■ んじゃま、やっつけましょうか
最近、「なんとなくトルクが減ってきたかな?」と思うようになったセロー。
そして、高回転を継続すると妙に多く吐き出されるブローバイガス。
走行距離(35000kmオーバー)を考えるとエンジン内部の劣化があってもおかしくない。一度開けてピストンリングだけでも交換してやることにしよう。
※ピストン、シリンダをどうするかは一度目視してからということで。
ところで俺、散々偉そうなこと書いている割に、4ストエンジンは開けるの初めてだったりするんだよね(笑)
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準備した資料(というか持っているもの)はこちら↓
■純正整備マニュアル(本版+補填版2冊:W用、WE用)
■セローマスターブック
■パーツリストを印刷したもの
もちろん各パーツも手配。
基本的にはピストンリング(セット)とガスケットの類。あとはゴム系の各種Oリングだ。
それではと作業開始。
※今回はエンジンを開ける前にオイルのフラッシングもしてみた。ま、例の「ゴミが多い」への気休め対応ということで。
パキパキと外装を外す。
フレーム周りのホコリ(泥)を落とす。整備中にエンジンにゴミが入ったら大変だ。
よっこいしょとキャブを外す。これはいつもどおり。
どっこらせとマフラーも外す。この前交換したばかりのガスケットは再利用の予定。(←排気漏れしたら交換ということで)
さぁて、ここから先が未知の領域だ。
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まずクランクケース左側中心にあるカバーとその上の覗き窓のカバーを外す…って、これがなかなか外れない。
樹脂製のカバーで溝(切り欠き)が大きいので、普通のドライバーでは回らないのだ。
仕方なく大きめのワッシャをバイスクリップで挟んでドライバー代わりにする。
この手のボルトって時々見かけるけど、いったいどうやって外すのが正統派なんだろうか?
#マニュアルにも書いてないんだよな。もしかして10円玉とかか?
この部分なんですが
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カムチェーンカバーを外す。いつぞや交換したOリングはまだまだ大丈夫そう。
では現状のカムタイミングを確認しよう。
クランクに17mmのコマのTレンチをかけて、覗き窓に合いマークが出るまで反時計回り(左回り)に回す。
この時、カムスプロケットの合いマークがケースのマークと合うことを確認…って、今のこれ合ってるのかな?
こうなったときに…
合いマークが頂上に
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確かにカムスプロケットのマーク「2LN」が一番上になるあたりで覗き窓に印が現れるのだが、その印が何故か3本ある。
そして現状では、3本目(一番右側)の線あたりでカムスプロケが頂上にくる。
試しに一番左側の線に合わせるスプロケは微妙に右を向く。その差1コマくらい。
「むー、どれが正解なんだろ?ま、今でも調子悪くないし、組む時にも今のとおりにするけどさ」
現状を示すセンスの無いイメージ図
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今のこの位置が「イン、アウトの両バルブが閉じている状態≒圧縮・爆発時期」のはず。
ピストン的にはいわゆる「上死点」になる。
※ピストンは最圧縮時以外に排気の時にも上死点になる。吸入→圧縮→爆発→排気って奴ですな。
シリンダ脇にあり、カムチェーンの弛みをとっている「カムチェーンテンショナ」を外す。
へぇ、オートテンショナってこういう仕組みになってるんだ・・・
カムチェーンテンショナ
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テンショナを外すとチェーンが緩む。
次はスプロケのボルト。クランクにかけたTレンチを固定し、ボルトをメガネレンチで緩める。「うひゃー、硬い硬い」
パキンと音を立てて緩んだボルトを外す前にまずは安全策。
チェーンに針金を掛けておく。チェーンが誤ってクランクケース内に落ちてしまうと拾う(?)のが大変らしいのだ。
保険みたいなものです
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ボルトを抜き、チェーンを外し、これまた落とさないよう注意しながらスプロケットを抜く。よし、成功。
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次、シリンダヘッドの取り外し。
ヘッドサイド。シリンダとの接合部のボルト2本を抜く。
この手のボルトを緩める順番は「中心から離れているor細い方から」が基本らしい。もちろん締める時は逆になる。
昨日から掛けておいた浸透潤滑剤は、いつものCRC556ではなくWAKO'Sのラスペネ。
ははは、初の4スト腰上OHだから贅沢しちまったぜい。
次はメインのボルト4本
「固着してたら嫌だな…」とびくびくしていたのがTレンチですんなりと緩む。
正直拍子抜け。程度が良かったのか、それともラスペネの威力なのか。
対角線上の順番で緩めていき、抜く。
しっかしこんな長いボルト、固着してたら抜くの大変だろうなぁ。
そりゃまぁ上から下まで貫通してますから
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ボルトを全部外し、ゴムハンマーでぽかんと叩いたらシリンダヘッドが浮き上がった。
あ、こんな簡単に離れるんだ。
ヘッドをそぉっと外し、作業台へ。
イン側とアウト側のカムカバーを外し、中のオイルを出してからひっくり返す。
これで燃焼室とご対面。付いたカーボンの量は……それほどでもないか?
濡れているように見えるのはラスペネとエンジンオイルです
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接合面のガスケットは綺麗に剥がれてくれた。
これも心配していた部分だけに簡単すぎて拍子抜けだ。
エンジン側に現れたのがピストンヘッド。(上死点位置なのでシリンダヘッドとほぼ面一)こちらには結構カーボンが付いているようだ。
濡れているように見えるのは(略)
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これまたサイドにあるボルト2本を外して、シリンダにまたまたゴムハンマー
こちらもすぐに浮いてくれた。
そーっとシリンダを抜き、作業台へ。
残ったピストンの根元、クランクケースに開いた穴へはウエスを突っ込む。中にゴミとか落ちたら大変だ。
シリンダです
これはウエスでふさぐ前
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これで分解は完了。
さて、それではいろいろと見ていこうか。
まずはピストン。
先に書いたとおり真っ黒で、特に排気側にカーボンが多い。
マイナスドライバーでコリコリと落としていく。
傷を付けないように、そしてカスがクランクケースに落ちないように注意必要。
これを・・・
こんな風に(まだ作業途中)
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ピストンサイドに傷はなく、吹き抜けとかは無さそう。
ただよくよく見ると、ピストン上端と一番上のオイルリングの間に何箇所か縦に傷が走っている。
これ、普通なのかな?それとも何かトラブルの跡?むー、よくわからん。
こんな感じなんですが
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次はシリンダ
内壁にクロスパッチは…微かに残っているようないないような。
※クロスハッチ=オイルが付くようにわざと付けられているバッテン状の傷
そして気になるのが、シリンダ下部に付いていたオイルリングの跡。
指で触ると明らかに段差が感じられる。なんだこれ?固着でもしてたのか?
画像じゃわからないよなぁ
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ピストンの下死点あたりの位置なので動きには影響なさそうだけど、本当ならこれ、きっとボーリングかシリンダ交換が必要な状況なんだろうな…
※こういうのって紙やすりとかで削ってしまても良いものなんだろうか?
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次は燃焼室。
先に書いたとおりカーボンは少なめ…かな?(自信なし)
こちらはピストンと違い、下手に弄ってバルブシート(の当たり面)とかに傷をつけると泣くになけない状態になる。
端のカーボンをコリコリ落とす程度にしておこう。それにほら、多少のカーボンは圧縮比アップになるって言うし(そうか?)
ウェブで調べると、「225セローは給排気ポート周りを削ると効率アップ!」と書いているところが多かった。
だが今回はあえて触らない事にする。
素人メンテの基本は「悪くないところは弄らない」だからだ。
※「次回のお楽しみ」という意味もあったりする(笑)
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さて観察が済んだら、今回の目的、ピストンリングを交換しよう。
古いリングを上から順に外していく。
切り欠き部の片側からぐるり回すように外していく。無理すると折れるので注意。
まぁ外すのだから折れてもいいのだけれど、入れるときのコツを覚える為にも慎重に作業してみたりする。
トップリング、セカンドリング、オイルリングとその上下にアッパー、ロワーリング
計5本のリングを外す。
マニュアルには「トップとセカンドリングはマークの側を上にしてセットする」とあったのだが、外したトップリングにはマークが付いていなかった。
※セカンドには片面に「RN]というマークがあった。
どちらでもいいのかな?新しいリングはどうだろう?
新しいピストンリングのセットを取り出す。
確認するが、こちらのトップリングにもマークが無い。
「セローマスターブック」をぺらぺらめくると「マークがあるのは形状に違いのあるセカンドのみ」の記述があって一安心する。
別のページには「トップとセカンドに…」という矛盾した記述もあるのだけれどね。
リングはセットで売られてます
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新しいリングを下側から順にセットする。
オイルリングだけは「センターのリングを入れてからロワー、トップの順」との指示。
なるほど、確かにリングの形状を考えるとその方が効率的かも。
その後、セカンド、トップの順にセット完了。
もちろん、エンジンオイルを塗りながらの作業であるのはいうまでもない。
そしてまたセンスの(略)
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以上5枚のリングには、セット後、切り欠きの位置をピストン上のどの辺りに持っていくかの指定がある。
基本的には重ならなければ(同じ位置にならなければ)大丈夫なはずだが、念のためマニュアルのとおりの場所までリングを回しておこう。
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さあて、それでは組みますか。
クランクケースとシリンダ、シリンダとシリンダヘッドの各接合面。
古いガスケットは綺麗に剥がれたが、念の為スクレッパー代わりのカッターの歯で整えてやる。
更にオイルストーンで面出し。ふき取りはパーツクリーナーで入念に脱脂。
後でこの辺りからオイル漏れすると直すの大変だからねぇ。
新ガスケットにはごく薄く液体パッキン(シリコン製)を塗る。
これはまぁ保険と言うことで。
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まずはシリンダの組み立て。
シリンダには先のカムチェーンを通しておく。(保険の針金も継続中)
クランクケースとの間にはダウエルピンというものを挟んでズレを防止している。
このピンを落とさないようにシリンダを組み……うわーい!
ピンがクランクケースに落ちましたとさ。orz
ヤバイヤバイとハンディライトで中を照らす。
あ、あったあった。100均ショップで買った磁石棒をそーっと突っ込むとカチンと張り付いた。ふいー、危なかった…。
※ダウエルピンは落ちないように下側のパーツに上向きに付けましょう。(←基本です)
ヤバいヤバい
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ダウエルピンの他に、間に挟むOリングもあるので忘れないよう注意する事。
シリンダ内壁には薄くエンジンオイルを塗ってある。
ピストンリングを縮めながらピストンをシリンダに押し込んでいく。
そのままクランクケース上にセット。きっちりハマったのを確認したら、Tレンチでクランクを回し、ピストンを馴染ませながらゴムハンマーでコンコン叩いて微調整。うん、いいんじゃないでしょうか。
サイドのボルト2本で仮留めをする。
シリンダヘッドを乗せる手順も同様。
カムチェーンを通すのもこれまた同様。
はっはっは、ダウエルピンではもう失敗はしないぜ!
#というか、シリンダ入れちゃったんで落とすところ無いけどな。
ヘッドも同じようにサイド2本で仮固定。
メインの4本ボルトはこれまた基本、対角線状に締め込んでいく。
締め付けトルクはインチキトルクレンチを使っての指定2.0kgだ。
締まったら、先に仮留めした計4本のボルトを本締め。これで固定は完了となる。
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カムチェーンを落とさないよう注意しながらカムスプロケットにかけ、外したとき同様上死点位置を合わせてボルト留め。
オートテンショナーを付けようとして、マイナスドライバーが長すぎてフレームに引っかかって入らないことに気づく。
※ドライバーでテンショナーを回し、縮めた状態でセットする必要がある。
「ええい面倒だ、切り落としてやるわっ!」
むー、こうやって自作特殊工具が増えていくんだな…(それほどのものじゃありません)
グラインダーで切りました
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カムチェーンカバー付けて、シリンダヘッドのカム部にエンジンオイルかけて、カムカバー取り付けて。
※IN側カバーの上下に注意。
一旦バラして組みなおしたキャブ(前回までのメンテでナメかけたボルト交換&Oリング類を新品に)を取り付けて。
タンク付けて燃料パイプ繋いでマフラー取り付けたら……「よーし、これで動くはずだぞー!」
深呼吸してからもう一度指差し確認。余りパーツなし。
どきどきしながら燃料コックオン。
数秒待ってキーオン、ニュートラル確認。
セルオン。
数秒のクランキングで……エンジン始動!
パラパラといういつもの排気音に「やったー、動いたぁ!」……と喜んでいたのだが
……「あれ?」
#↑続くのかよっ!