SUZUKI GSX1300R 隼

☆ メンテナンス編 ☆

リアサスペンション交換記

あれ?金色じゃない・・・

 続・足回りシリーズ   インプレッション 


<2007年3月>

続・足回りシリーズ

 リアサスペンションを交換する。

 買って7年、総走行距離4万。
 そろそろ隼の足回りを一通り見直して…(以下繰り返しになるので略)

 さて、隼のリアサス交換といえば、当然のようにオーリンズ・・・ではない。

 「だって16万ですよ16万!オーリンズの新品買うと16万円以上かかるんですよっ!
 V魔のクラッチスプリング5千円を買うかどうか三日三晩悩んだ俺にどうやればそんな費用が出せるって言うんですかっ!」

 一人で憤っても仕方ないのだが、ともかくオーリンズは買うことができない。
 もちろんホワイトパワーもクワンタムもワークスパフォーマンスも同様である。
 

 というわけで、今回購入したのは純正品
 嘘か真か、'06式隼から新車取り外ししたという能書きの一品だ。
#ちなみに入手価格はオーリンズの1/10以下。
 

<余談>

 巷の噂では、隼は年式によってノーマルサスペンションのセッティングが大分変っているという。

 うちの初期型'99式は、とにかく固いので有名だった。
 
 「300km/h走行に負けないように」と気合が入ったせいなのかどうか、並みの日本人の体格(体重)では跳ねて仕方がないといわれたものだ。

 '99→'00→'01と年式が進むうちに次第に柔らかくなったと称される純正リアサスペンション。
 
 その乗りやいかに・・・というか、今回は新車同様になればそれで充分なのだけれど。
 

 ★

作業開始
 
 某日朝、いそいそと交換作業に入る。

 まずはシートを外してリアカウルを取っ払う。
 「あ、またカウル留めるビスが何本か飛んでやがる。予備あったかな・・・」

 インナーフェンダーはとりあえずそのまま。
 傷が付くと大変なのでプチプチマットで保護してやろう。

 バッテリーを外してフェンダーとロワディヒューザを外せば準備完了だ。


とりあえず丸裸にしてみました
 

 さて、それではリアサスのボルトを緩めよう。
#とりあえず緩めるだけにしておいて外すのは後で…というのはブレーキローターボルトフォークトップボルトと一緒。

 リアサス関係のボルトは、まずサスペンション上部に1箇所

 下は1箇所でリンクに留められており、そのリンクはフレームとスイングアームステーの2箇所で留まっている。

 つまり都合4箇所のボルトを外す必要があるのだ。


車体右後ろから上部を覗く


車体右後ろから下部を覗く
#それにしても下回り汚れてるな・・・
 

<余談の2>

 ボルト+ナットの組み合わせの場合、まずナット側を緩める(ボルト側は空回りしないように抑えるだけ)というのは言うまでも無いお約束だ。
 
 パーツリストに載っているボルトとナットは、全てナットが車体右側になっている。(右側から取り外せるように、だと思う)
 
 だが実際は、スイングアームステーのボルト(上画像中央の○)だけ逆になっていた。何か理由があるのか、それとも単なる取り付けミスなのか…
 

 まずは上のボルトをしげしげと覗き込む。

 「メガネレンチはおろか、ラチェットレンチも入りそうに無いけどどこから……って、もしやこれは?

 隼のフレーム右側に開けられている丸い穴

 今まで何のために開いているのか不思議に思っていたのだが、ここにTレンチ(スライドハンドル&延長バー)を突っ込むと、上のナットの位置にばっちりと合うではないか!


この穴なんですけどね

 「なるほど、考えてるんだねぇ…」と感心しながら工具を突っ込みアタック開始。
 ところがこのナットが固くてどうにもならない。

 CRCを吹きかけ、叩き、なだめすかす(意味不明)がピクリともしない。
 なんでこんなに固く締まってるんだ?錆とか固着じゃなさそうだけど。

 「よぉし、そっちがその気なら…」

 スライドハンドルの倍以上の長さがあるトルクレンチに変更。
 延長バーを取り付け、その先にはKTCの6面コマをセットする。


こんな感じにどんぴしゃり

 「うははは、果たしてこれに敵うかな?」『…バキッ』

…延長バーがネジ切れました…

 そういえばこの延長バー、100円均一で買ってきた奴だった…orz

 ホームセンターへ駆け込んで、ちゃんとした(?)KTCの延長バーを購入する。
 価格は前の10倍以上。
 「くっ、こんなことなら以前のセールの時に…」


新品(左)とネジ切れ(右)
これは今後「叩き用」として使いましょ

 「さぁ、クロームバナジウム鋼の恐ろしさを存分に思い知るが良いっ!」
 
 ふんっ!と回すと、バッコン…と音を立てて緩むネジ。
 ふぅ、ちゃんとした工具って偉大だねぇ…

 やっと緩んだ1本目のナット。
 だが、下の3本のナットはこれ以上の難関だった。
 
 支えにくい場所の上に、上以上のク○トルクで締め込まれている。
 
 CRC、インパクトレンチ+コマ、そして最後はやっぱりトルクレンチ。
 
 ここには到底載せられない言葉を吐きながら(良い子の皆は真似しちゃダメだぞ!)の苦闘の末、2本は何とか外れるが、サスとリンクの接合部分のナットは最後までがんとして緩まなかった
 仕方ない、ここはサス本体を外してから考えるか・・・

 さて、ナットが緩んだところで、次はサスペンションの取り外しだ。

 当然だが、リアサスを外すためにはスイングアームをフリーにする必要がある。
 つまりいつも使っている(スイングアームを支えている)レーシングスタンドでは外せないのだ。

 対処方法はいくつかある。

 オフ車なら、車体の下にビールケースを突っ込むとか、ステップにウマをかけるとか。
 大型車の場合、ライコランドのピットではフレームにパンタジャッキをかけていた。
 昔からある「タイヤとシートレールの間にパンタジャッキをかまして強引に間を作る」というのも面白そう。

 もちろんいずれかの方法でもいいのだが、今回は「脚立吊り上げ方式」でやってみよう。
#「やってみよう」というか「やってみたかった」が正解。

 車体を跨いで脚立を立てる。
 レーシングスタンドで車体を上げる。
 フレーム中央にタイダウンベルトを(安全を考えて2本ずつ)かけて、脚立にかける。
 そのままスタンドを下ろせば…
…ほぉら、ちゃんと車体が浮きました。


くれぐれも脚立の耐過重を計算のこと


<余談の3>

 梃子の原理を考えると、フレーム中央でなくシートレールにかけるほうが効率がいいのだろうが、うちの'99式はシートレールがアルミ製だ。(後の型は鉄製)
 
 変に力が加わり曲がると泣くに泣けないので、今回はあえてメインフレームに掛けてみた。
 

 ところで、完全にリアホイール(スイングアーム)が浮いてしまうと、今度は「伸び」側に力が働いてしまい、これまたサスが外しにくくなる

 浮いたリアタイヤの下に電話帳を挟んで調整する。
 「サスペンションが伸びきり、かつ力が加わっていない状態」
 このあたりの調整がなかなか難しいのだ。

 このおかげか、緩めておいたナットを外しボルトを打ち抜いたら、さほどの衝撃もなくリアサス(リンク付き)はフリーになってくれた。

 「やれやれ、ここまでにするだけで大騒ぎだぜぃ・・・」
#そう、「ここまで」でね…

 自由になったリアサス(と、リンク)を眺めながら、さて、どうやって抜こうかと考える。

 サブタンクの大きさを考えると、下には抜けそうに無い。
 それではと上に抜こうとすると・・・「がぁっ!なんで引っかかるんだよっ!」
 
 微妙に接触するスイングアームとバッテリー用のステー

 純正なのになんでこんなにぶつかるんだろ?

 あれこれひねくりまわしてやっとのことで引き抜きに成功。
 でも抜くのがこれだけ大変ってことは入れるときにも相当苦労しそうだな…


やっと抜けてくれました


やっぱ汚れてるものですねぇ・・・

 やれやれと、外したリンク付きリアサスを持って作業台へ。
 
 反対側のボルトを万力に固定すれば、さすがの「最後のナット」も根を上げた。

 これでやっとサスとリンクの分離に成功だ。


強引ですが、とにかく外れればいいんです
#ナットは既に死んでる(ナメてる)し

 リンクは、3箇所のカラーとベアリングを清掃&グリスアップする。

 中はローラーベアリング
 古いグリスを拭って、新しいグリスを指で押し込んでやる。

 カラーを入れてはみ出たグリスはホコリを呼ぶのでふき取って…

 よし、これでリンクはOKだ。


ローラーベアリングとカラー
 

清掃&グリスアップ完了
 

 ようやくここから「組み込み」の作業になる。

 購入したサスは、見た目本当に「新同」といった感じ。
 せっかくなのでインナーロッドとパンプラバーにはシリコンオイルを薄く塗っておく。


本当に「新車取り外し」っぽい感じです。

 新しいサスとリンクを元通り組み合わせる。

 外す時最後まで抵抗したナットはナメているので、新サスのおまけボルトに交換だ。

 さて、それでは車体へ組み込もう。

 外した時と同じようにサスを入れようとするが、やはりスイングアームに干渉して入らない。
 「おっかしいよなぁ…純正なんだけどなぁ…って、あ、そうか

 ボルト穴の位置をあわせようとぎりぎりの高さにしていたスイングアーム。
 これを一旦下げてやれば角度が付いて入れやすくなるじゃないだろうか。

※説明のイラストを書こうと思ったんですが挫折しました。orz

 タイヤ下に敷いていた電話帳を外して、スイングアームにたっぷりと角度が付けば・・・ほぉら、すんなり入りました

 「頭は使うためにあるんだねぇ…」と考えながら、サスとリンクにボルトを差し込んでいく。

 ボルトは反対側(左側)から差し込むので、位置決めに手間を食う。
 2人で作業すればあっという間なんだろうけど、一人だと手が届かないんだよな・・・


やっと収まってくれました


<余談の4>

 そういえばリンクとは異なり、リアサス上部のボルト穴にはベアリングもカラーも付いていなかった。

 ということは単純な固定という事になる。

 って事は、サス本体は動作中でも動かない(伸び縮みするだけ)なのだろうか?
 
 2本サス(というかリンクなしサス)の場合、構造上、伸び縮みの際には若干ではあるがサス本体も前後に振れる。

 この為、取り付け部(ピボット)への給脂が不可欠で、ここが固着すると動作自体へも影響が出るのだ。

 リンク付きだとそういった心配はないのだろうか?
 リンク比とかできっちり計算されているのかな?

#まぁその為のリンク式なのかも。
 

 3箇所の仮留め(サス~リンク間は本締め済み)が完了したらもう一度スタンドを立て、タイダウンベルトと脚立を外す。
 
 スタンドを外して軽くリアサスをスイングさせて馴染ませる

 動きは…お、なかなかいいんじゃない?

 もう一度レーシングスタンドで車体を立て、ボルトを本締め。
 元のトルクがあれだけ掛かっていたので、トルク管理は適当で大丈夫だろう。

 後は、フェンダー付けてバッテリーとコンピュータ付けてリア周りの配線してリアカウル戻して・・・ああ、もう夕方かよっ!
 

<余談の5>

 うちのコワース製フェンダレスキットだが、オーリンズサス(社外サス全般か?)とは相性が悪いらしい。

 サブタンク等が接触して取り付けられず、一部フェンダーを加工(切断)する必要があるらしいのだ。

 ま、純正サスの俺には関係のない話だけどね。
 

 日がとっぷりと暮れてしまったので、サスの慣らし(一応「新車外し」なので)とインプレはまた後日。

 「跨いだ感じ、動きは良いんだけどちょい硬い気がするな。まずはセッティングを前のサスと同じにしてみようか。」
 

<余談の6>

 作業は実質だけでも6時間かかった。

 しかもそれなりの工具がないと相当に苦労するはず。

 一人でやると手が届かなくて、時々奇声を発してしまう。

 中腰作業を強いられる為、腰にかなりのダメージあり。

 もしこのレポートを読んで「自分でやろうかな?」と考えた人がいたとしたらこうアドバイスしたい。

 「悪い事は言わないからバイクさんにお願いしましょう」(笑)

#あ、俺?俺はもう手順判ったし、締め付けトルクも加減しといたし、道具も揃ったし…
 

 


<2007年4月>

インプレッション

 某日、テスト走行という名の桜見物に出かけてみる。

 スタート時にするりと前に出る感じは、前回のベアリング交換時と同じ。
 「足回りの抵抗が減っている」ように感じられる気がするのはプラシーボだろうか?(笑)

 リアサスの動きは良い

 確かに、今は慣らしの意味をこめてちょい柔らかめにセットアップしてはあるのだが、それ以上に「しっとり感」が感じられる。
 
 誤解を恐れず言えば、「シートに座布団を敷いた感じ」
 それでいてリアタイヤの接地感が薄れていないのは悪くないと思う。

 あえてアスファルトの荒れた道路を走ってみる。
 
 うん、悪くない。

 以前はコンコン叩かれるように感じたものだが、今日はまったく問題なしだ。
 純正とはいえ、やはり新品同様のサスペンションというのはたいしたものである。

 ただ、リアが動くようになった分、フロントの動きが気になるようになった。
 ギャップ乗り越え時のコツコツとした感じはダンピング不足かな?

 そういえばこちら(フロント)は前回オイル交換してから放りっぱなし。またメンテしてやらなければいけないだろう。
 さて、前回同様オイル交換だけにするか、それともOHまでするか・・・

#さすがにこれは自分じゃできないしなぁ・・・


もちろん桜も綺麗でしたよ

 



Copyright 2007 Akira
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