音が「カンカン」から「キンキン」に変わる。
 最後に念のため、数箇所の深さを測って「元通り&水平に」打ち込めたかを確認しておこう。


外す前と一緒でした
 

 うむ、大丈夫そう。
 ベアリングの内側を指で触ってみるとくるくると回る。どうやらきちんと打ち込めたようだ。

 次はダストシール
 これは単純にゴムハンマーで叩いて打ち込んでやる。
 
 「ベアリングじゃないからそんなに神経質にならなくても・・・」と思っていたが、これも一応金属製
#外側はプラスチックだが、内側の枠は鉄(?)製
 変に打ち込むと下のベアリングにも影響しそう。やはり丁寧に作業するに越した事はないだろう。


ついでに全体も掃除しときましょ

 これにてスプロケット部への取り付け作業は完了。

 ふ~、なんとか上手くいったみたいだな。

 続いてリアホイール

 ベアリングの打ち込みはスプロケット部同様だが、こちらは左右両側に打ち込むだけに注意点もある。

・片側をきっちり打ち込み
・中にカラーを入れ(忘れると後で泣くことに)
・反対側を打ち込む

・・・のだが、反対側を打ち込みすぎると、最初に打ち込んだベアリングが渋くなってしまう場合があるのだ。
 
 感覚としては「中のカラーが指で軽く動かせるくらい」が丁度良いらしい。
 む~、この辺りが経験って奴なんだろうな。

#本当は、打ち込む順番(左右どちらからか)もあるらしいのだが、先達曰く「あまり関係ない」とのことだったので今回は気にしなかった。


右(ディスク)側。これも測って確認します。


左(スプロケ)側。こっちの方が深くまで打ち込みます。

 ちなみにリアホイールのダストシールは右(ディスク)側だけである。
#左側にはスプロケットが付く為

 フロントホイールもリヤホイール同様に作業する。

 これまた左右とも綺麗に打ち込めて満足満足。
#中のカラーを忘れないように・・・


これまた測ってチェック

 さぁ、これでベアリングの打ち込みは完了だ。

 次は「ついでに」の作業ではあるが、ハブダンパーの交換
 これは何度か行っているので手順に迷いは無い。


ハブダンパー


新品セット完了。
面倒なのはこの後のスプロケット側の差込みなんですよ・・・
 

俺的メモ3
・ドライバーでコジって外してOK
・裏のポッチをきちんと打ち込むこと。渋いならシリコンスプレーを使用。
・セット後、ダンパーの隙間をドライバーでコジって広げておくこと。
・スプロケ部セットの際、これまたシリコンスプレー使用のこと。
 

 さぁ、それでは車体への組み込みだ。

 まずはリア側。

 リアホイール左側にカラーを置き、その上からスプロケット部を差し込んでやる。
 新品ダンパーはかなりきつい。引っかかったり曲がって入らないよう注意が必要だ。
#俺的メモ3参照。

 スプロケ部が入ったら、左右にこれまたカラーをセット。
 「あれ?カラーの形が違うな?」
 外した時の状態はメモしてあるが、念の為パーツリストでもチェックする。

 「え~っと、リブの付いたほうが右(ディスク)側・・・っと」


形が違うのわかります?

 掃除したリア周りにホイールをセット。

 磨いてグリス塗ったアクスルシャフトを入れて、
 チェーン引いてセンターが出ているのを確認して、
 ロックナット締めてベータピンで留めて・・・よし、これでOK。

 試しに回してみると、チェーンの抵抗はあるもののくるくると回るリアホイール。
 うん、どこにも引っかかりはないようだ。

 フロントも同様。
 
 ブレーキキャリパを外した状態で確認すると、僅かの力でホイールは見事な程回り続けてくれた。
 目視によるセンター確認も問題なし。

 周囲を見渡して、パーツ余り無し確認。
 ボルト本締め再確認。
 よし、これにて作業完了!

テスト走行へ。
 

 それではと、寒風吹きすさぶ中、テスト走行&ナラシに出かけてみる。


そういえば久しぶりだな・・・

 エンジン始動。
 
 暖機後、クラッチを繋ぐと車体がするりと前に出る。
 「うわっ、隼のトルクってすげぇっ!」
 まぁここのところず~っとセローだったからねぇ・・・

 ベアリングとハブダンパーが新品なので、急発進急減加速は禁物である。
 国道をまったり車の流れに乗って走る。

 作業には載せなかったが、実はフロントタイヤも新品に交換してある。 
 ホイールを外してショップに持ち込むと工賃が安く済んで助かるのだ。

 走りながらあれこれチェックする。

 異音の類は無い。
 車体のフレも皆無。

 驚いたのは、去年の北海道ツーリング前あたりから出ていたハンドルのブレが綺麗に消えていた事だ。
 80~100km/h程度の速度で手放しすると、(V魔ほどではないが)ぷるぷると震えていたハンドル。
 この現象が見事になくなっていたのだ。

 もちろん新品タイヤのおかげ(古いタイヤが原因だった)かもしれないが、この現象が出始めた頃もタイヤが減っていたわけではないのだが。

 60km程走るが問題は何もなし。
 実に気持ちよく走ることができた。

 「元のベアリングもそんなに劣化しているようには見えなかったけれど、こうしてみると交換したのはやはり正解かもしれないねぇ・・・」

 高速域でのチェックはまた後で。
 
 以前感じた高速道路での「路面の状態に左右されやすくなった気がする」について確認してみようと思っている。
 

 



Copyright 2007 Akira
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