■何故今とは聞かないで
セローのスイングアームピボットをベアリング化する。
尚、70,000km近く走ったオンボロセローの足回りを今更強化してどうするんだ?という問いには沈黙をもって答えます。
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いつぞやリア周りを分解したときに書いたとおり(ってもう9年も前か)セローの足周りにはベアリングが非常に少ない。ほぼブッシュとカラーで構成されている。
<余談・再掲>
ここで言う「ベアリング」は、一般的なボールベアリングのように「アウターとインナーの間になにか転がるもの(玉とか棒とか)が入っている」の意味とする。
広義には、ブッシュ+カラーのものもベアリング=軸受と呼ばれるそうだ。
「だからブッシュの入っているところをベアリング化すると効果あるんだよ」というのもよく言われている話。
特にスイングアームピボットへのベアリング導入は実践している人が多い。
費用はさほどでもなく、効果はけっこう大きいのだとか。
「走って効果を感じられるのか?」「そもそも俺の走りで必要か?」なんて事はさておいて、うん、面白そうだからやってみようじゃありませんか(をい)
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準備
さて、パーツの手配、手順等には迷う必要がない。
何故ならWEB上に先人たちが溢れているから。ありがたいありがたい。(ホントにねぇ)
おおまかにはこんな感じ。
■手配パーツ
・NTN ニードルベアリング HK1816LL:4個(1個300円ちょい)
・純正カラー 90387-121N2:1個、90387-127F2:1個(これらは念のため)
■手順
・スイングアームを外す
・スイングアームのピボットからからブッシュ、カラーを引き抜く
・各パーツを準備する
・ブッシュの代わりにベアリングを打ち込む
・スイングアームを付ける
パーツが全部揃ったら、さて、とりかかるとしようか。
ウエット走行後なのでちょい汚れ失礼
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スイングアームを外す
メンテナンススタンドを掛け、リアホイールを外し、ブレーキマスタ周りをいろいろ外して(これが面倒)リアサスのリンクを外す。
あとはピボットシャフトを抜けばOK。手順の詳細は前回作業参照ということで。
実はいろいろ忘れていて、作業前にコンテンツを見直したりとか。
いや、持つべきものは自分のメンテナンスレポートですなぁ。(をい)
外れました。
背景が汚くて失礼(こんなのばっか)
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ブッシュ、カラーを抜く
カラーを引き抜く。
念のためにと新品も手配したのだけれど、外したカラーはさほど疲れてはいなかった。
でもまぁせっかくなので新品に。
内側にオイルシール(?)これは再利用予定。
※本来はこちらを新品にすべきな気も。
ブッシュは内側からたたき出す。
手順はホイールベアリングとかの叩き出しと同様……と簡単に書いたけれど、内側からだと叩く角度が取れなくて大わらわ。手持ちのツールを駆使してなんとか外すことができた。
尚、ピボットの内径には17mmのラチェットコマがぴったりサイズだった。
これは後の打ち込みの際にも大活躍。
こんな感じで
入っていたとおりに並べました
そしてここで想定外。「あれ?ブッシュって2つずつ入ってるんだ……」
画像にある黒い筒状のパーツがブッシュ。左右に長いの(外側:リブ付き)と短いの(内側)と。
そういえば、スイングアームにはグリスニップルが切ってある。多分2つのブッシュの間にグリスが入るような位置関係になっているのだろう。
でもそうなると……いろいろ考えなきゃいけなさそうだな……(後述)
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パーツの準備
新品ベアリングには、例によって指でグリスをぐりぐりと塗りこんでやる。
新品のニードルベアリング
外した純正ブッシュ。
これはベアリングの蓋・カバーとして使用するのでカットする。
厚み(中に入る部分の)は4mmとしたが、正直根拠はない。(をい)
右側に見えるのがカット前ブッシュ
これまではこのブッシュで内側のカラーを支えていたのだけれど、今度はこれがベアリングに変わる。
つまり今までのキチキチサイズでは抵抗になってしまう。なので内側を紙やすりでゴシゴシ、内径をほんの少し拡大する。
もちろん切った時のバリの類もゴシゴシ。
ゴシゴシ
新しいカラーは左右でパーツナンバーが違うので要注意。
太さは同じですが長さが若干違います
カットしたブッシュを入れるとゆるゆる(ゴシゴシしたので)なこと確認
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ベアリングを打ち込む
「さぁ!いよいよベアリングを打ち込むよ!」なのだけれど……さて、どうしようか?
先の通り、ブッシュが2個入っていたのが想定外だったのだ(先人達の情報にも無かった)
「となると、ベアリングはどこに入れればいいんだろう?」
図にするとこんな感じ。
1.ノーマルの断面図
黒がスイングアームで上に付いているのがグリスニップル
2.ブッシュの長い方の代わりにベアリング2個、の場合
ブッシュの短い方はそのまま
3.ベアリングを両端に挿入、の場合
ブッシュの短い方は撤去
無難なのは2.だ。
だがこれだとブッシュの短い方が抵抗になり、せっかくのベアリングの効果が出にくい気がする。
3.は全てベアリング支持になるけれど、強度的にどうだろう?な疑問も残る。
「でもまぁ、ベアリング化が目的なんだから全部ベアリング支持だよな!」
3.に決定。
スイングアームピボットはホイールベアリングのように高速回転するわけではないし、なんとか頑張ってくれるはず、と勝手に判断する。
※もちろん自己責任で……って、まぁベアリング化自体が自己責任だけどね
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打ち込み作業はいつも同様。そして先の17mmコマが大活躍してくれた。
内側はオイルシールの幅分内側へ。
外側は蓋(カットしたブッシュ:4mm)の分内側へ。
2個のベアリングの間にはこれまたべったりグリスを入れる。
ニップルのグリス出口を塞いでいない(これまでどおり使える)事確認済
左右打ち込み、蓋・シールセット完了
「よし、これで形になったぞ。」
んじゃま、あらためて周囲を綺麗にしてやるか。(なら作業前にやろうぜい)
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スイングアーム装着・確認
装着は取り外しの逆順で。
とりあえずピボットシャフトだけ締めこんでスイングアームがスムーズに動くかチェック……しようと思ったのだけれど、考えてみれば荷重のかかっていない状態で確認できるはずはなしっと。
いろいろ戻して戻して、そしてこれが一番面倒だったりするわけで。
※あー、中腰が続くと腰にクるわ~
ホイール付けてチェーンの張りを確認したら、「よーし、これで終わりかな」
トータルの作業時間は3時間といったあたり。
このままテスト走行に出たいところだけれど今日は時間切れ。
給油の為にちょっとだけGSまで走った感じでは、とりあえず異音とか変な抵抗は無し。サスペンションもきちんと動いている様子だった。
さて、本テストには何時出られるかな?
そして効果は感じられだろうか。(さてさて)
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■走ってみました
某日、テスト走行へと出発する。
最初の印象は、意外にも「これ、もしかして固くなった……のかな?」
サスペンションに妙に「腰」が感じられたのだ。
それは、ベアリングの挿入に失敗してて中で引っかかりでもしてる?と疑ってしまったほど。
もちろん、セローのキャリア部分を上から押すとすっと沈むし、変な音もしないし、抵抗を感じる事もないので引っかかりがあるという事はない(はず)のだけれど。
素人考えとして、ベアリング化で一番変わるのは最初の動き出し部分のはずだ。
今までは「力が一定量を越えた時に動きはじめる」のに対し、「最初からかぬるっと動く」ように。
これはVMAXのクラッチレバーのベアリング化で一番感じた部分でもある。
だから感覚的には「柔らかく」なるはずだと思うのだけれど。(さて)
それでも、スイングアーム・サスペンションの動き自体はスムーズになった気がしないでもない。
どれどれといつもの河原を軽く流した感じでは……「特に変わりませ~ん」
ここで「路面への追従性が」とか「サスの収束が」とか書くと格好いいのだろうけれど、振動がデカいオフロードで素人にそんな微妙な変化がわかるはずもなし。
そして舗装路では……「あ、変わったかも」
細かい振動が吸収されているような。荒れたアスファルトに突っ込んだ時など、これまでよりスムーズに通過できているような……気がしないでもないような気がしないでも……(繰)
実は一番に感じた変化はこれ。「なんか今日、妙にパワフルじゃない?」
エンジンの調子が良いのだ。セローミーティング以降特に何もしていないのだけれど、気温が下がってきたせいだろうか。
それとももしかして、ベアリングがなにか影響しているのかな?(さてさて)
ともあれ、交換作業としては成功している様子。
俺的効果としては、悪くはなっていないが、特に何かを感じるほど良くなってもいない。
どちらかといえばオフよりオンでの影響が大きいのかな、な感じ。
長距離乗るとまた違うかな?これからも観察していこうと思う。
※あと耐久性と整備性もね。
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