■YAMAHA VMAX 1700 (VMX17) メンテナンス編

 

フロントブレーキ・オーバーホール記

キャリパー編

フロントブレーキ・オーバーホール
4C8-25803-00 キヤリパシールキツト (フロントキャリパ、2セット)*1(後述)


 

 

garage Ak!rA

 

<2019年2月>

結構走っていますから(再)

 VMAXのフロントブレーキ周りをフルOHしてやろうと思う。

 現状、これといって気になるところはないのだけれど(急ブレーキの直後に引きずる感じがしないでもないんだよな……ぶつぶつ)去年クラッチマスターをOHしたところだし、なんといっても10年目7万キロの車両なわけだから。

 オーバーホールはフロントブレーキ全体に対して行うので、ホイール側のキャリパーハンドル側のマスタシリンダー、双方での作業となる。


<ここで要注意>

・OHなのでブレーキフルードは当然全交換になるのだけれど、VMAX1700にはABSが付いている。
・ABSシステムの内部回路にはフルードが満たされている。
・万が一、ABS内に少しでもエアが混入すると、ABS動作に不具合が出る。
・一旦エアが混入してしまう抜くことは素人には不可能。メーカーの専用吸引機で引くしかない(らしい)
・メインキーをオンすると、ABSシステムのセルフチェック(内部回路のOPEN-CLOSE)が行われる。

 つまり、
「ホース内のフルードにエアが入ってる(もしくはフルードそのものが無い)状態でキーをオンするとエラいことになるぞ!」

 ABS付きブレーキのOH時には、作業が完全に終了するまで、キーは抜いておくのが賢明なようだ。

※なので密閉されているABSシステム内のフルードはOHでは交換できないのだけれど、その後の走行(&セルフチェック)により次第に新しいフルードと入れ替わっていく……ような気がする。

 さて、それではブレーキキャリパー側から作業を始めよう。

 何故キャリパー側からかというと、OHの為にはブレーキピストンをできるだけ出しておく必要があるし、それにはフルードが入っていて、かつブレーキレバーを動作させる必要があるからだ。

※というのをセローで学びました
※※と思ってました。(後述)

 上記のとおり、ブレーキキャリパーのオーバーホールは一度セローで経験済み。

 だがあちらは片押しの2ピストンキャリパー。
 こちらは対向キャリパーで片側3ピストン、そしてWキャリパー。

 「合計でピストン総数は12個だばかやろう!(?)

 きっと面倒な作業になるんだろうなぁ……(そうそう)

 ちなみにパーツ(シール)代は2k円ちょい*2(Wキャリパー)というあたり。

 比較的お安いのかな?セローは0.9K円だったけど、片側だけでもピストン数が3倍なわけだし。


ま、やってみましょう

 作業開始。基本的な手順はセローと同様のはずだ(と思ってた)

 まず、左キャリパーを外し(ブレーキホースは付けたまま)ブレーキレバーを握ってピストンをせり出させる。
 こうしておけばピストンが抜けやすく……「あれ?」

 セローと違い、対向ピストンのVMAX。
 当然両側から出てくるのだけれど、これではピストンの抜ける隙間がとれないではないか。


それ以前にピストンプーラーをかける隙間がなくなるような

 うむむと考える……が、無いものはナイ。

 試しにと、1つにピストンプーラーを掛けたらするりと回ってくれた。うん、ならこれ、せり出さなくともピストンプーラーに全面的に頼っても抜けるんじゃないかな?

※ピストンプーラーについてとか、全面的に頼ってひどい目に遭ったとかもセロー参照ということで。


片手撮影なので角度がアレですが

 よしと覚悟を決め、ブレーキホースを外し、キャリパを完全に取り外す。
※当然フルードが漏れるので、ペットボトルで受けておく。

 6個あるピストン。片側3個を手で押しこんでスペースを確保。

 反対側の1つにピストンプーラーを掛け、回しながら引き抜き……スポン!

「おー、凄い凄い、簡単に抜けたわ!セローであんなに苦労したのが嘘みたいだわ!」

※なのでキャリパー側から作業する必要はなかったわけで。(先述の件)


でもピストンが抜けると中から出きったと思っていたフルードがどばっと流れてくるので要注意!

 残りのピストンも、さほど力を入れることなくスポンスポンと引き抜けた。

 一旦引っ込めてしまった反対側の3個も同様にすんなりと抜けてくれた。

 よし、さすがはVMAX。セローとは程度が違うんだぜぃ!


やれやれ

<余談>

 とまぁ、結果的には大丈夫だったのだけれど、もしセロー並みに固着していたら恐ろしい手間になっていたと思う。
 そして程度がアレな車両だとそんなこともありそうな?もちろんVMAXだけじゃなく。
 なので、対向ピストンのキャリパーを中古パーツで流用しようという方はどうかご注意ください。

※サービスマニュアルの手順のとおり、エアを吹き込んでも外れなかったらどうすりゃいいんだろう?
※そして、やっぱV-Max1200でヤマンボキャリパーを流用した時はラッキーだったんだよなぁ。
 


 さて、ブリーダーボルトも外したのだけれど、何故かこれがサビサビで。
※動作・密閉には問題なし

 何か原因あるのかな?今回は無理だけど機会があったら交換してやろう。
 そしてこれは左側だけど、右側も同じ状態なんだろうか?


とりあえずCRC-556に漬け込みました

 単体になったキャリパー。
 漏れて付いたブレーキフルード等をざっくり洗って乾かして。

 さあて、ここからがメインの作業、ピストン清掃とシール交換だ。

 外れた6個のピストンはとても綺麗だった。

 もちろん汚れは付いていたが、ウエスで拭うとそれだけで綺麗に落ちた。

 傷の類も皆無。本当にピカピカで新品同様。確かにこれまでそれなりにメンテ・清掃はしてきたけれど、それ以上に元々の品質が違うのだろう。


ピッカピカになりました

 次にシールを外す。

 シールは2種類。
 手前側(パッド側)に薄いダストシール。内側に厚いオイルシール。

 これをこれまたセローでも使ったオーリングピッカーで外してやる。


外れましたよっと

 2種類*6箇所のシールを外し終わったら、シールが入っていた溝を清掃。
 先のピッカーとパーツクリーナーを使っての作業だけれど、これまた汚れが少ないので楽だった。

 「さーて、んじゃ組むぞー」

 新しいシールはTOP画像の通り。

 *1)このパーツ、注文したパーツNoは「4C8-W0047-00」で、届いたパーツNoは「4C8-25803-00」
 「誤手配かな?」と心配したのだけれど、どうやら同じ品のようだった。
※ヤマハのWEBパーツリスト上でも同じ名前・価格

 最初は厚いオイルシールを。

 ダストシールとは別にパッキングされていたのだけれど、これはグリスが塗ってあったからだろう。(別途グリスも付属)
 そして片側に赤いマーキングがあるのは、裏返らないように(裏側ってもわかるように)の為だろうか。


謎のマーキング

 シールは溝にセットするだけなのだけれど、なかなかにコツがいる。
 「一か所を差し込んで指で固定しておいてから残りをズラしこむ」と上手くいくようだった。(経験値)

 オイルシールを6か所にセットしたら、次は薄いダストシール。

 こちらに塗る指定はブレーキフルード。薄く塗ってセットする方法はオイルシールと同様だ。

 両シールとも、引っかかりや裏返りがないかどうかを目視&指先で入念にチェックする。

 次にピストン……は、ブレーキフルードを塗って差し込むだけ。

 スポンと入って気持ち良いのだけれど、万に一つもシールを巻き込まないように要注意っと。

 「よーし、できたできた」


外側にシリコンスプレーするのはお約束

 これで左側のキャリパーが終了。右側も同様に……なのだけれど。
 「ありゃ?ブリーダーが全然違うぞ?」

 先の程度云々の話とは別に、まったく違うパーツだったのだ。


左:右のブリーダー、右:左のブリーダー
(逆にして画像撮れば良かったな……)

 何故か右のブリーダーの方が長く、途中にOリングも入っていて高級そう
※ちなみに程度・状態も右側は良好で交換の必要性など無し。

 どうしてこんなに違うのだろう?ブレーキホースは一旦左キャリパーへ入ってから右キャリパー行くのだけれど、その構造と関係あるのだろうか?

※念のためパーツリストで確認したらやはり違っていた。まぁキャリパに彫られているブリーダーボルト用の穴の深さも違うので間違いのはずはないのだけれど。

 これにてキャリパーのOH作業は終了。
 それではと車体への取付前にブレーキパッドをセットする……「じゃーん、新品純正パッドぉ!」


棚の奥から引っ張り出しました

 散々挫折だのもったいないオバケだのと語ってきたけれど、今回は手間も暇も(そして金も)かけたフロントブレーキのフルオーバーホール。
 「ここで使わず何時使う!」(ならもっと早く使っても)

 いつも通り面取りしたパッドをセットして、これまた洗浄したパッドピンで固定する。


よしよし

 キャリパー一式を車体へ取り付け、ブレーキホースも元通りに。

 バンジョーのワッシャは目をつぶって再利用(自己責任)


できました

 「これで終り……だよな?」(と指さし確認)

 ここまでで作業時間は3時間半というあたり。

 さあ、次はマスタシリンダーだ!



 

 

 

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