■これまではほぼ純正タイヤでしたけど
セローのタイヤを換えてみる。
これまで使ってきたのは、ダンロップのD605とブリヂストンのTW301(TW302)だ。
どちらもオンでも使えるオフロードタイヤ、セローとしては「ほぼ純正タイヤ」と言って良いと思う。
これは新品のD605…のはず
以前から書いてきたとおり、常々「もう少しオフ寄りのタイヤも試してみたいな…」と考えてきた。だが、セローのメリットである「リアがチューブレス」を満たそうとすると選択肢が無い。よりオフロード寄りのタイヤ(D603とか)にはチューブタイプしか存在しないからだ。
※なんでチューブじゃ嫌なの?って話は既に何度か書いたけど、出先でのパンク修理と「せっかくチューブレス用のホイールなんだし…」かな。
ところで、セローの定番タイヤ(もちろんリアはチューブレスで)にはもう一つある。
それはIRCのTR-011 TOURISTだ。
☆
このTR-011、元々は(というか今でも)トライアラー用。そして TOURIST(ツーリスト)は「公道でも使用できる」というレギュレーションを満たす為にわざわざ作られたタイヤでもある。
※なのでレース専用のTR-011(無印)と、公道使用可のTR-011 TOURISTがある。
ツーリストは前後とも1サイズしかないが、これが「リアチューブレス」を含め「ほぼ」(後述)セローに合う。
そしてセロー&TR-011をWEBで検索すると大抵絶賛で、ネガティブな意見はごく僅かしかないのだ。
人が褒めていれば自分でも使いたくなるのが人の常。だが、それを鵜呑みにするほど俺は素直ではない。
何故ならこのタイヤに換えているのはほぼトライアラー的な使い方をする人、つまり岩場とかガレ場をフロント持ち上げながらほいほい上って行くような人達の話だからだ。
俺もそういう場所に行かないわけではないけれど、主体となるのは普通の走りやすい林道だ。(何よりそんな腕は無い)
そして距離的に言えば、舗装路(含む高速道路)での移動が圧倒的に多い。
セローをトライアラーもどきにする気はないし、ツーリングに使えなくなっても(使って不便が出るようでも)困る。そう思ってこれまで「トラタイヤなんて俺には関係ないね」と思ってきたのだけれど。
どうやら最近はちょっと違うらしい。
「TR-011は舗装路でも結構イケる」という話を聞くようになってきたのだ。
加えて先の北海道ツーリングの折にも、セロー乗りでもある岩氏から「ツーリストいいっすよ~イケますよ~」という話を聞いてしまう。
「う~ん、ならお試し感覚で履いてみようかな?丁度タイヤも交換時期なんだし。」
ちなみに価格的には「D605よりちょい高い」感じ。出荷本数を考えるといたしかたないところだろう。
☆
発注して(←在庫持ってる店など無い!)入荷。それではとさくさく交換……と、実は簡単にはいかないのだ。
セローにTR-011を履く場合発生する若干の問題、それが先に書いたタイヤサイズだ。
(ほぼ)標準タイヤであるD605(リアチューブレスのセロー用)とのサイズ比較はこちらのとおり
タイヤサイズ・タイプ | 標準リム | 許容リム | トレッド幅 | 外径 | ||
フロント | D605 | 2.75-21 45P WT | 1.85 | 1.40~1.85 | 80 | 689 |
TR-011 TOURIST | 2.75-21 45P WT | 1.85 | 1.40~1.85 | 76 | 697 | |
リア | D605 | 120/80-18 MC 62P TL | 2.75 | 2.15~3.00 | 122 | 656 |
TR-011 TOURIST | 4.00-18 64P TL | 2.15 | 2.15~2.75 | 105 | 685 |
※それぞれDUNLOP、IRCのサイトより
摘要リム幅は前後とも純正リム(F:1.85、R:2.75インチ)の範囲内。
フロントタイヤは4mmほど細くなり、外径が8mmほど大きくなる程度で問題なし。
リアは17mm細くなり…までは良いのだが、問題はここ、外径が29mmも大きくなってしまう。
ぶっちゃけて言うと、このままだとタイヤは入らない。
スイングアームの奥(ピボット側)にタイヤが当ってしまうのだ。
ではどうするか?ということで、先人達が考えてくれた方法は2つある。
■1つはスプロケットを変更してチェーンラインを長く取る。
トライアラー的な使い方をする人にはこの方法が多い。どちらにせよローギアードにして乗るからだろう。
組み合わせはいろいろとあるが、ドライブ(前)スプロケを純正15T→13Tにするパターンが多いようだ。
だがこの方法は俺的には×。
今でさえ高速道路は精一杯だというのに、これ以上ローギアードになったら間違いなくツーリングに支障が出てしまう。
#…とこの時は思っていたのだけれど、先のとおりタイヤ自体の外径が3cm近く大きくなっている。この分はハイギアードになるはずだから相殺されるかも?
■もう一つがこれ、チェーン延長。
ノーマル120コマのチェーンを122コマに交換する。これならギア比変更なしでタイヤを導入できる。
この方法の弱点は…「うちのセロー、この前チェーン交換(もちろん純正の120コマ)したばかりなんだよなー」
※もう1年経ってるけどね
うんうん唸るが他に方法はない。だが、もう一度チェーンを交換する気にもなれない。(特に費用的に)
よし、いま一つ格好良くないけど、今のチェーンにコマ足し(延長)するとしよう。
☆
モノが揃って作業開始。
まずはチェーン。作業はチェーン・スプロケット交換記と同じ…なのだけれど、この前交換したばかりのクリップジョイントが外れなくて大騒ぎ。頭にきたのでまたまたグラインダーでガリガリ削ってしまう。
「う~、簡単に取り外せるのがクリップ式のメリットだって聞いてた気がするんだけど~、そしてジョイントだって安くないんだけど~」
※後で確認したらこのクリップは「"圧入式"クリップ」で「再使用禁止」だった。この辺りが外れなかった原因かも。
肝心の「タチコマ足しコマ」は、ツテと辿って同じ銘柄のチェーン(RKの428RX)のコマを手に入れる。
これを新しいクリップジョイントで、先に分離したチェーンの間に割り込ませる。クリップジョイントが2個連続することになるので耐久性とかが心配ではあるのだけれど、「ま、セローのパワーじゃ…」と目をつぶる事にした。これはまぁ自己責任ってことで。
禁断のクリップ2丁掛け
☆
前後タイヤ交換は、今回はショップにお任せ(はぁと)
交換したお兄さん曰く「エア圧が判らないので1.8キロ(1.8kgf/cm2≒180kPa)ほど入れときました。」
はいはい、あとで自分で調整しますから大丈夫ですよ~
ホイールに入れられたタイヤは本当に「トライアルタイヤ」だった。
触った感触からして柔らかい。そしてハイト(高さ)がある。見た目なんというか「ゴムを一杯使ってるなぁ」という感じだ(笑)
そしてオフタイヤとしては珍しく回転方向の指定がある。この辺りは自分で取りつけるときには注意が必要だ。。
細めですがむっちりしてます
回転方向注意
☆
装着後はこんな雰囲気に。
フロント
リア
車体に装着すると、更に雰囲気が変わる。
フロントは「少し細くなったかな?」程度だが、リアは…「厚い、厚いぞ!」(←「太い」ではない)
ぶ厚いゴムの塊は、なんとなく先代V-Maxの90扁平リアタイヤを彷彿とさせる。
☆
チェーンを張ると、スネイルカムは6付近になった。
以前は3付近だった。チェーン2コマ足してもこれだけしか変わらないんだねぇ。
スイングアームとのクリアランス比較はこちら。
D605(2分山、チェーン120コマ、スネイルカム3)
TR-011 エンデューロ(新品、チェーン122コマ、スネイルカム6、スプロケ変更なし)
☆
さて、せっかくタイヤを交換したので、今後インプレめいたことを書いてみようと思う。
特に「腕のない素人オフ車乗りが興味本位でTR-011を履いて林道やツーリングに使うとどうなのか?」というのは他のサイトにはあまり載っていない気がするので(笑)
タイヤサイズ(外径・外周長)が変わった事での影響だが、前輪から取るメーター誤差は1%以内のはずなので無視できる。
エア圧はとりあえず前後とも1.0キロ前後の予定。今までより低くなるので燃費は悪化するはずだが、リアタイヤ外径が大きくなった分で相殺されるかどうか。
そしてそのハイギアード化により、加速や最高速への影響はあるのかないのか?
チェーンラインが長くなった=ホイールベースが長くなった。これがハンドリングやサスペンションにどう影響するのか?
さて、実際にどうなるかはこれから乗ってみてのお楽しみ。
それにしても見た目がこんなに変わるとは思わなかった…
☆
■なるほど変わりました
それではと試走開始。
まだまだ早いとは思うのだけれど、複数日かけてトータル2~300km(うち未舗装路30%くらい)走ってみた感想などを。
■足つき
不思議なことに変わらなかった。リアタイヤ外径が3cmも大きくなったのに何故だろう?
その分タイヤが潰れているのか、それともチェーンラインが長くなった(ホイールベースが伸びた)せいなのだろうか?
■加速
前後スプロケット(減速比)は変わっていないものの、結果的にハイギアードになったはずのギア比。(←リアタイヤが大きくなったので)
だがゼロスタートでの明確な変化は感じとれなかった。まぁもともとセローの1速は結構なローギアードだし、タコメーターが無いので感覚で測るしかないのだけれど。
■通常の舗装路
あたりまえだが普通に走れる。100km/h巡航も試したが異常な振動とかハンドルの振れはなし、安心して走り続けられる。(エンジンとか馬力とかは別の話)
トライアルタイヤなのに速度記号がP(:~150km/h)なのは伊達ではなさそうだ。
■舗装の峠道
ちょいと怖い。というのはやはり滑るのだ。
先に書いたとおり空気圧は前後とも1.0キロ程度、これだとグリップ感自体は高い。意外と言ってはなんだが舗装路に吸い付くようにグリップする。タイヤ自体が変形して路面を掴んでいるのがよくわかる。
そして反面、カーブで「あるレベル」を越えると一気にザーっとくる。これはタイヤの形状というかサイドにブロックが無いせいでバンクさせると滑るのだろう。Uターンに近いようなヘアピンをリーンアウトで…というような場面で何度かヒヤっとさせられた。
■走りやすいダート
いや~、グリップするわ~。
砂地や草の上でのグリップは大したもの。どのくらい大したものかというと、リアをロックさせてのブレーキターンができなかったほどだ。(←転びかけた)
走ったのは雨上がりだったのだけれど、フラットダートに出来た水溜りを避けながら走るのがとても楽だった。これもタイヤがしっかり路面に食いついているおかげだろう。
■ゴロンゴロンの岩場
本来はこういうところで活躍するタイヤなのだろうけれど、走るペースがペース(&腕)なので正直よくわからない。
ただ、車体が感じる衝撃は確実に小さくなった。ラフにスロットルを開けていっても車体が飛び跳ねて収拾が付かなくなるような事はなかった。
■燃費
最初の100kmを走って給油の際、「よ、4Lだと!」
これまでどこをどう走っても30Km/Lは割らなかった燃費が一気に悪化した。それだけタイヤのグリップが上がっている(抵抗大)ということなのだろうか?燃費については他の要素も考えられるので現在継続観察中である。
■全体として
いろいろとインプレを考えていて思いついたことがある。「このタイヤ、スタッドレスタイヤみたいだよな」
扁平率が低く、ハイトが高く、ゴムが柔らかい。低い空気圧でタイヤ全体を撓ませてグリップする。直線はともかくカーブで無理はできない。路面からの衝撃は低く乗り心地良し。この辺りが4輪のスタッドレスタイヤとそっくりなような気がするのだ。
主目的だった未舗装路でのグリップ上昇は確かに感じとれた。岩場を含めこれまでのタイヤよりは確実に走りやすく限界も高くなっていると思う。
対して舗装路では…ハンドリングを含め、いくつか気になるところはおいおいチェック・変更していこうと思う。サスペンション関連でちょい弄りたいところもあることだし。
ともあれ、個性的で面白いタイヤであることは間違いない。
俺の走り方に合うかどうか、もう少し走りこんでみようと思う。
#耐久性はどうだろうなぁ…これも要チェックだな…
☆
■いろいろ走ってみたところ
その後、数百キロ走ってみた結果の燃費報告なんぞを。
数値的には、大雑把に言って混雑の無い一般道(舗装路)で30km/L、高速道路を90~100km/hで走って32km/Lといったところだった。
正直、かなりの悪化として良いと思う。
今までのD605等と比較すると、パーセンテージで言えば10~20%悪くなっているに違いない。まぁ空気圧的に言っても仕方の無いことだろうとは思うのだけれど。
※ちなみに、高速道路もこのペースであれば1.0キロ程度の空気圧で走り続けられる。
未舗装の林道で燃費は未測定だが、この分だとこちらも悪化する事は間違いない。
これまでは「航続距離は250kmまでは楽勝ぉ~リザーブ使えばブン回しても300イケるぜぃ!」だったのだが、今後はちょい考えなくてはいけないだろう。
もちろん、燃費が悪化したからと言って何かを心配しているわけではない。今回は「原因はタイヤ」が明確になっているわけだから。
#そしてそれに見合ったグリップが得られているというメリットも。
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■ そして、更にその後1年半使ってみた結果のインプレはこちらから ■
2013/7 追記作成
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