<第三話>
「再度の病に」
2005/5/2
テントから出ると、空は見事な快晴である。
昨夜の暴風と雨は何処へやら、真っ青な空に穏やかな海風が吹き渡る。よぉし、今日は絶好のツーリング日和になるぞぉ…
ゆっくりと朝のコーヒーを楽しん後、ざっくりと荷物をまとめ、雨具の類をテント上に干す。
今日はこれは使わなくて済みそうだし、飛ばないように縛った上で干したままにしておいてもよさそうだ。
起きだしてきたにょろさんと今日の打合せ。
昨日の俺のルートで能登半島を一周してくるというにょろさん、んじゃ俺は西へ回って東尋坊あたりへ出かけるとしましょうか。
この後衝撃の事実が…
一晩雨風に晒されていたMAXをざっと拭いて荷物を積み込み、さぁ行くぞとエンジンを…
きゅるきゅるきゅる・きゅるきゅるきゅる・・・
★
むむ、エンジンがかからない。しかもとても嫌な雰囲気がする。
セルに優しいロングクランキングを試すこと数回。
しかし、むなしくセルの回る音が響くだけだ。(再)
失火なり、カブりなりなら、なにかしら「そんな雰囲気」が感じられるものだが、何故かまったく火の入る気配がない。(再)
腕組みをして考え込む。(再)
セルは元気良く回っている。スタータークラッチも滑っていないし、クランクもしっかりと回っている。(再)
念の為にと先端をヘッドに触れさせての点火チェック、すると…(再)
うわ、火花が飛んでないや。(再)
「まさか?」と他のプラグをチェックする。(再)
全滅である。(再)
・昨日までは無問題。
・セルは回れどエンジンかからず。
・プラグ4本に火花が飛ばない
ううむ、これは3年前の九州ツーリングとまったく同じ状況ではないか!
※文中「(再)」の表記のある部分は、九州ツーレポのコピーです。
散々な目にあった3年前のツーリング。
二度とそんな目に会わぬよう、電装系には特に気を使ってメンテしてきたつもりである。それでもこの現象か…
★
「またかよ…」と考え込む俺の元へにょろさんが現れる。
状況を説明すると、接触不良の可能性もあるので接点復活剤を買ってきてくれると言う。
ここはご好意に甘えてお願いするとしよう。
ホームセンターへと向かうX4を見送った後は・・・さて、バラすとするか。
お馴染みのV魔外装バラしを敢行。
アレ以来「万が一の時の為に」と常備するようになったメガネレンチのありがたみを思い知る。
またこんな姿にしてしまいました
全ヒューズのOKを確認。
戻ったにょろさんから接点復活剤を受け取り、各コネクタの磨きを開始。
メイン電源、キルスイッチ系、セルモーター系、燃料ポンプ系は正常動作しているようだが、念のため、外して磨いて復活剤を吹いて付け直す。
特に浸水しているような箇所は見受けられない。ただ、意外なところにまで細かい砂が入り込んでいる。その原因が昨日の千里浜なのか昨夜の海風なのかは不明である。
快晴の空から暖かい日差しが照りつける。
潮風が心地よい。
のどかな音を立てて走り行く列車。
あ~、なんで俺はこんなところでバイクをバラしているんだろう・・・
★
正午、状況変わらず。
心配して予定を変更し、付き合ってくれているにょろさんとともに飯を食う。
「あそこ見たしこれも見たし・・・」思い当たるといえば、やはり、3年前同様ピックアップ(ステータ?)のみ。
もしまたあれが壊れたのなら、パーツ交換しないとどうにもならないんだけどな・・・
午後、3年前同様名古屋のビーパスのご主人にTEL。
状況を説明するとやはり「前と同じかもねぇ・・・」との事。ううむ、そうですよねぇ・・・
※お忙しい中ありがとうございました
あきらめきれずごそごそバイクをいじっていると、にょろさんがツテを辿り、このあたりのバイクショップを探してくれたという。
をを、それはすいません。どうなるかわからないけどとりあえず連絡してみましょうか。
教えられたショップにTEL。
状況を説明すると、「見て見ないとなんとも」との事。そりゃまぁそうですね。
しかしさすがは地元、店の終わった夜ならキャンプ場まで引き取りに来る事も可能だというので、夕刻あらためて返事をすることにする。
★
夕方、にょろさんの友人タツヤさん(&友人さん)登場。
先のショップはタツヤさんがらみで探してくれたらしい。
それはそれはとお礼&お近づきのしるしにナンシーバッヂをプレゼントする。
ゆっくりと日が傾き、周囲が薄暗くなる。
とりあえず外装を戻したV魔を眺める。
3年前の時には一度復活したんだよな・・・とエンジンを・・・
きゅぼっ、ぼぼぼぼぼぼ。
ををっ!かかったかかった・・・!
小躍りの後、周囲を一回り。
エンジン絶好調、低速取りまわし問題なし。先のトラブルって何?というほど快調である。
しかし、よかったよかった…と単純に浮かれるわけにはいかないのは前回の件かあるから。
これで直ったという保証はない、前も1度は復活したのだから。
とりあえずショップに再度連絡、最終決定を少しだけ待ってもらう。
★
さて、どちらにしても、この状況ではツーリングは続けられないだろう。
幸いにして第一目的にしていた千里浜は制覇したし、能登半島も一周した。今回はこのまま帰ってもさほど悔しい事はない。
荷物を整理し、テントを畳み、パッキングする。
撤収、とにかくもう撤収
これから先の手は2とおりである。
1.博打覚悟でこのまま自宅へ向かう。
※途中で止まったら「負け」
2.ショップにマックスを預け、電車で帰る。
※バイクの引き取りはどうする?
さて、どうしようかと考えながら再度マックスのエンジンを・・・
きゅるきゅるきゅる・きゅるきゅるきゅる・・・
状況再発(再)
というわけで、先の選択は2.に決定する。今後復活しても1.ではリスクが高すぎるからだ。
先のショップへ連絡し、引取りを依頼。
夜、迎えに来てくれたショップのトラックにMAXと用品一式を積み込み、キャンプ場を後にする。
にょろさん、せっかくツーリング日和だったのに、1日無駄にさせてごめんねぇ…
「電車で帰る」と開き直ってしまえば、後は結構気楽なものである。
V魔を積んだトラック内で、ショップの方から新型V魔の話題、MT-01の販売状況など興味深い話をお聞きする。う~む、なるほどねぇ…
MAXはショップへ、俺はあらかじめ予約しておいたホテルへと送って頂く。
ちなみに俺の服装はといえば、画像のとおりGパン&皮ジャン。持ち物はとりあえずの着替え一式が入ったバッグのみ。
う~む、ホテルのフロントに立っていると、きっと怪しい奴に見えたに違いない。
夜はひっそりとコンビニ弁当。
ビールを流し込んで、早めにベッドへ入ってしまう。やれやれ・・・
★
時間調整にネットカフェへ入り、諸々の手配を済ませる。
ん~もう少し時間があるな、んじゃジオブリとベルセルクでも…
新しい鎧を付けたガッツの今後を気にしながらネットカフェを出る。
今日も昨日同様快晴である。青い空が目に眩しい。あ~、にょろさん今頃何処走ってるのかねぇ・・・
★
単線のローカル線で富山まで出る。
何も土産を買っていなかったことを思い出し、慌てて駅のキオスクでホタルイカの沖漬けを買う。
北陸本線特急で越後湯沢。
北アルプスの山々を眺めながら駅弁を食う。ちょいシーズン外れだがカニメシが美味い。
世界の車窓から・・・ ま、カニでも食いましょう
越後湯沢からは新幹線。大宮まで出ればあとは東北(宇都宮)線1本だ。
いやぁ、電車ってのもたまにはいいもんだねぇ…(←負け惜しみ)
★
というわけで、残念なことに今回の能登半島ツーリングは途中で終了となった。
MAXは富山のショップで修理中。
原因の最終判断はまだだが、電気系なのは間違いない。
今後、入念に原因を探る必要があるだろう。
ところで、現象・原因以外にも3年前と共通する点は多い。
・前日まで一人なのに、当日だけは同行する友人あり。しかもその友人の予定を1日つぶしてしまう。
・「千里」という名前のついた場所に行った後。
そうか、千里か。
よぉし、来年のGWツーリングは、他の「千里」という場所を探して行ってみるとするかぁ!
※求む同行者(笑)