■YAMAHA VMAX 1700 (VMX17) メンテナンス編

 

クラッチ・フリクションプレート交換記

VMAX1700 クラッチ・フリクションプレート交換
やっぱりマニュアルは必須ですね

 確認   交換 NEW

 

 

garage Ak!rA

 

<2016年3月> 確認

そろそろ距離が距離ですから

 「クラッチプレートとフリクションプレートを交換…しようかな?」 (なんじゃそりゃ)

 購入後7年弱経ったVMAX1700。
 総走行距離も56,000kmを越えたけれど、劣化・古くなったように見えるところが全然無い
 まったく、どうなってんだこの車両は。(喜)

 それでもさすがに交換が必要な消耗品がぽつぽつと出はじめた。
 例えばこのクラッチ・フリクションプレートだ。

 街中や峠ではまったく問題ないのだけれど、BLOGにも書いたとおり、最近、5速5000rpm辺りで巡航中からスロットルを「カツン開け」すると回転が8000辺りまで一気に上がるようになった。

 つまりクラッチが滑っているのだろう。何度か書いているとおり、クラッチの劣化は高いギア・高回転域から症状がでてくるものだから。

 普通に走っている分には問題ないので交換はまだ早い気もするのだけれど、いずれは作業しなきゃいけないわけだし、5万km以上持った=これから5万kmは大丈夫と考えればもったいないという事はないはずだ。


 某日、確認作業開始。

 「確認」というのは、もちろんプレートの状態の確認なのだけれど、減っているかどうかとは別に現状どんなプレートが入っているのかの確認をしておきたかった。

 実は、VMAXのクラッチプレートは3種類存在する。

 標準のT2.0(厚さ2.0mm)の他にT1.6T2.6があり、9枚あるプレートのうち外側2枚に選択できるようになっている。

 このサイズ違いのプレート、公式・マニュアル的には「トータルでの厚み修正用」らしいのだけれど、天下のヤマハ純正パーツに0.1mmレベルの誤差があるとも思えない。

 個人的に、国内用151PSと海外200PS仕様でのクラッチ圧力の差、あるいは(通常は変更不可能の)油圧クラッチのミーティングポイントの調整なんて意味があるのではないかと疑っているのだけれど。
#さあどうだかねぇ?

 えっちらおっちらVMAXをガレージ中央に移動し、サイドスタンドを立てる。

 VMAX1700も先代1200同様、サイドスタンド状態でならエンジンオイルを抜かずにクラッチ板交換ができるのだ。
 前回オイルを交換してからさほど経っていないのでこれはありがたい限り。
#そして失敗してやり直す時にも便利。(←言霊注意)


んじゃ開けますかね

 まずは邪魔になるブレーキペダルを外す。
 取り付けボルトがちょい首を振っていたのは、前回取り付けた時オーバートルクをかけたのかも。
※オイルポンプリコールの時?

 クラッチカバー(ケース)はボルトを対角線上に外すのみでOK。トルクはさほどでもなし。
 ボルトは長短2種類あるが、入るところにしか入らないので分類は不要。

 ケースには打ち出し用の耳(?)も付けられていたが、全体をゴムハンマーでコンコンやったらずぼっと取れた。
 ガスケットも綺麗に剥がれて一安心。


耳。奥にも内側ケース用の奴が。


ご対面

 クラッチスプリングプレートの押さえボルトも対角線上に少しずつ緩めて抜く。

 クラッチスプリングは先代同様板状の奴。
 先代MAXではこれの劣化(?)に気づかずずいぶん遠回りをした。なので今回はこれも交換してしまおう。
※しかし1200(の作業時)と今の1700で価格がさほど違わないっての凄いよな。

 せっかくなので確認作業。
 定盤代わりの手鏡の上にクラッチスプリングを置いてみる、ガタは無し。


拡大鏡じゃ駄目ですよ

 本当は高さも測りたいのだけれど、うちのノギスではその手の測定はできないので略。
 まぁ交換は確定しているので新品が来たらそれと比較すればいいだろう。

 プレッシャープレートを外して、クラッチ・フリクションプレートの確認にとりかかる。

 1番外側のフリクションプレートはその内側と角度がズラされていた。これはマニュアルどおり。


1枚目2枚目以降とずらされてセット

 外して測ると、厚みは3.0mmをきるかどうかという辺り。
 基準が2.92~3.08mmだから充分に許容範囲に思える。

 ノギスでの簡易測定だから誤差はあるだろうけれど、「うー、交換するにはもったいない厚さだなぁ、焼けてる様子もないしなぁ…」(貧乏性)


見た目もごく綺麗

 その内側、最初のクラッチプレート。

 こちらもノギスで厚さを測定、すると「2.5mmを超えて…って、これT2.6じゃねぇかよ!
 そう、うちのVMAX、先の3種類のクラッチプレートでの厚さ調整が入っていましたとさ。

 「新プレートを発注する前に確認して良かったんだけれど、入ってる理由はなんだろうなぁ…ホントに調整なのかなぁ…」


右側がT2.6で、表面はフラット
左側がT2.0で、表面にはありがちなポンチ模様が

 内側へ1枚ずつ外していき、全てのクラッチプレート、フリクションプレートを確認する。

 全体的に状態良好、減りは僅か。
 やっぱり全部交換するにはもったいないかも。でもまぁ実際に滑りの現象がでてるわけだし。

俺メモ:
・クラッチプレートはやはり「角の丸い側」が「内側」(例外なし)

 ここで気づく、フリクションプレートの耳に(くぼみとは別の)ピンクの怪しいマーキングがしてあるのだ。


消えかけですけれど

 装着時にこのマーキングで揃えられていたのかな?とも思ったのだけれど、以下は俺の勝手な想像ということで。

→フリクションプレートは1枚ごとに発注できる。
→セットではないので、揃える(トータルの厚みを均一化する)ためのマーキングは不可能。
→1枚ごとにチェックのマーキングとすると、一番厚い部分か薄い部分?
→ならトータルで均一化するにはこれはズラすべき?

…というわけで、これから発注する新品に同様のマーキングがあった場合には全部ズラしてセットすることにした。


ちなみにクラッチバスケットにはフリクションプレートの跡が付いていたけれど
指で触っても段差は感じられず

 マニュアルのとおり、全てのプレート(フリクション10枚+クラッチ9枚)を重ねて計った厚みは47.5mmという辺り。

 許容範囲は47.4~48.0mmなので値はOK。
 但し先のプレートで調整されているので、新品からどれくらい減っているのかは定かではない。

 そして余談なのだけれど、気になったのがバスケットの奥にセットされているスリッパークラッチのスプリングプレート。
 妙に片側に寄せられている(もしくは寄ってしまっている?)のだ。


左側に寄っていて右側にはスペースが

 これ、動くのかな?
 このパーツがトラブルで割れた事例があるらしいのだけれど、この辺りと関係していたりするのだろうか?
 そもそもスリッパークラッチの動作原理理解してないからなぁ、俺…


…というわけで、一通り確認したもののいくつか疑問・悩みが出てしまった。

 パーツの発注はどうしようか?どこまで交換するかによるのだけれど。


<2016年3月> 交換

タイトルに偽りあり

 某日、部品を発注する。

 なにをどう交換するか?についてずいぶん悩んだのだけれど、今回は「フリクションプレート10枚」「クラッチスプリング」のみ(もちろんガスケットは別腹で)とした。

 理由は、まず滑った原因がどこにあるのかを追求したくて…とかではなく、「だってクラッチ板は劣化してるように見えないンだもン!」

 厚さも見た目も手触りも(?)問題なし。

 削れるのはフリクションプレートの役割のはずだし、今のクラッチプレートにはもうちょい頑張ってもらうとしよう。
 ま、これで直らなかったらその時あらためて交換すればいいんだし。
※自分でやってるとこういう時気楽。

 発注部品の合計は17k円ちょい。クラッチプレート9枚を追加した場合はあと7k程加算になる。

 ★

 部品が届いて交換作業開始。

 やはりフリクションプレートは1枚毎に袋詰めされていた。(まぁ1枚単位で発注するので当然だけど)


いらっしゃいませ

 そしてこれらには怪しい青いマーキングが。
 先のとおり、ここをズラしてセットするとしよう。

 取り付け前には例によってどっぷりとオイル漬けにする。


やっぱり"くぼみ"とは無関係ですね


冬場はオイルが硬くてねぇ


 新品のフリクションプレートと既存のクラッチプレート(表裏注意)を交互にセットしていく。

 一番外側に厚いクラッチプレート(T2.6)を入れて、最後のフリクションプレートはマニュアルどおりズラして。

 プレッシャープレートを置いて、新品クラッチスプリングをセット。
 ボルトは対角線上にゆっくりと締めていく。

※あ、そういえば旧スプリングと比較するの忘れたわ(←駄目)
 あと、作業中は手がオイルまみれなので画像は撮れません。


最後のフリクションプレートをちゃんとズラしました、の確認画像

 新品ガスケットはオイルを塗って装着。
 推奨されない方法だけど、自己責任で再利用しやすくするためだ。

 ちなみにここのガスケット、形状がほぼ円なので、裏表&装着位置がわかりにくい
 ボルト穴の大きさと耳の位置を確認して間違わないように注意する。

 あとはクラッチカバー(ケース)をこれまた対角線上にボルト留めしていけばOK。

 作業後は周囲を綺麗に拭いておく。
 これは見た目と共に、オイル漏れした時にすぐわかるように。


作業完了?(←後述)

 さて、実は確認作業中にうっかりクラッチを握ってしまい、スカスカになってしまった(エア混入かな?)クラッチフルードの交換作業もしたりする。

 「結構汚れてる…かな?前回交換したの何時だっけ?」


そういえばこっち(左)側のカバーって外したことなかったような?

 フルード入れ替え完了。
 クラッチレバーの圧を確認したら、さて、試乗に出かけますかね。

 エンジン始動。アイドリングはいつもより長めに。

 オイルの焼ける匂いに慌てたけれど、どうやら拭き残しがあっただけの様子。
 ガスケット周りは綺麗で(今のところ)オイル漏れはなし。

 ニュートラルでクラッチレバーを握るとエンジンからの音が若干変化するから張り付きはなさそう。
 どきどきしながらクラッチを切ってギアを入れる。
※↑万一クラッチが切れていなかったらこの時車体が前に飛び出すので。

 カコンという音とともに何事もなく1速へ入る。「クラッチが切れる」はこれでOK、ふー、まずは一安心。

 んじゃ軽く近所を一回りするかと発進する。
 そして最初の一時停止でブレーキをかけて……

 『良い子のみんな!バイクは前ブレーキがメインだけど、後ブレーキも付いて無いと危ないからな!』

 ブレーキペダルを付け忘れていましたとさ。【危】

 そろそろとガレージまで戻ってブレーキペダルを取り付ける。
 まったく、こういうところが相変わらずというか一向に直らないというかお約束というか…(ぶつぶつ)


気づかないもンだなー


ちなみにペダルには合わせマークが付いてます。
(そしてこの上にカバーが付きます)


 んじゃ軽く近所を一回りするかと発進する。(再)

 シフトチェンジはいつもよりこまめに行う。
 クラッチはちゃんと切れてはいるけれど、今までよりちょい近い気がしないでもない。
 走って馴染むと変わるかな?

 5分走って自宅へと戻る。
 異音無し、オイル漏れ無し。どうやら普通の走行には問題ない様子。

 「よーし、んじゃ軽くナラしてから肝心の高回転域をチェックするか。」

 日を改めてのチェック走行。

 まずはナラシにと50km程おとなしく走っていたら、クラッチの感覚が変わってきた。

 メリハリが出たというかパキンとしてきたというか。先の繋がる位置も元どおりに近くなったような。
 「アタリが出てきたかな?んじゃここからはいつもどおりに走ってみるか。」

 普通の発進加速問題なし、頑張る系の加速(?)も大丈夫。
 まぁ半クラッチは使わず、完全に繋がってからの加速ではあるけれど。
※シフトの入りも問題なし。

 100km走ったら最後のチェック。そもそもの原因だった5速5000rpmからのカツン開け

 ガーッ、ゴーッ…(?)
 「よ~しOK。そうそう、このくらいの回転の上がりのはずだよな…」

 トータル150km走ってチェック終了。
 全て問題なし。「ふ~」


 というわけで、結果的にフリクションプレートとクラッチスプリングのみの交換でクラッチの滑りは解消できた。

 未交換のクラッチプレートとかスリッパークラッチのスプリングとかについては今後の状況次第。
 繰り返しになるけれど、自分でやっているとこういう時気楽で良い。

※そういえば新プレートでのトータルの厚みも測り忘れてしまった、失敗失敗。

 当然性能的にはなんら変わった点は無いのだけれど、なんとなく半クラッチの効く範囲が広くなったような気がしないでもない。

 これ自体は乗りやすくて○。新車の頃ってこんな感じだったっけ?(忘)




 

 

 

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