■今が悪いという事ではなく
セローの吸気系を弄ってみようと思う。
目的はパワーアップ……と言いたいところなのだけれど、総走行距離46,000kmのセローにパワーアップを求めるのは酷というものだ(笑)
本当にパワーアップを望むなら、エンジンのフルオーバーホールが必要になる。
以前ピストンリングだけ交換した腰上はもちろん、ピストンとかクランクメタルとかバルブ周りとか、素人には手の出しにくい領域をあれこれしなければならない。
これには相応の期間と費用と専門家の手が必要になるだろう。
今のところセローの調子は悪くない。いや、もしかするとこの年式のセローとしては結構な好調と言っても良いかもしれない。
夏でも冬でも一発始動。アイドリングは(信号待ちでふいにエンストすることはあるけど)比較的安定、中低速のピックアップもそこそこ、高回転でパワーがないのは仕方ない。と、実に安定した状態になっている。
#なので安心してロングツーリングにも行ける。
今回弄る目的は、その高回転域の改善だ。
砂利の峠を2速全開で駆け上がって3速に入れた瞬間のトルク…とか、高速道路100km/h巡航からの追い越し…な時にもうひと伸びだけして欲しい。
とりあえず排気系の変更はなしとして、吸気系だけでどこまで良くなる・変わるものだろうか。
<余談の1>
この手の調整・変更をする時には、他には異常・故障はないというのが前提になる。
今回の場合も、作業に入る前にプラグの確認、エアフィルターの掃除等、一通りの整備は済ませてある。
☆
第一の変更はこれ、エアクリーナーボックスに付けられたエアインテーク。
うちのセロー、4JG6用のエアインテークは大きく曲げられ、かつ絞り込まれている。
※それはもう、エアクリーナーの汚れる場所が500円玉くらいの大きさしかない程に。
これを旧型、1KH用の大型インテーク(通称ブタ鼻)に交換するのは、吸気抵抗軽減の定番とされているのだ。
こんなに違う。見た目には3倍増し
(どちらがどちらかは言わずもがな)
エアクリーナーがノーマルとはいえ、これだけ大きくなるとあきらかに増えるであろう吸入量。
単純に空気が増えるとトルクの減りが心配なのだけれど、実際はどう変わるのだろうか。
交換作業は、単純に言うと力作業。
インテークはクリーナーボックスに単純にハマっているだけなので、ゴムを変形させながら強引に抜く・ハメるしかない。
比較的暖かい時期なのでさほど苦労せず交換できたが、冬場にはあまり行いたくない作業である。
※シリコンスプレーって偉大だねぇ…(しみじみ)
☆
第二にキャブのセッティング……なのだけれど、最初にここしばらく測っていなかった油面(フロートの高さ)を計測する。
ドレンホースを上に向けてキャブに沿わせ、ドレンボルトを緩めてやる。
出てきたガソリンの高さが現在のフロートの高さ。これがキャブレターの繋ぎ目~上へ2mm辺りになるのが正常だ。(もちろんキャブが水平=車体が垂直の状態で)今回は問題なしで一安心。
ドライバーで示しているのが上に曲げたドレンホースと油面位置
但しこれは画像撮影用(燃料ホースを取り外した後)なので実際の油面とは異なる
(実際には記事のとおりつなぎ目より2mmほど上になった)
<余談の2>
油面の計測には実油面と簡易油面というのがあって、上の方法が実油面(←実際にキャブが動作している状態での油面なので)
簡易油面はキャブをバラした状態でフロートの位置を測るのだけれど、オーバーフローバルブの遊びとかがあってきちんと測るのが大変だったりする。
いずれにせよ、油面がズレていたらフロートの取り付け金具を曲げての調整が必要。
※簡易油面で合わせてキャブ付けて実油面測って…ってのは面倒なんだわこれが…
パーツとして今回交換するのはメインジェット(以下MJ)
キャブレターの中のパーツ(○○ジェットとか○○ニードルとか言われる部分)は、その役割がスロットル開度によって決められている。
#↑よく回転数と間違われるが、「どのくらいスロットルを開けているか」(=開度)の方が正しい。
今回のように高回転域をあれこれする時に交換するのは、スロットルを大きく開けた時(1/2以上とも3/4以上とも言われる)に使われるMJだ。
※セローのような小排気量車ではMJを換えると全域に影響がある、という意見もある。
さて、我が4JG6には、歴代225セロー最大(多分)の125番(#125)というMJが付いている。
これをインテークの変更(空気量大)に伴い、#130に上げてみよう。
※番手を大きくする=大量のガスを噴ける。
MJは単品で購入しても良いのだけれど、今は数種類の番手が付いたセットが売られているのでこちらを使用。
価格もさほどではないし、予備にもなるのでお奨めだ。
セローの純正キャブはミクニ製、なのでMJは「MIKUNI用丸大型」を買いましょう
あと、MJに刻まれている番手の数字はとても小さいので近視・老眼の方はご注意を
ええ、だから紙に書きましたとも!
さて、乗り味はどう変わるだろうか?
せっかくの機会なので、もちろん全バラしての清掃も
■理屈と実践はこんなにも違うということで
某日、実走テスト開始。
始動・アイドリングは問題なしで一安心。
いつもより多めに暖機後、ゆっくり走りながら各部再チェック、異常なしっと。
エンジンは温まったかな?というところで加速テスト。中速巡航からスロットルをガバっと開けて……「ありゃ?」
簡単に言うと、全然ダメダメだった。
スロットルにまったく回転が付いてこない。エンジンはごぼごぼ言うだけ。スロットルを戻すとちゃんと走行・加減速するから中速(中開度)以下は問題なしと。
「ってことはどこかが不調(キャブバラし失敗)ってことじゃなく、交換したMJが原因なんだろうな…」
☆
困ったのは、ガスが濃いのか薄いのかよくわからなかったことだ。
一見、ごぼごぼいうのは濃い時の症状のように思える。
プラグを見てみるが特に変わったところはなし、まぁ4ストでプラグ見て濃い薄いがわかるなんてのはよほどの時以外ないものなのだけど。
「直キャブ化(エアクリボックスを外してしまう)ならともかく、エアインテーク換えただけでそんなに薄くなるはずもないし、やっぱ濃いんだろうな。MJの番手下げてみるか…」
☆
シート外してタンク外してキャブ外してバラしてMJを交換。#130から#127.5にしてみる。
実走テスト、結果は…「う~ん、同じか…」
症状はほぼ同じ、ただ感覚的には多少改善されたような気がしないでもない。
「次の番手はノーマルの#125だしなぁ、本当に濃いのかどうか確認してみるか。」
エアフィルターを取り外す。これで多少は「薄い」方向へ振られるから、今が濃いなら改善されるはずだ。
テストへ出ると…「なんで症状が悪化してるんだよ!」
ごぼごぼは最悪の状況へ。加速しないどころかエンストしかける有様だ。って事は…「薄かった…のか!」
☆
エアフィルターを取り付け、エアインテークを4JGのノーマルへと戻す。(←力作業なので実はこれも面倒くさい)
テストへ出ると…まぁ快適に走る走る。パワーこそいま一つだが上まで綺麗に回りやがった!(←当然です)
「うが~!MJよりエアインテークの影響の方が大きいのかよ!」
単純にエアクリーナーボックスの吸入口が大きくなっただけでこんなに影響が出るとは思わなかった。
225ccの空冷単気筒おそるべし、MJも純正の#125に戻しておくとしよう。
☆
…というわけで、「やっぱノーマル最高!」というありがちな結論になりましたとさ(笑)
そして、乗って濃い薄いがわからないあたり、俺の整備の腕の未熟さを実感させられたわけで。
それにしてもこれだけ変わってしまうのであれば、巷に溢れてるスカチューンのTWやらブロンコやらのセッティングどうしているのだろう?直キャブでもとてつもなくデカいMJ付ければそこそこ走るんだろうか?それとも最高速が60km/hとかでも気にしないとか?
そしてそして、大型バイクにFCRやらサブコンやらを突っ込んで自分でセッティングしてる人達って凄いんだねぇ…(しみじみ)
うちのセローに関して言えば、「ノーマルでも結構薄い」ということになりそう。
ノーマル車両は濃い目に振られている事が多いのだけれど…4JGは特殊なのだろうか?
そしてその割には高所(標高2000mの金精峠とか)でもきちんと走ってくれるんだよなぁ…
#二次エア吸ってるってこともなさそうだし(←キャブ周りにガス吹いても変化なしなので)
☆
ともあれ、これで「薄めだとどんな感じになるか」は確認できた。
これは「次の機会」の参考になるに違いない。(…と含みをもたせたり(笑))
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